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**第9話: 襲撃!魔族との初遭遇**
シャドウリッジ山脈を探索し始めたトーマスとケインは、現世に戻る手がかりを探すために、山脈周辺の村々を訪れ、被害を受けた住民たちから情報を集めていた。
その日、二人は特に魔族の襲撃が多発しているという山脈の南端にある小さな村「リーヴィル」に到着した。村はかつては穏やかな場所だったが、最近では夜ごとに謎の魔物が出没し、住民たちは恐怖に怯えていた。
「この村で魔族に関する情報が得られるかもしれない。手分けして聞き込みをしよう。」トーマスがケインに提案すると、二人は村の中へと分かれていった。
トーマスは村の長老の家を訪れ、最近の魔物の出現について尋ねた。長老は疲れた顔で、深い溜息をつきながら語り始めた。
「最近、夜になると奇妙な光が山脈から村を照らし、その後すぐに魔物が現れるようになったんじゃ。あの光を見た者は皆、恐怖に駆られ、村を逃げ出した者もおる…」
トーマスはその話を聞いて眉をひそめた。「奇妙な光か…。それが魔族と関係している可能性が高いですね。」
一方、ケインは村の周囲を警備していた若い兵士たちに話を聞いていた。彼らも同様に、夜になると突然、異様な気配を感じ、魔物が現れるという現象に悩まされていた。
「とにかく、何か手がかりを掴まなければ…」ケインがそう呟いたその瞬間、村の中央から大きな悲鳴が聞こえた。
「助けてくれ!」村人たちが一斉に叫び声を上げ、あたりはパニックに包まれた。トーマスとケインはすぐさまその声の方へと駆けつけた。
村の広場に到着した二人の目に飛び込んできたのは、黒い霧のようなものに包まれた異形の魔物だった。鋭い爪を持ち、赤い瞳が不気味に輝いている。その姿はまさに噂に聞いていた魔族そのものだった。
「トーマス!あれが…魔族か!」ケインが叫び、短剣を構えた。
「間違いない、初めて見るが、この圧倒的な気配…ただの魔物とは違う!」トーマスも剣を抜き、魔族に対峙する。
魔族は二人に気づくと、低く唸り声を上げて突進してきた。動きは素早く、まるで闇そのものが襲いかかるかのようだった。
「ケイン、行くぞ!」トーマスが叫び、前世のテニスで培った俊敏なフットワークを活かして魔族の攻撃をかわしつつ、剣を振るった。魔族の腕を狙って鋭い一撃を放つが、剣は魔族の硬い外殻に弾かれた。
「硬い…!このままじゃ勝負にならない。」トーマスが歯を食いしばった。
しかし、ケインも負けてはいなかった。彼は魔族の背後に回り込み、隙を突いて短剣を深々と突き刺した。これが功を奏し、魔族は苦しむように身をよじった。
「今だ、トーマス!」ケインが叫ぶ。
その声に反応し、トーマスは再び剣を振り上げ、魔族の首元に狙いを定めて一気に振り下ろした。今度こそ、その一撃が確実に魔族の首を捉え、硬い外殻を切り裂いた。
「終わりだ!」トーマスが叫び、最後の力を込めて剣を突き刺すと、魔族は深い悲鳴を上げて黒い霧に溶け込むように消滅した。
二人は息を切らしながら立ち尽くした。魔族の消滅とともに、村には再び静寂が訪れた。
「やったか…」ケインが肩で息をしながらトーマスを見やる。
「ああ、でもこれで終わりじゃない。今の魔族は転生者だったのか…それはまだ分からない。」トーマスはそう言いながら剣を鞘に収めた。「でも、これで確信した。魔族を追い続ければ、現世に戻る手がかりが見つかるかもしれない。」
「そうだな。この戦いを無駄にしないためにも、情報を集め続けよう。」ケインも決意を新たにした。
二人は、倒した魔族が何か手がかりを残していないか、消えた場所を入念に調べた。村の住民たちも集まり、二人に感謝の言葉をかけたが、トーマスとケインの心には新たな決意が刻まれていた。
「次の戦いに備えよう。そして、必ず真実を見つけ出してみせる。」トーマスはそう誓い、ケインと共に村を後にした。シャドウリッジ山脈の奥深く、そしてさらに広がる未知の世界へと、二人の旅は続いていくのだった。