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私は今、季節はずれのあるものを手に持っている。
自分で買う事なんてもう久しくなかったから、ちょっと楽しくて帰宅中の足取りはいつもより軽かった。
🌸「ただいまぁ!」
大声で叫んだから、部屋で作業中の奏斗にもしっかりと聞こえたらしい。
驚いた表情で顔だけひょこりと出してきた。
🍷「…っくりしたぁ……。おかえり」
🌸「ただいま!ねぇみてこれー」
手にしていたものを奏斗の部屋の前で広げて見せる。
🍷「え?何これ、花火?」
🌸「花火です」
🍷「なんで花火が出てくんの…?買った?てか今売ってんの?」
🌸「たまたまあった知り合いがね、夏に余らせてたの発掘したんだって。で、くれるって言うから貰ってきた」
🍷「えー湿気ってないのかなぁ」
🌸「知らん、今日やってみよ?」
🍷「お〜けっこう色々入ってんね。これしゃぁぁって吹き上がるやつでしょ?」
外が暗くなったのを確認して、私達は近くの公園に来ている。
蝋燭に着火剤、水の入ったバケツ。準備完了。
頂き物の花火のパックを開封し、中身を広げていった。
🌸「まぁほぼ手持ちだよね。はい蝋燭つけるよー」
🍷「やべぇ久々すぎる。よくわかんないし適当にやろ」
そう言って蝋燭の火に近づけると、シュッと音がして火花が散り始める。
どうやら湿気ってはいないようで安心した。
どれ私も、といちばん近くに置いてあった花火に火をつける。
🍷「おおぉ…いいなーこれ」
次々と花火で遊んでいる途中、お気に入りを見つけたらしい。
広めに火花が散るものだった。
🌸「地味〜に色んなやつあるよね」
🍷「ね、今やっても思ったより楽しいわ」
🌸「小さい頃はよくやってた?」
🍷「やっ…てたとは思う、けどほんとに小さい時な気がする…」
🌸「やってても小学校低学年くらいまでか?」
🍷「あ~そんなもんかも。お小遣い貰って友達とお祭りで遊んでた記憶のが鮮明だわ」
🌸「私も〜。チョコバナナはお祭りでしか食べられない物だと思ってた」
🍷「美味いよねあれwwwてかお祭りの食べ物全部高いのに買うんだよな、そんで美味しいんだよな」
🌸「お祭りって雰囲気が全てを支配してるから…」
🍷「りんご飴?っていまだにどう食えばいいのかわかんない」
🌸「わかる〜〜〜」
だらだらと夏祭りの思い出話をしながら遊んでいると、いつの間にか残りは線香花火だけになっていた。
🍷「線香花火ってなんか終わりにやりがちだよね」
🌸「しょぼいから」
🍷「言い切ったwww」
🌸「だってあれ動かしちゃだめじゃん?子供にあれ持ったままじっとしてろとか無理ゲー」
🍷「俺もすぐ落としてた…」
🌸「まぁ奏斗は今でも落としそうではある」
🍷「いや流石に…大丈夫…でしょ」
🌸「言いながら不安にならないでよww」
2人並んで、線香花火を見つめる。
小さな火花が途切れる事なくぱちぱちと続いていく。
子供の頃は地味さが好きではなかった。
今は寧ろ、線香花火特有のゆったりした感覚が心地いい。
🍷「、あ」
だいぶ小さくなって今にも終わりそうだった物が、その時を待たずに落ちていった。
🌸「ふっ、」
🍷「ちょっと………」
やっぱりねと、思わず笑いが出てしまった。
じとりと睨まれて、顔を反らした反動で私の花火も落下した。
🍷「はい落としたー!やっぱそうなんだよ、これは落とすもんなの」
🌸「落とすもんではないけどね」
🍷「ねぇ楽しかったね」
🌸「うん、楽しかった」
満足げな奏斗の笑顔に釣られて、こちらまで笑顔になる。
時期的にはだいぶずれてはいたけれど、それが寧ろ良かったのかもしれない。
寒くなるにつれ外出も減ってきていたからいい気分転換になった。
しっかりと後始末をして、季節はずれの花火大会は幕を降ろした。
🍷「またいつかやろうね」
* ┈ ┈ ┈ ┈ ┈ ┈ * ┈ ┈ ┈ ┈ ┈ ┈ *
花火たまにやるとまじで楽しいから
夏でいいからみんなやってほしい