テラーノベル
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声がなくても、文字がなくても。ノベル版
⚠ ・ 『』 : ノートに書いた内容
・ 〈〉: 手話
超えることのできない、高い高い壁。
…その高い壁の奥は、どんな景色なのだろう。
でも、俺には一生越えられない壁が1つある。
これは仕方ないもの。生まれつきだから。
__聴覚障害者だから。
聴覚障害とは、その名の通り、聴覚に障害がある人のこと。聞こえの程度は人によって異なり、小さい音が聞こえないレベルから、完全に聞こえないレベルまで存在する。
この壁を越えたら、きっと、自由なんだろう。
けれどこの壁は、俺の心臓が止まり、生まれ変わるまでは、越えることはできない__。
宮城県立、烏野高等学校。
1年生として入学した俺、日向翔陽は、”いつも通り”自分の席で大人しくしていた。
まわりは相変わらず、新しいクラスメイトにガヤガヤしていた。
入学式は嫌い。ガヤガヤしているし、話しかけられても何言われてるかわからない。
「…あっ、ねえ君」
ほら、来た。取り敢えず聞こえていないフリ……実際も聞こえないけど。
「君だよ、君、オレンジ色の」
何を言っているんだろう。聴覚障害は不便だな。
「…聞こえる?」
肩に手を置かれ、やっと気づいたふりをする。
「名前は?」
…なんていったんだろう。やっぱりわからない。
こういうときは……
『ごめん、なんていった?』
「…あー…」
やっぱり、変だと思うよな。
『名前、なんていうの?』
…、あ、名前を聞いていたのか。
『日向翔陽』
「日向っていうんだ」
『よろしくね』
俺は、にっこりと笑って、また前を向き黒板を見た。
……なんで、人と話さなきゃいけないんだろう。
声なんて、みんななければいいのに。
放課後、俺は、やっと終わった~、と背伸びをして、帰る支度をした。
帰る支度をしている際、ふと、ある人が目に映った。
……あの人、ずっと1人だ。ちょっと話してみようかな。
話すのが苦手…というか、できない俺が、誰かに進んで話をしようと思ったのは、いつぶりだろうか。
俺は、その子の肩を優しく叩いた。
すると、彼は此方を向き、不思議そうな顔をして俺の顔をみていた。
『名前、なんていうの?』
そうノートにかき、彼に見せると。
「……お前、喋れないのか」
なんて言ったかわからないが、なにかを話した。
俺は、ん、とノートと鉛筆を突き出し、かいて、とアピールをした。
しかし、彼は鉛筆も取ろうとしない。
そこで俺は、もう一つ付け足した。
『さっきなんて言ったの?ここに書いてくれる?』
そうかいてまた突き出すと、彼はじっくりとノートの字を見ていた。
「な……ん、て……」
口の動き的に、今読んでいるのだろう。
でも、明らかに読むのが遅い。
……この子、もしかして__。
『しょうよう』
『もじのよみかきができないこには』
『こののーとのかいわはつたわらない』
『そのこはきっと』
『しょうようとおなじ、しょうがいしゃだからね』
『そのしょうがいのなまえは』__。
……発達性ディスレクシア。
発達性ディスレクシアとは、知的発達(視覚、聴覚)に遅れはないものの、文字の読み書きに困難を抱える発達障害の1つ。
症状は人によって異なるが、大体は文字を読み書きするのに時間がかかる。
この子が……お母さんの言っていた、文字の読み書きができない子…。
「……」
やはり、文字が読めなくて困っているのか、少し嫌そうな顔をしている。
そこで俺は、顔の前で両手を合わせて、ごめん、というポーズを取り、あの子を置いて鞄をもち、すばやく教室を出た。
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コメント
10件
ふぉぉぉ!!あれになっとる!文字のマジモンの小説のやつに!(? てかはるかアイコンかわってる!茜くんだー!
まって今見るとわかりにくくないこの作品
セリフ使うの良すぎハマったよもうこの物語大好きになったじゃなん!100なんか朝飯前だい!