テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
さようなら。
寂しい部屋の隅で、僕は泣いていた。
「君がいない世界なんて、、、耐えられない、、、、」
何度自分を殺そうとしただろうか。
外に出られないほど、僕は衰弱していた。
突然、彼女はこの世を去った。交通事故だった。
現実を受け止められないまま。葬式を終えた。
帰り道、いつもなら家の窓からあかりが漏れていたのに。
今はただ、静かに主人の帰りを待っている。
「ただいま。」
『おかえりなさい!』
いつもなら帰ってくるその声が聞こえたような気がした。
そんな空耳が聞こえるほど、長く共にすごした日々は、色々あったが、楽しかったのだと思う。
すっかり寂しくなってしまった家は、君の匂いが残っていた。
だが、君がいない。
その異様な光景が、どんどん僕を現実へと引きずり込んで行く。
「嗚呼、そうか、もう、会えないんだ。」
涙が零れる。零れてしまった。
もう、止めることは出来なかった。
「彼女の元へ行きたい。」
いつしかそう思いはじめた。だが彼女はそれを望まないことはよく分かっていた。彼女が僕を止める。でも、それが僕には辛かった。
彼女がいなくても朝はやってくる、
だが、今日の朝は、“何か“が違った。
暖かく僕の顔を照らす太陽の光で目を覚ます。
昨日まではカーテンを締め切っていたはずだった。
「おかしい。」
あんなに荒れ果てていた部屋が片付いている。まるで、まるで、、、君と過ごした部屋のようだった。扉の向こうからかすかに聞こえる野菜を切る音。
(まさか、、、)
そう思い、恐る恐る扉の取っ手に手をかけるガチャリ、、、扉を開けると、当たり前“だった“景色が僕の目に飛び込んできた。
僕の気配を感じて、こちらを向き、ニコッと「おはよう!」というその人は、彼女で間違いなかった
僕の足は勝手に彼女の元へ歩いていた。彼女を強く抱きしめる。暖かかった。これは夢じゃなかった。
僕の唐突な行動に彼女は驚いていた。
僕は泣きそうになった、だが、もうすっかり枯れてしまった僕の目からは何も出なかった。
「なんで、、、?どうして、、、、い、、、生きてる、、」
震えたこえで僕は言った。
「えぇ、、、?勝手に殺さないでよっ」
いつもどうりの彼女が、いま僕の腕の中にいる。
もう離さない。僕はそう思った。
気のせいだろうか、その時、彼女の目も潤んでいた。