テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
258
1,003
718
2,225
りりさん東北に居ます。
空気が綺麗。
見られるのは嫌だけど
診察が終わったあと、ほとけは待合の隅でぐったりしていた。
採血に心電図、エコー検査。
慣れているはずなのに、今日はいつも以上に疲れる。
「顔色悪いな」
隣に座った悠佑がペットボトルを差し出した。
「飲める?」
「……ちょっとだけ」
キャップを開ける手にも力が入らない。
すると悠佑が自然に受け取って開け直した。
「はい」
「……ありがと」
ひと口飲むだけで息が上がる。
そんな弟を見て、悠佑は少し眉を寄せた。
「やっぱ最近しんどいやろ」
「……まぁ」
「“まぁ”ちゃうねん」
その時、診察室から出てきたいふが検査結果の紙を見ながら言った。
「数値、前回より落ちとる」
ほとけの肩がぴくりと揺れる。
「え……」
「すぐどうこうではない。でも負担は増えとる」
静かな説明。
余計な不安を煽らない、医者の言い方。
でも、ほとけには十分刺さった。
「……学校、かな」
ぽつりと呟く。
悠佑といふが顔を見合わせた。
「可能性は高い」
「……そっか」
分かっていた。
学校へ行こうとすると体調を崩す。
課題を見るだけで息が詰まる日もある。
それでも、“頑張らなきゃ”をやめられなかった。
待合の人たちの話し声が遠く聞こえる。
ほとけは膝の上で手を握った。
「僕さ」
「ん?」
「もうちょっと普通の身体だったらよかったな」
空気が静かになった。
「みんなみたいに元気だったら、ちゃんと学校行けたのかなって」
そう言って笑おうとしたけれど、うまく笑えなかった。
悠佑がゆっくり背もたれに寄りかかる。
「……まぁ、俺らは健康やからな」
「うん」
「でもな」
悠佑は少し考えてから続けた。
「お前みたいに頑張れへんと思うで」
「……え?」
「俺、少ししんどいだけでもめっちゃ騒ぐ自信ある」
「それはありそう」
思わず笑ってしまう。
いふまで小さく吹き出した。
「悠佑は大袈裟」
「なんやと?」
少しだけ空気が軽くなる。
その隙に、いふが真面目な声を落とした。
「ほとけ」
「……なに」
「お前は“普通”になれんかったんやない」
視線が向く。
「“普通”よりずっとしんどい状態で、生きとる」
その言葉に、呼吸が止まりそうになる。
「だから、自分を普通の人間と比べんな」
いふの声は不器用なくらい真っ直ぐだった。
「基準がおかしい」
「……」
「お前、十分頑張っとる」
胸の奥が熱くなる。
ほとけは俯いた。
涙が落ちそうで、顔を見られたくなかった。
すると悠佑が立ち上がる。
「ほら、帰りなんか食うか」
「え」
「頑張って通院したご褒美」
「子ども扱い……」
「末っ子やし」
「またそれ」
でも少し嬉しい。
ほとけが小さく笑うと、悠佑も笑った。
「何食いたい?」
「……あったかいの」
「了解」
その時だった。
待合の向こうから、高校生くらいの集団の笑い声が聞こえてきた。
制服姿。
楽しそうに話している。
その光景に、ほとけの笑顔が一瞬だけ止まった。
胸がきゅっと痛む。
気づいたのだろう。
いふが静かに立ち位置を変えて、ほとけの視界を少し遮った。
何も言わずに。
その優しさが余計に苦しくて、でも温かくて。
ほとけは小さく唇を噛んだ。
闘病中に元気な人見ると楽しそうって思う反面、少し悲しくなる
コメント
3件
投稿ありがとうございます!今回も神作でした!✨無理せず頑張ってくださいっ!😊 ♡失礼しまーすっ!