時間は少し遡り、ティナがジョン達と別れを告げた時に戻る。
ジョンさん達に別れを告げて、私は転移魔法を使った。とは言え、プラネット号まで一気に転移することなんて出来ない。先ずはステルスモードでホワイトハウス上空に待機してるギャラクシー号へ戻った。
「ふぅ、疲れた」
『お疲れですね、ティナ』
「交渉なんて不馴れだもん」
百点満点には程遠いのは自覚してるよ。まあ、私の仕事は交流を深めること。本格的な外交は、その後本職さんに任せるとして……取り敢えず今日は疲れを嫌そう。
「アリア、プラネット号へ戻るよ。フェルが待ってるからね」
『畏まりました』
“ギャラクシー号”はそのまま急上昇。一気に大気圏を抜けて軌道上で待機してるプラネット号へと着艦した。
広い格納庫でギャラクシー号から降りた私をフェルが迎えてくれた。
「お帰りなさい、ティナ」
「ただいま、フェル。留守番ありがとね。寂しくなかった?」
「アリアが居てくれたから平気でしたよ。それに、ティナの活躍も見てましたから」
「あちゃー……見られちゃったかぁ」
ジョンさん関連の失敗もガッツリ見られたらしい。これは恥ずかしいね…。
「ふふっ。さっ、居住区へ行きましょう。やっぱりティナから直接お話を聞きたいです」
「そうだね、お土産もあるから食べながら話そっか」
ちなみに料理をスキャンした際に、リーフ人が食べられるものも一緒に振り分けてある。
フェルの事を考えなかったらもう少し食べられる料理も増えたんだけど……独り占めしても楽しくないし、やっぱり一緒に食べたいからね。
「今日はお風呂を用意してみました。疲れを癒してくださいね?」
「お風呂!?それは贅沢だなぁ。フェルも一緒に入ろ?」
「はい」
宇宙空間じゃ水は貴重品。まあ、補給する手段は色々あるんだけど、宇宙でのお風呂は贅沢な分類に入る。
普通はシャワーだし、無重力だと湯船は用意できない。
プラネット号には重力発生装置があるから、浴場があるんだよね。
居住区へ移動した私たちは、そのままフェルが用意してくれたお風呂へ一緒に入った。
「あー……幸せェ……」
「気持ちいいですねぇ……」
広い浴場で湯船に浸かりながら手足と翼を目一杯伸ばす。隣でフェルも同じようにしてる。翼や羽を伸ばすのは、背伸びをするみたいな感じで気持ちが良い。いつも邪魔にならないように畳んでるからね。
フェルも二対の羽を背中に沿うように降ろしてる。共通点?物凄く敏感なこと。
翼に触ってフワフワーってアニメとかじゃやってたけど、冗談じゃない。やられたら殴る自信がある……あっ、その前に腰砕けちゃうかも。とにかく敏感なんだよね。事前に言ってくれたらちょっとは我慢できるけどさ。
「いやぁ、シャワーも悪くないけどやっぱりお風呂は良いねぇ」
「シャワーだと洗われてるような感覚ですからね」
普段は全裸になって酸素ボンベつけて四方八方からシャワーを浴びる。洗車みたいな感じだよ。情緒なんて全く無い。
さて、私は今女の子なんだけど前世は男なんだよね。まあ、感覚的にはアルバムを見ているような感覚だし、男性だった頃の感性なんてほとんど残されて……いや嘘、ロマンを求めるのは間違いなく前世の影響だけど。
で、何が言いたいのかと言えば若干ながら男性的な感性が残されているわけで。となりに居るフェルに視線が行っちゃうんだよねぇ。
フェルは普段大人しくて礼儀正しい良い娘なんだけど、そのプロポーションは凶悪の一言だ。まだまだ発達の余地があるのに既に弾力に富んだ胸、透き通るような白い肌に、スラッとしながらも柔らかい身体。
見惚れるような金の髪をサイドテールにして、優しげな瞳に整った目鼻立ち。もはや芸術の域だよ。
リーフ人は美男美女が多くて、この辺りは地球人と感性が同じだから滅茶苦茶モテる。
アード人とリーフ人の夫婦なんて珍しくはない。ただ、根本的に種族が違うから子供を作る際には専用の処置が必要になる。
つまり、目のやり場に困る。いや、私だって自分が女の子だって認識してる。間違いなく性自認は女の子なんだけど……何だかなぁ。
「どうしました?ティナ」
「んーん、何でもないよ。気持ちいいね、フェル」
「はい、こうしてティナとゆっくりお風呂に浸かるなんて初めてです」
アードに居た頃も一緒にお風呂は入らなかったからなぁ。考えてみたら二人っきりの時間も少なかった。
……アードじゃフェルを守るためにあんまり出歩くことが出来なかったし。リーフ人達がどんな動きをするか分からなかったからね。
フェルは優しくてとても良い娘だけど、リーフ人がフェルを受け入れることは金輪際無い。
お父さんが移民管理局で調べた結果、フェル達の開拓団は全滅。生存者は居ないと処理されて、フェルの存在はデータベースから抹消されていたみたい。存在そのものを無かったことにする。排他的な種族だとは聞いていたけど、ここまでするとは思わなかった。
里に殴り込みでもかけてやろうかと思ったけど、そんなことをしても意味はないとお父さんに諭された……フェルも悲しむしね。
「ティナ?」
「ん、ちょっと考え事。地球の料理はとても美味しかったよ。包んで貰ったから、あがったら一緒に食べようね!」
「楽しみです!私も食べられるかな?」
「一応アリアに調べて貰ったから大丈夫だとは思う」
「じゃあ、食べてみますね!」
笑顔を浮かべるフェル。この子にはもうリーフ人の一員として生きていく道は残されていない。別に構わない。あんな奴らに任せるくらいなら、私がフェルの居場所になれば良い。それくらいの甲斐性はある。将来がどうなるか分からないけど、この気持ちだけは変わらない。
そうそう、あがったら地球の料理を食べながら明日の相談をしないとね。
記者会見で地球全域にセンチネルの存在を伝えて、宇宙へ向けた発信を今すぐに止めて貰うように訴える。
もちろん記者会見の前にハリソンさん、ジョンさんに伝えなきゃいけない。センチネル、あの脅威から地球を護らないと。
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