**第10話: 魔族の幹部への挑戦**
トーマスとケインがリーヴィルの村を離れ、次の目的地を目指して進んでいると、ふとケインが足を止めた。
「トーマス、聞いてくれ。村の住民から聞いた話だが、この近くに魔族の幹部が潜む洞窟があるらしい。」ケインは真剣な表情で話し始めた。「もしそれが本当なら、あの洞窟を調べる必要があると思うんだ。」
トーマスもすぐにその話に乗った。「確かに、それが手がかりになるかもしれない。魔族の幹部なら、現世に戻るための情報を持っている可能性も高い。早速、調べに行こう。」
二人は、地図に示されたシャドウリッジ山脈の奥深くにある洞窟を目指した。道中、森を抜け、険しい山道を登りながら、徐々に気配が不穏になっていくのを感じた。空気は重く、冷たい風が吹き抜けるたびに背筋が凍るようだった。
「この先にあるはずだ…気を引き締めて進もう。」トーマスは剣の柄を握りしめ、慎重に歩を進めた。
洞窟の入口にたどり着くと、その大きさに二人は息を呑んだ。洞窟の入口は、まるで闇そのものが広がっているかのように黒々と口を開けていた。周囲には異様な静寂が漂い、ただならぬ気配が満ちていた。
「ここだな…。この洞窟の中に、魔族の幹部がいるというわけか。」ケインが低い声で言った。
「警戒を怠るな。幹部がいるということは、側近もいるはずだ。」トーマスが答え、二人は洞窟の中へと慎重に足を踏み入れた。
洞窟の中は暗く、ひんやりとした空気が流れていた。足元には苔が生え、岩壁には奇妙な模様が彫られていた。進むたびに、二人は周囲の気配を鋭く感じ取りながら、奥へと進んでいった。
しばらく進んだところで、突然、前方にぼんやりとした光が見えた。その光が照らす場所には、数体の魔族が待ち構えていた。彼らは幹部の側近であり、その姿は異様に大きく、武装も厳重だった。
「ここからが本番だな。」トーマスが剣を構えた。
「気を抜くな。これまでの魔族とは一線を画しているはずだ。」ケインも短剣を握りしめ、戦闘態勢に入った。
側近たちは二人を見つけると、咆哮を上げて一斉に襲いかかってきた。トーマスは前世のテニスの俊敏さを活かし、素早く動いて側近たちの攻撃をかわしつつ、反撃の機会を伺った。ケインもまた、敏捷な動きで敵の隙を突いて攻撃を繰り出していた。
「トーマス、背後を頼む!」ケインが叫び、トーマスは即座に振り返って側近の一体に強烈な一撃を放った。剣が側近の鎧を貫き、黒い血が飛び散る。
「こちらもだ!」ケインが再び叫び、彼は側近のもう一体を相手に奮戦していた。トーマスも加勢し、二人で側近を追い詰め、ついにその場に伏せさせることに成功した。
息を整えた二人は、倒れた側近たちを見下ろしながら、さらに奥へと進む決意を固めた。
「これで幹部の居場所が見えてきたな。」トーマスが言った。
「ここまで来たら引き返すことはできない。幹部を討伐し、現世に戻るための手がかりを必ず手に入れよう。」ケインが力強く応えた。
洞窟の奥には、さらに強大な敵が待ち構えているはずだった。だが二人は恐れず、前に進むしか道はないと決心していた。幹部との戦いに備え、さらに気を引き締めながら、二人は闇の中へと消えていった。
次の戦いが、彼らの運命を大きく変えることになるかもしれない――そんな思いが、トーマスとケインの胸に去来していた。
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