テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
【俺はもう、大丈夫だヨ】
Episode.2 変わりゆく朝
【🎼🍍side】
あの日と同じように、包丁の音が響く。
トントントン、と小気味よく刻まれる音が、
俺にとっては“朝が始まった”という合図だった。
カーテン越しの光はやわらかく、
窓辺の植物は今日もまっすぐ空を見ている。
部屋の空気には、昨日と同じはずの匂い――
けれど、俺はその中に、
ほんの少しだけ“違う”何かを感じ取っていた。
寝ぼけたまま、ゆっくり布団から抜け出す。
🎼🍍「…おはよー」
リビングに顔を出すと、父さんは味噌汁の鍋の前に立っていた。
🎼🍵「おはよう、ひまちゃん」
🎼🍍「………父さん、なんか…顔色悪くない?」
🎼🍵「そう?気のせいだよ」
笑いながらそう言う父さんは、
すぐにおたまを持ち替え、味噌を溶かした。
いつも通りの光景。
でも、“いつも通り”が、少しだけ歪んで見えた。
父さんは湯気に隠れるように顔を背け、
深く息を吐いた。
🎼🍵「昨日の魚、残ってたから焼き直したよ」
🎼🍍「えー、新しいのにすればいいのに…」
🎼🍵「勿体ないからね。それに、焼けば美味しいよ」
そう言って笑うその声が、
どこか掠れて聞こえた。
俺は黙って箸をとる。
焼き魚の香ばしさが鼻をくすぐるけれど、
どうしても胸の奥の“ひっかかり”が取れなかった。
🎼🍍「…父さん、昨日の夜、何してたの?」
🎼🍵「…うん?」
🎼🍍「水の音、してた。なんか、吐いてた?」
ピタリと箸の音が止まる。
空気が、ほんの少し重たくなった。
父さんは、笑顔を作ったまま言った。
🎼🍵「…ちょっと飲みすぎちゃったかなぁ」
🎼🍵「久しぶりにお酒飲んだからかな」
🎼🍍「…ふーん」
俺はそれ以上何も言わず、ご飯を口に運んだ。
それが嘘だとわかっていても。
信じたいものを信じる方が、
この家の空気は壊れずに済む気がしたから。
🎼🍵「あ、そうだ」
🎼🍵「今日の夜ご飯は、ひまちゃんが好きなオムライスにしようか」
🎼🍍「え?!ほんと!?」
そんなやりとりが、
昨日と同じように笑いに包まれていく。
けれどその笑顔の裏で、
父さんは一瞬だけ、胸を押さえて息を整えた。
俺の目には映らない位置で。
その仕草はほんの数秒。
でも、確かにあった。
朝食を終え、ランドセルを背負う。
🎼🍍「行ってきます!」
🎼🍵「気をつけるんだよ」
ドアを閉める音の直前、
俺は一度だけ振り返った。
キッチンに立つ父さんの背中。
その姿はいつもと同じなのに、
なぜか――やけに遠く見えた。
通学路ではこさめが相変わらず元気いっぱいで、
🎼☔️「なつくん!昨日のテレビ見た?!」
と駆け寄ってくる。
🎼🍍「見てない、ゲームしてた!」
🎼☔️「えー!?あれ面白かったのに!!」
その横で、いるまが呆れたようにため息をつく。
🎼📢「またバラエティ?朝から元気だな」
🎼☔️「元気が一番!」
こさめの明るい声が響いて、
俺の頬が少しだけゆるんだ。
だけど、ふとした瞬間に思い出す。
父さんの顔色の悪い顔。
掠れた声。
笑っていたはずのその目の奥に、
ほんの少しの疲れが宿っていたことを。
教室に入ると、窓際の席に光が差し込んでいた。
チョークの粉が、空気の中できらきら光る。
俺は席に着き、頬杖をついた。
──なんか、今日の朝の味噌汁、少ししょっぱかったな。
そう思った瞬間、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。
何が、どうして、こんなに痛いのかはわからない。
でも、心のどこかでわかっていた。
あの朝は、少しずつ終わりに近づいている。
放課後、こさめといるまが笑いながら駆け出していく。
俺は一歩遅れてその背中を追いかけた。
空は赤く染まり始めていて、
西の空の向こうで、ゆっくりと日が落ちていく。
夕焼けを見上げながら、
俺は小さく呟いた。
🎼🍍「…父さん、“今日”ちゃんと笑ってるかな」
答えのない空は、
ただ、優しく頬を照らした。
next.♡200
コメント
12件
通知気づかずにみれてなかった!すっちーは無理しがちだよお、どっちの世界でも
うわぁぁ…好きぃぃ…🤦🏻♀️ 🍵くん大丈夫かな!? 嫌な予感がする…😭
🍵くん大丈夫かな...💦