テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
起きた瞬間から頭が痛かった。
グワングワンする頭を抑えながら起き上がったけど。
体はあえなくベッドにリターンした。
(なにこれ、何で? 何かの病気?)
僕はベッドの中でゴロンゴロン転がった。
「リンネ、リンネ。大丈夫かい?」
シュメリの声だ。
僕は転がるのをやめて目を開けた。
「シュメリ、頭が痛いの。グワングワンするの。僕、病気かもしれない」
ぐしゅぐしゅ泣きながら訴える。
クスリと、シュメリが笑んだ。
「リンネ、ほら、これを飲んで」
ベッドに上がったシュメリが、僕を起こしてくれた。
口に粉のお薬を流し込まれた。
(苦い!)
手渡されたコップの水を、僕は一気に飲んだ。
「ぷは」
水を飲んだら、途端に目が覚めた。
「一杯だけは、本当の酒を飲ませたからね。こんなに弱いとは思わなかったけど」
シュメリが僕の手からコップを受け取った。
「これってお酒のせいなの?」
「二日酔いというものだね。頭痛眩暈吐き気などの症状が出る」
「どうしたら治るの?」
僕は半泣き状態でシュメリに縋った。
「酒が抜ければ治るよ。今、薬も飲んだからね。あとは水をたくさん飲めばいい」
「本当に?」
「本当だよ」
「急にサヨナラにならない?」
「サヨナラ?」
シュメリが不思議そうな顔をした。
「死んじゃったり、しない?」
変わらない天井、モニターの音、点滴の滴下。
その向こうで泣いていたのは、誰だったろう。
思い出せないけど。
とても大切な人だったと思う。
(もう、大切な人を泣かせたくないんだ)
シュメリの腕が僕の体を抱いた。
「二日酔いで死んだりしないよ」
「そっか、良かった」
僕はシュメリに縋り付いた。
「たとえ何が起きようと、私がリンネを死なせたりしない。もう二度と、失わないと誓ったんだ」
シュメリの言葉が、胸に沁み込む。
二度とってことは、一度失ったの?
僕が、記憶をなくしたから?
大事な約束を覚えていないから?
(どんな約束だったんだろう)
約束を、とても大事にしてくれる。
僕を大事にしてくれる。
こんなに綺麗で高貴な人が、どうしてだろう。
「シュメリは、どうして……そんなに僕を大事にしてくれるの?」
頭の上で、シュメリが息を飲んだ気配がした。
「……どうして、か」
見上げたら、シュメリが悲しそうに笑んでいた。
「君の前でなら私は、心から笑える。だからだよ」
同じ言葉を、知っている。
失った記憶の断片の中で、同じ笑みと言葉をもらったから。
僕は返事ができなかった。
お股ポテト
29
はるにし
72
その時の僕がどんな想いだったか、今の僕は知らないから。
「んー、んー」
シュメリの胸にひたすら顔をグリグリした。
「こら、猫じゃない時は猫のような仕草はしないものだよ」
シュメリが僕の背中を撫でた。
(あ……その言葉)
『獣人はな、人の姿の時は人らしく振舞うもんだ。俺を見て覚えろよ』
バルトも同じことを言っていた。
(僕の中に確実に存在する、過去)
じゃぁ、小説は? 夢は? 前世は?
また脳がヒートアップしそうだ。
「シュメリ、一緒に寝て」
「今日は甘えん坊だね」
「離れたくない」
背中を撫でていたシュメリの指が、ピクンと跳ねた。
「そんな口説き文句、どこで覚えたの?」
シュメリが僕の体を抱えて、ベッドに転がった。
「今日は片時も離れずに、二人でベッドにいようか」
「……うん」
魂が抜け落ちてしまわないように。
僕が僕でいられるように。
今は、シュメリに抱き付いていたかった。
僕の人型生活四日目は、シュメリに甘えて終わった。
コメント
1件
第19話読了! リンネの二日酔い、可愛いすぎだろ……グワングワンしながら泣きつく姿に思わず頬が緩んだわ。シュメリの「失わないと誓ったんだ」が重くて、過去とのリンクがまた気になる展開。バルトの台詞と重なる「人らしく振舞う」の伏線も熱い。甘えてもいいんだって安心できる関係性、じんわり来た。