テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
スクールバッグにつけたてるてる坊主のシロクマのぬいぐるみキーホルダーを揺らしながら登校する時守。
真風菜(まふな)を見かける。スクールバッグでは猫のぬいぐるみキーホルダーが揺れていた。
「大鍵芸常(タケゲツ)さん」
ワイヤレスイヤホンで音楽を聴いていた真風菜の耳に、音楽の奥から名前を呼ばれて振り返る。
するとそこには手を挙げている時守がいた。
「あぁ、平野(への)くん」
ワイヤレスイヤホンを外す。スクールバッグで揺れている
てるてる坊主のシロクマのぬいぐるみキーホルダーが視界に入り少し嬉しくなる真風菜。
「おはよ」
「おはよ」
「今日は暑いくらいに晴れたね」
「お陰様で」
時守がスクールバッグを前に持ってきて、無言でてるてる坊主のシロクマのぬいぐるみキーホルダーを見せる。
「あ、どうも」
なんか照れ臭い。
「こちらこそありがとうございます」
「あ、いえいえ」
やっぱりどこか照れ臭い。
「ちょい暑いよね」
「まだ春なのにね」
「異常気象」
「夏になったらどうなるんだろうね」
「なんかこれ毎年話してる気がするな」
「北海道でも毎年そんな感じなの?」
「うんー。父さんたちが子どもの頃は北海道イコール寒いーだったけど
今は夏、ふつーに暑いからね、北海道」
「そうなんだ?」
「東京より暑いんじゃない?わかんないけど」
「そんなことないでしょ」
と笑う真風菜。
「いやマジだって」
と笑いながら話す時守。そんな風に話しながら昇降口へ行き、下駄箱で上履きに履き替える。
2人で教室に入る。
「おっはー!」
空楽王(ソラオ)は朝から元気がいい。
「おはよ空楽王」
「お!おはYo!!空楽Oh!!って?韻踏んできたな?ラップバトルか!?
…ま、ラップバトルされてもオレができないけど」
「できないんかい」
と軽くコケる子那恋(しなこ)。
「あ、おはよ真風菜ぁ〜」
子那恋が真風菜に挨拶する。
「おはよ子那恋。華音(はなお)と優佳絵(ゆかえ)もおはよ」
「ん。おはよ」
「おはよう」
「おはよ時守」
礼王(れお)が爽やか笑顔で挨拶する。
「おはよー礼王」
鏡はワイヤレスイヤホンでなにかを聴きながら、教科書とノートを広げて復習していたので
「おはよ鏡」
声をかけながら肩に手を置く。すると鏡は顔をあげて、ワイヤレスイヤホンを片方外して
「時守。おはよ」
と挨拶を返してくれる。ワイヤレスイヤホンから流れるのは
「Come on, let’s go play tennis together!!
Sorry. I have some anime I want to watch so I’ll pass today.」
という英文が聞こえてきた。
「マジでなんでそんな勉強熱心なのかねぇ〜。特に英語なんて。日本人なんだからさ」
とやれやれといった表情をする空楽王。
「いや、グローバルな世の中なんだし、英語は世界共通言語なんだから少しは喋れたほうがいいでしょ」
と首が疲れたのか、首を曲げながら言う鏡。
「姉ちゃんが言ってた。喋れんでも全然よゆーって」
「姉、悪影響すぎるだろ」
とツッコむ鏡。担任の先生が入ってきて朝のホームルームが始まる。
「じゃ、今日も怪我なく、問題を起こさずに1日頑張ってください」
「オッケーシブヤン!」
「怪我とか問題とか、特に一州茗楽(イスミラ)、お前のことだからな」
「嘘じゃん」
「ほんとだよ」
クラスメイトがクスクス笑う。そんな感じでホームルームが終わった。
1時間目の授業は「世界史」の授業。授業が終わった。
「ま、世界の歴史を知る前に自国の歴史を知れっていうね?
だから鏡もさ?さっき言ってたけど、グローバル社会?うんぬんより、日本語しっかりしようぜって。
若者言葉とかギャル語とかあるけどさ?ベースをしっかりしないとダメでしょって」
「ま、言ってることは的を射てるな」
礼王が半笑いで言う。
「えぇ〜。ギャル語とか若者言葉ダメなん?ぴえぬす」
子那恋(しなこ)が別に悲しくないが「悲しい」みたいな顔をする。
「いや、知らんけど。姉ちゃんの受け売りだし」
「勉学を否定したり、良いこと言ったり。どんなお姉さんなんだよマジで」
2時間目は「数学Ⅱ」の授業。授業が終わる。
「数学はどうですか?」
と礼王がインタビューをするように空楽王に聞く。
「そうですねぇ〜。私の姉、空頼賜(ソラシ)曰く、大人になって最も使わない教科が数学らしい。
図形のうんちゃらとか微分積分?だっけ?とかマジで使わんって言ってた」
「え。お姉さんソラシっていう名前なの?」
「ん?そだよ?」
「ドレミファソラシドの?」
「なのかな?母さんに聞いたことないから知らんけど」
「情報量が多いな。そのお姉さんがギャルなんだっけ?」
礼王が整理を始める。
「そ」
「名前がソラシ」
「そ」
「そのお姉さんが数学は人生に必要ないって?」
「そ」
「でも私のお姉ちゃんも言ってたなぁ〜。数学なんであんな必死に勉強してたんだろって」
子那恋(しなこ)が呟く。
「な!そうだよな!」
「空楽王のお姉さん、いろいろ気になるわ」
と呟く礼王。3時間目は「物理」の授業。授業が終わる。
「物理はどうなの?」
時守が空楽王に聞く。
「物理?それは多少必要かもって言ってたな」
「お?」
礼王が少し驚く。
「おぉ」
時守も少し意外に思い、鏡もなにも言わなかったが少し驚いていた。
「それはなぜに?」
礼王が聞く。
「姉ちゃん曰く、物理は生活に関わるから多少は知識を入れておきなって。
ただ重力のことさえ知ってれば大丈夫だって。だからアインシュタインの名前と重力ってことだけ知ってれば
大人になってもある程度頭良さげな会話できるから大丈夫だって」
軽くドヤ顔をかます空楽王。
「ニュートン」
鏡が呟く。
「え?かがみんなんか言った?」
「かがみん」という名前にピクッっと反応するヲタクな華音。
「万有引力の法則を見つけ、定義づけしたのはアイザック・ニュートン。
アルベルト・アインシュタインは特殊相対性理論、一般相対性理論を定義付けた人」
と空楽王に説明する鏡。
「はいはい!そーたいせー理論ね!聞いたことはある!…なんかは知らんけど…。
で、バ、バンユーインリョク?それはなんなん?」
「引力。引く力」
「あー!はいはい!引力ね!…引力と重力って違うん?」
と「え。マジ?」的な、驚いたような、なんともいえない顔で聞く空楽王に
説明めんどくさ
と思う鏡。
「…ま、だいたい同じだよ。引力は物レベル。重力は地球レベルって考えたらいいよ」
とものすごく簡単に説明した。
「なるほどな!」
輝くように納得した空楽王。
「アインとニュートンは…うん。あのニュートンに肩を貸したあの場面が印象的だよね。
リンゴ頭なのがまた可愛いのよ」
と華音がニヤけながら呟く。その様子を「?」顔で見る優佳絵(ゆかえ)。
4時間目は「古典」の授業。授業が終わる。
「お姉さんは古典はなんと?」
礼王が空楽王に聞く。
「古典なんて…」
「やれやれ」というような表情とポーズをする空楽王。
「使わん使わん。って言ってた」
「まあ。たしかに」
時守が笑いながら言う。
「考えてみ?古典よ?もう古典って言ってんじゃん。古い…典(てん)って」
あ、今「典」ってどう言っていいかわからなかったな
と鏡、子那恋(しなこ)、時守、華音、真風菜、礼王、優佳絵、全員が思った。
「もう古いって言っちゃてんもん。我々は現代に生きてるんよ?冗談で「いとをかし」くらいしか使わんて」
「と?」
「姉ちゃんが言ってた」
というやり取りを終え、お昼ご飯の時間へ。時守、礼王、子那恋、華音は売店へ。
「んふふ〜」
子那恋が嬉しそうに、これ見よがしに左腕を華音に見せつける。
「ブレスレット買ったの?」
聞かざるを得ない。
「えぇ〜?わかっちゃう?」
わかっちゃう?もなにも気づかせる気満々だった子那恋。
「まあぁ〜?買ったっていうかぁ〜?もらったっていうかぁ〜?」
「誰に?」
「一州茗楽(イスミラ)」
「え!?そうなの!?」
「ま、交換だけどね?」
「交換?」
「そ。私が取ったダレモン(ヨダレモンスターの略)のキーホルダーと」
「へぇ〜」
「まあ?あいつが私に。って感じだったけどね?」
事実だが、ツンデレである。
「っ…しょん!…あー…」
教室では空楽王がくしゃみをしていた。
「で?で?で?」
子那恋が華音に密着する。
「ん?」
「六蓋守(ムコウモリ)きゅんとはどんな感じなの?」
「へ?」
「おとぼけさんめぇ〜。一緒に帰った後展開はなかったのかって聞いておるのだよ」
「あぁ。まだ決めてないけどまた一緒にクレーンゲームしに行こうかとは言われた」
キュン!とした子那恋。
「いい!めっちゃいい!見守りたい!見守り隊!」
「なんで2回言ったの?」
そんなこんなでお昼ご飯を売店で買い、男子組、女子組でお昼ご飯を食べる。
「聞いてい?」
「ん?なに?礼王」
「お姉さんの話なんだけど」
「お?なになに?うちの姉ちゃんに興味出た?」
「まあ。興味は出たね」
「ギャルよ?」
「ん?うん」
「年は26よ?」
「お。そうなんだ?結構離れてんね」
「それでもいいの?」
「はい?」
「え。礼王ちんうちの姉ちゃん狙ってるんじゃないの?」
「狙ってるか!」
珍しく大きな声でツッコむ礼王。
「いいツッコミ」
と笑う空楽王。
「でも26歳なんだね」
と時守が話を戻す。
「そ」
「だいぶ離れてるよね」
鏡も話に入る。
「ね」
「仲は良いの?」
「うん。上の姉ちゃんとは割と仲良いね」
「あ、お姉さん2人いるんだっけ?」
「お、礼王ちん下の姉ちゃん狙ってるんか?」
「狙ってません」
「ちなみに下のお姉さんはいくつ?」
「23」
「仲は良い?」
「んん〜…。ま、悪くはないはず」
「上のお姉さんよりはって感じか」
「そうね」
「ちなみに名前は?」
「楽来(らら)。ギャルよ」
耳の端で聞いていた女子4人。
らら。可愛い名前だな
と思った。
「なんかお姉さんのおもしろ情報ないの?めっちゃ授業に関して意味ないって言ってくるみたいな」
「あぁ〜…。上の姉、空頼賜(ソラシ)姉ちゃんはね、現役のストーカーやってるね」
「…」
「…」
「…」
鏡、時守、礼王は黙った。
「…」
「…」
「…」
「…」
子那恋(しなこ)、華音、真風菜、優佳絵も黙る。空楽王だけ平然とお弁当をもぐもぐ食べる。
「え?」
「ん?」
「え?ス…ん?もっかい言って?」
「ん?ストーカー?」
「現役の?」
「うん。現役のストーカー」
「「「怖っわ」」」
男子3人ハモった。女子4人は聞き耳を立てる。
マジか!?
子那恋(しなこ)、華音、真風菜、優佳絵も心の中で驚く。
「え。え。え。え?え?ガチ?」
「うん」
あっさり頷く空楽王。
「え。誰の?アーティスト?俳優?」
「ううん。一般人」
「「「「「「「一般人!?」」」」」」」
また男子3人がハモった。と思ったら、女子4人も思わず空楽王のほうを見て口に出ていた。
「おぉ。なんか声が多いと思ったら」
空楽王も驚く。
「え。一般人のストーカー?」
「そ」
「え。それは犯罪では?」
礼王も混乱していますが、一般人でも芸能人でも
ストーカー行為はストーカー規制法によって規制される犯罪です。
ストーカー規制法違反の場合、罰則は1年以下の懲役または100万円以下の罰金。
さらに禁止命令に違反した場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金になります。
原則的に被害者が警察に相談しない限り
ストーカー行為が犯罪になることはありませんが、極力やめておきましょう。
「犯罪、なのかな?でも訴えられてないし」
「訴えられてる訴えられてないの問題じゃないと思うけど」
正論の鏡。
「え。なんで?元カレとか?」
子那恋(しなこ)も興味津々で聞く。
「いや?ホストだって聞いてる」
「ホストね。なるほどね」
なぜか納得する子那恋。
「ま、もう辞めてるらしいって楽来(らら)姉が言ってた」
「めっちゃイケメンだったんだ?」
「さあ?楽来姉も見たことないって」
「めっちゃ貢いだとか?」
「いや?ホス狂(ぐるい)にはなってないよ?全然」
「ある意味ホス狂になってると思うけど」
と呟く優佳絵。
「たしかに」
と静かに笑う真風菜と華音。
「じゃあなんでそんなストーカーになってん?」
「めっちゃタイプだったとか?」
「ま、それはあるかもね」
「ちょっと空楽王のお姉さんおもしろすぎるな」
時守が言う。
「会いたいまであるわ」
礼王が言う。
「わかる。一州茗楽(イスミラ)のお姉さんおもしろい。話したい」
子那恋も同意する。
「じゃ、空頼賜(ソラシ)姉のことはちょいちょい報告するわ」
と全員空楽王のお姉さんに食いついたお昼だった。