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木こりを終えた俺たちは聖奈さんと合流するべく、宿へと帰っていた。
「帰って早々だけど、エリーの家に行ってみるか?」
「そうですね。何の約束もしていなかったので、ここにいなければ向かうのがいいでしょう」
話も纏まり、俺達はエリーの家に向かった。
コンコンッ
ガチャ
「おかえりなさい!もう暗くなっちゃうけど、セイくんの意見も聞きたいからいいかな?」
「もちろん。ミランもいいか?」
「はい」
出迎えたのは、家主ではなく来客の筈の聖奈さんだった。
予定もないので、俺達はエリーの家に入り話を聞くことに。
「先ずは車なんだけど、部品で持ち運ばない?」
いきなり過ぎて理解が追いつかない……
「何でだ…?」
「車のままだと結局目立っちゃうから、フレームと足回りを持ってきて、後はこっちで作ってもらおうかと思ってるの」
「なるほどな。それだとガワはこちらの技術で作るから目立っても言い訳は出来ると?」
どちらにしろ、馬も無しに鉄の塊が動くんだから、こちらの人からは注目されるな。
それでも出来るだけ目立たないようにする為に、こちらの技術では造り得ないフレームや足回りといった目立たない部品は向こうからの物を使うってことか……
「そうそう。どうせならこの水都でエリーちゃんの作品として発表しようってことになったの!
もし、そこで認められたら、弟子がいなくても一人前の魔導士になれるの!」
「はい。私は動力部だけなのに申し訳ないですが、セーナさんのお言葉に甘えることにしました」
発表はいい。少しでも広まれば目立たなくなるからな。問題はエリーが聖奈さんに説得されていることだ。
仲間になる時はあんなに苦労したのに…俺の頑張りは要らなかった…?
エリー。君も聖奈派か?
俺が不貞腐れている間にも説明はあったけど、覚えていない。
いいんだ。優秀なブレーンが頑張ってくれるから・・・
辺りが真っ暗になった頃、俺達は宿へ帰ってきた。
何故かエリーもついてきたから受付でエリーの料金も払った。
話聞いてなかったから、なぜエリーが付いてきているのかわからん……
そして今更聞けない……
「じゃあ、お家に帰ろっか!」
あ!ここじゃなくて向こうね!
危ねぇ。宿の晩御飯を逃したから、危うく非常用のカ◯リーメ◯トを配るところだったぜ!
話を聞いていないのがバレずに済み、俺はホッと一息ついたのだった。
「よし。じゃあ転移するぞ」
そう言うと、ミランと聖奈さんは相変わらず抱きついてくる。
俺も慣れたもんだな。と感慨深く思っているとエリーまで隙間に抱きついてきた。
あのー流石に集中出来ないんだけど……
何とか前から抱きついてきたミランの頭の上の魔導書を読み、詠唱を始めた。
煩悩退散!煩悩退散!
『テレポート』
「ここがセイさんのお家なんですね。綺麗で広いですっ!」
いや…ベッドを凝視しながら言わないでくれるかな?
おじさんこう見えてまだ若いんだぞ?
「じゃ!私は作ってくるね!」
「私もお手伝いします」
「じゃあ私も!」
ミランに続きエリーも手を挙げるが……
「エリーちゃんはセイくんの相手をしててね」
ドジっ子には手伝わせない気だな?
聖奈さん。心を鬼にしてくれよ。絶対お約束の砂糖と塩を間違えるテンプレをエリーはやらかすからな。
「わ、わかりました」
珍しく聖奈さんがはっきりと拒絶したことで、エリーも何かを感じ取ったようだな。
ここはフォローしておこう。
二人を見送った後にエリーへと話しかけた。
「聖奈は料理人顔負けの腕なんだ。期待してていいぞ?」
「そうなんですか!…でも、私は邪魔だったんですよね?」
「そうじゃない。この家には異世界のモノが沢山あって、特に調理器具は危ないから、それで断ったんだ。
それよりも家を案内しよう」
俺の仕切り直しの言葉に、エリーは満面の笑みで応えた。
他人の家って気になるよな?わかるぞ。
異世界の家電や武器について、色々と説明もしておいた。
何か事故があってからでは取り返しがつかないからな。
ソーラー発電で使っている家電について掻い摘んで説明すると、技術者でもあるエリーは予想通り詳しく聞いてきた。
「俺は専門家じゃないから詳しくは説明出来ないけど…」
俺は自分が知っている電気の知識をエリーに教えた。後、物理も少々。
「凄いです!セイさんは天才です!」
「いや、俺の世界の人なら殆どの人が理解していることばかりだよ。もちろん聖奈も知っているから、間違っても聖奈の前で俺を天才とか言わないでくれよ?」
中学生でも知っている知識を、異世界美少女に披露して悦に浸っているなんて思われたら…生きていけない……
暫くそんな事をしていると、ミランが呼びにきた。
「出来たので食べましょう」
「わかった。今行く」
俺達はリビングに向かった。
「美味しいです!甘辛くて鳥の皮がパリパリです!」
エリーは聖奈さんの料理に大興奮だな。
俺もビールに手羽先でご満悦です。
「お口にあったようで良かったぁ」
「こんなに美味しい物を食べたら、他のものじゃ満足できなくなります…」
エリーも胃袋を掴まれたな。
安心しろ。ここにいる者達はすでに聖奈さんに胃袋を人質に取られた仲間だ。
食後は宿に戻り寝た。
「起きてください!朝食の時間ですよ!」
ん?誰の声…あっ。そうか。エリーも一緒だったな……
「エリーおはよう。二人はもう下か?」
「はい。食堂で待っていますよ」
よし!じゃあ、顔を洗って向かうとするかな。
準備を終えて食堂に顔を出した。
「おはよ。今日はパンプキンスープに朝穫れ野菜のサラダとポークグリルのセットだって」
「おはよ。そんなお洒落な名前じゃないだろ?かぼちゃのスープにぶつ切り野菜と肉を焼いたやつだろ?」
朝から訳の分からないボケをかまされてツッコミのキレのなさに気付いた。に、してもボリュームがあるな……
「もう!気分だよ!キ・ブ・ン!可愛い名前の方が美味しそうでしょ?」
「まぁ、それに異論はないが、この世界には似合わなくないか?」
「街並みはお洒落なんだけどね。やっぱりこの街にも砂糖や胡椒を卸さない?
そうすれば料理もお洒落で美味しくなるんじゃないかな?」
砂糖かぁ。確かにバイトさんも増えて在庫は出来てきているけど。
正直、どこで売っても同じだからな……
「それにここの商人組合にもコネが出来たら、車の魔導具が完成した時に何か助けになるかもしれないよ?」
「そうだな。売れる恩は売っておくか」
必ずこの国でも、砂糖や胡椒を欲しがるはずだ。
まぁ、ダメでもこちらにはダメージがないから別にいいけど。
食後。一度だけ顔を出したっきりの商人組合へ向かうことに。
「こんにちは。買取の窓口はこちらでいいですか?」
「あれ?あの時の魔導士を探していた方ですよね?」
組合で声をかけた人が、偶々エリーを紹介してくれた受付嬢さんだった。
「その節はどうも。今日は買取のお願いに来ました。担当者さんはおられますか?」
「私がそうですよ。商品は何でしょうか?」
「あまり大きな声では言えませんが、白砂糖です。その他にも胡椒などがあります」
俺は小さな声でそう伝えて、1瓶をカウンターの上に置いた。
「量があるので話は別室でお願いしたいのですが、如何でしょうか?」
「か、確認しても良いでしょうか?」
そりゃそうか。
「もちろんです。どうぞ」
受付嬢は蓋を開けて一つまみ掌に取ると、舌を向かわせた。
なんか見ちゃいけないエロさがあるな。別にエロいことをしていないのに。
いかん!平常心だ。。。
こう言う時は素数を数えよう・・・
1.3.5.7.11.13.
あれ?1は素数じゃない?どうだっけ?
俺が煩悩と戦っていた時、受付嬢のお姉さんは目を見開き、そして……
「こちらにお願いします」
俺達を別室に案内した。
いてっ!?
「セイくんはあんなお姉さんが良いんだ?」
そう言って足を踏まれた。
一応言っておくが、俺には足を踏まれて喜ぶ趣味はないからな。
ここで弁解すれば、肯定した事と同義!!
それに2人にはバレていない!!
俺は聖奈さんの行動をスルーしてお姉さんについて行った。
「そちらにお掛けください」
「ありがとうございます」
部屋の中は、リゴルドーの商人組合の別室と同じような作りだった。
ソファに腰をかけて話しの続きに入る。
「こちらの瓶で500gの白砂糖が入っています。ちなみに今日は100瓶用意があります。
それとは別にこちらの胡椒も50瓶の用意があります。
瓶も工芸品としての価値を踏まえての買取額にして頂けたら有り難いですね」
「100!?胡椒も50ですか!?」
数を聞いたお姉さんは驚愕に目を見開いてあたふたしだした。
「わ、わたしの裁量では判断出来ないので、上の者を呼んできますね!」
慌ただしく出て行ってしまった。
「あの人、絶対商人組合の職員に向いてないよね」
「美人さんでスタイルも良いですが、それだけですね」
聖奈&ミランが辛辣だ……
俺が鼻の下を伸ばしていたからか。いや、それはあまりにも自意識過剰だな。
「このお菓子って食べても良いんでしょうか?」
エリー。君はそのままでいなさい。
「ああ。食べたら良いぞ」
俺はにこやかに勧めるが……
「ダメです」
ミランが待ったをかけた。
「えっ??」
「そんな紛い物のクッキーではなく、本物の美味しいクッキーがあるので、そちらを食べましょう!」
ミランが物欲しそうにこちらを見つめてくる。
これは出してやらないとダメな流れだな。
「ほら。一つずつな。人が来る前に食べろよ。包装紙は回収する」
二人に一つずつ個包装されたクッキーを魔法の鞄から取り出して渡す。
二人はすぐに袋を開けるとゴミを俺に渡した。
「おいひいれす!」もぐもぐ
「やっはり、クッキーはこりぇにかぎりまふね!」モグモグ
美味しそうにクッキーを頬張る二人に和ませてもらった俺は、不意に聖奈さんを見る。すると……
「いや、盗撮かよ…」
聖奈さんは二人の死角からスマホを向けていた。ニタニタしながら……
そんな風に時間を潰していたら、扉がノックされた。
「どうぞ」
聖奈さんがスマホを隠したのを確認してから、俺は返事をした。