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景乃と進次郎と春奈は動物病院へ向かった。母猫、ウィッキーは、猫エイズも猫白血病ウイルスも陰性で健康だった。しかし、娘は猫風邪になっていた。重症と軽症を繰り返していたと思われ、少しの間、入院となった。進次郎は、この子たちはうちの事務所で里親募集をしよう、と決めた。そして一週間後、入院していた娘は退院し、退院祝いに『ウィーファ』という名前をもらった。

ある日、景乃は気づいた。外ではキッと鋭い目をしてこちらを睨み、シャー!っと威嚇しては猫パンチを繰り出していたが、今は一切そういうことがない。手からもおやつを食べた。そのたびに、「いいこね」と褒めた。進次郎もこちらに来てはおやつを与えた。だが、なんと触ることも許したのだ。「この子は賢い。自分が今どういう状態にいるかちゃんとわかっているんだわ」景乃はそう思いました。

保護して一週間。トリミングに連れていった。長い毛にたくさんのゴミやら草やら虫やらを巻き込んで毛玉は大きくなっていた。後ろ脚の動きが不自然だったのは、毛玉が皮膚をひきつらせていたからだった。いったん丸刈りにするしかなかった。少しずつだが人に心を許し始めた。そしてゴロゴロと喉を鳴らすまでになった。心の奥ではずっと誰かに甘えたかったに違いない。3週間が過ぎて、フルコースの健康診断へ。血液検査や尿検査、ワクチン接種、耳や目の手入れ、爪切りもしてもらう。どんどん愛らしく、安心した顔つきになっていく。仲良しの娘、ウィーファと一緒にいれるのも安心するだろう。ウィーファもお腹を出して甘えるようになった。

進次郎の事務所の一角にあるミニ菓子店、キジ猫屋は景乃さんが運営している。饅頭、小さなケーキ、大きいホールケーキ、ムースケーキ、蒸しパン、かりんとう、せんべい、おかき、きなこねじりなどを作っており、進次郎の職場の人が休み時間等に買いに来たり、帰りに家族へのプレゼントと買いに来る。遠くから来る客もいるほどだ。

そのキジ猫屋のスタッフに、家では生まれる前から犬猫鳥飼っているが、ご飯、水、掃除だけやっていたので触ったことのない人がいた。彼の名は、佐藤圭司(さとうけいじ)。だが、少し経つとウィッキーとウィーファにデレデレ。そして菓子作りにも携わっている。饅頭やパン、ケーキに足を綺麗に清潔にしたウィッキーとウィーファの足跡を押すお菓子も出した。それが飛ぶように売れた。

景乃は、餌を運んでくださっている方に、保護することを前もって伝え、保護報告もしていた。だからウィッキーとウィーファを気にかけていた人たちが店に来るようになった。ウィッキー&ウィーファ専用に始めたインスタを見た友人や店の常連さんたちも会いにくる。みんなカンパや手紙や餌を持参で。それを二匹は美味しそうに食べる。

ウィッキーとウィーファ。特にウィッキーは賢いメス猫だ。そして甘えん坊で寂しがり屋だ。自宅で飼えないために、進次郎の事務所に連れてきたのだったが、夜は二匹きりにさせてしまう。昼も出入りがあってバタバタしがちだ。事務所ではなく、おうちの中で、存分に甘えさせてくれる譲渡先を見つけるべく、SNSでも譲渡先を探した。約14歳と高齢なので、条件は細やかに設定した。募集開始後ほどなく、ウィッキーとウィーファを迎えたいと申し込んだ人がいた。有門(ありかど)一家だ。主人の星也(せいや)、奥さんの道奈(みちな)、そして三歳の息子、星史(せいじ)だ。「この間飼っていた犬猫が立て続けに亡くなってしまって、寂しくて。新たに迎え入れたいと思った時、ウィッキーちゃんとウィーファちゃんを見つけたんです。」といいました。

お見合いの日。初めて会う人には素っ気ないウィッキーが、有門さんにやさしくなでてもらった後のこと。おもむろに伸びをしたかと思うと、けいさんの横を素通りして、有門さんの足元にそっとすり寄るではないか。

「ウィッキーが『この人がいい』と言ってる!ウィーファはもうゴロゴロお腹出して寝てるじゃない!」と、けいさんの心が震えた瞬間だった。景乃自身、有門さんのウィッキーとウィーファをなでる手のやさしさや、注ぐ視線の穏やかさに「この人で間違いない」と感じていたという。

そして来週。二匹をトライアルに送る日がやってきた。めでたいやらさびしいやら、みんなでナデナデして送別をする。猫を触ったことのなかったあの圭司はこんなことを言った。「嬉しいけど、ウィッキーとウィーファがいなくなったらさびしい。また保護しないんですか」

そして二匹は新しいおうちへつきました。

保護犬保護猫物語  人間不信の母猫たち

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