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涙乃
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うめぼっち

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うめぼっち

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うめぼっち

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ここに小銭を落としたら願いが叶うなんて、池の神様がいらっしゃるんだろうか。
それは、どんなお姿をしているのだろうかと思ったとき「真那」と、蒼波様に名を呼ばれた。
「──はい」
「いくら東堂家が真那の遠縁であったとしても、稀人の存在を世間から秘匿する為だったとしても、東堂家のやり方は俺は許せない」
蒼波様が私と結んだ手に力を込めた。
「真那は生きる道標として、医療に希望を見出したというのに、それを偽りや甘言で踏み躙るなど言語道断。許し難い。真那が心が折れて、死を願ってしまった経緯……森で出会ったこと、全て理解した」
じゃりっと足音を立てて、私に向かい合う蒼波様。
長いまつ毛に、凛々しい眉。
夜よりも深い黒髪に色香さえ感じてしまい、胸が高鳴る。
「真那」
「はい」
「一人で死ぬことは許さない。年寄りになるまで共に生きるぞ」
「──はいっ」
それは私にとっては『愛している』より、嬉しい言葉だった。
胸がじんわりと温かくなると、握られた手を蒼波様の胸元へと引き寄せられ、抱きしめられた。
また嬉しくなり、自然と笑顔になる。
うっとりしながら蒼波様に身を委ねる。
「この池に願うのは『二人で長生き』だな」
「それがいいです。元気に二人で長生きしましょう」
そっと顔をあげると互いに微笑み合い、蒼波様が懐からさっと小銭を取り出して、池に二枚投げ入れた。
ぽちゃん、ちゃぷんと音がして池に浮かぶ月が揺らめく。
その光景にお年寄りになっても、こうして蒼波様と寄り添っていけますようにと願っていると、ふいに蒼波様が私の額に口付けした。
柔らかな唇の感触に驚いてしまうと、蒼波様が私の耳元で囁く。
「家に帰ったら、三日分。真那からの口付けを所望する」
「!」
「今度また、二人で食事に行こうな」
さらっと頭を撫でられて、この方はやはり豊穣の海を思わせる包容力ある人だと思った。
いつまでもこの暖かな海の中に抱かれていたいと思いながら、しっかりと頷くのだった。
※
「真那君っ。ウチのバカが演習中に怪我をしたみたいだ! ワシは今から診察で手が離せん。看護係や衛生兵は昼食作りに駆り出されてしまっての。行ってくれるかの?」
お昼前、営所の医務室に磯貝先生の威勢のいい声が響いた。
白髪と豊かな白髭が特徴の磯貝先生。
ご高齢ではあるが、元陸軍軍医大尉という経歴に違わぬ活動的なお姿を見るたび、今も現役なのではないかと思ってしまう。
学校の保健室を思わせる木造の室内で、ガーゼやリント|布《ふ》、包帯、消毒用の|石炭酸《フェノール》、といった薬品の在庫確認を終えたところだ。手は空いている。
手にしていた鉛筆と用紙を素早く机に置き、磯貝先生の声がした方に素早く振り向く。
磯貝先生は扉の入り口に居て、懐中時計を見ながらソワソワしていらっしゃった。
「もちろんでございますっ。場所は?」
「道場で柔道の訓練中に一人が足首を負傷。痛みでその場から動けないらしい」
「かしこまりました。すぐに道場に向かいます!」
「おお、頼んだぞ。じゃっ」
磯貝先生は素早く懐中時計を懐に入れて、その場を飛び出した。
ここの営所は蒼波様が統括している大連帯の一つ。
約五百人もの人達が日々、軍事訓練に励まれている。
その他にも蒼波様はここの営所以外にも中連帯、小連帯も纏められていて、のべ千五百人以上の頂点に立つ連隊長が──蒼波様だというのだから驚きだ。
「蒼波様がお忙しいのも頷けるわ」
口でぽそっと呟きながら手は救急箱を素早く手に取り、白い看護服のワンピースの裾を揺らして私も看護室を飛び出した。
もう営所の案内板を見なくても、最短の道順で道場に向かえるようになった。
医務室から右に曲がり、本館を出て、中庭を突っ切るのが一番早い。
前を向いて、しっかりと救急箱を抱いて廊下を早歩きする。
コメント
1件
ああ〜〜第41話、読み終えたよ😭💕 もうね、池のシーンが最高すぎた/// 蒼波様の「一人で死ぬことは許さない」って言葉、重すぎて泣ける…「愛してる」より嬉しいって真那の気持ち、すっごくわかるよ!!ふたりで長生きするって願うところ、尊すぎて胸がぎゅってなった💖 後半の看護シーンでテンポ変わるところも好き。真那が案内板なしで動けるようになってる成長が伝わってきてじーんときたよ…! 次が気になる〜!