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#主人公最強
#ハッピーエンド
海の紅月くらげさん
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再び、クレスが消える。
音速の衝撃がムーの身体を貫通する。胸や頭に風穴が空いていく。
一通りの打撃を試した後、クレスは舌打ちした。
「……ここまでやっても死なないのか? さすがにしつこいな、再生」
クレスの眼が青く光り、ムーを観察する。
クレスが薄く笑った。
「へえ、ゾンビたちと同じ寄生虫を飼ってるのか」
「なっ……!?」
「殺したヒーローの中に透視能力持ちもいたのさ。さて、タネはわかった」
突如、炎を混ぜ込んだ竜巻にムーは閉じ込められた。火傷覚悟で外に逃げようとすると、衝撃波で中心に押し戻される。
クレスの手元に雷を纏った氷の槍が出来上がる。
「中の虫を射抜く。再生もそれで終わりさ」
クレスが槍投げの構えをとる。
身動きの取れないムーに狙いを定めたとき、空が光った。
クレスが顔を上げる。
雲の向こう、赤い線が走っていた。
炎の尾を引きながら、巨大な岩塊が大気圏を突き破る。
二百メートルはあろうかという巨大隕石が、クレスめがけて飛びこんできた。
「……派手な援軍だな」
クレスは矛先を隕石に変える。氷の槍が隕石に突き刺さる。
次の瞬間、巨大な岩塊が空中で爆散した。
炎をまとった流星群が王都へと降り注ぐ。
クレスの意識が隕石に向いている隙に、ムーは強引に竜巻の外に飛び出した。
炎や衝撃波によるダメージに顔をしかめながら、耳元をさする。
「ガロン、応答しろ! 隕石は君の仕業か!?」
『ええ。この装置をうまく使えば隕石を落とせると思いまして。だってコレ、隕石群の元凶ですし』
「副作用は!?」
『月が落ちてくるまでの時間は、あと四十分になりました』
「馬鹿が! 我々の寿命が三十分も縮まった!」
『三十九分伸びたんですよ。使わければ、一分前に貴方が死んでる』
クレスは目に青い光をたたえる。
流星群がもたらす土煙の中に身を隠す、ムーの姿を探していた。
「見つけた」
ムーに向き直ろうとした、その時――クレスは、不思議な光景を目にし、思わず足を止めた。
ゾンビが、歩きスマホをしていた。
「……え?」
いつの間にかゾンビたちは、スマホやタブレットなどのデバイスを手にし、みな一様に画面に釘付けになっている。中には町中を駆け回り、スマホやタブレットを配っているゾンビもいるようだ。
「……いや、何処でそんな端末を……というか、スマホ眺めてる状況じゃないだろ? みんなして、何を見ている?」
辺りを見渡し、クレスは目を見開いた。
ついっさきまで無かったはずの建物が、そこにあった。
王国広場のど真ん中に、色とりどりの広告パネルに彩られた巨大なビルが聳え立っていた。
瓦礫と化した王都の中で――いや、たとえ王都が健在だっととしても、明らかに浮いている。
ゾンビの群れが食い入るようにビルを見上げている。
ビルに備え付けの大型フルスクリーンに光が灯り、少女の声でタイトルコールが読み上げられた。
『ヒーローVSエイリアン! 激闘を制するのは誰だ!?』
画面が移り変わる、銀髪の少女がカメラに向けて笑いかけていた。
『さあ、ヒーローVSエイリアン&ゾンビ連合軍、侵略者同士のアツいバトルを、迫力の大画面でお届けします! いやー、すっごく目立ちますね、これ! 街頭ビジョンを拾ってきたかいがあったというものです! 実況はこの私、リシェル・カーヴァンクルが担当します! 解説はこの方!!』
壮大な効果音とともに、青ざめた顔の男に画面が切り替わる。
『今や壊滅状態のアストリア王国騎士団所属、ゲイリー・グルード氏です! ゲイリー氏、何かコメントを』
『……いや……何、これ? ……俺さっき、カイルに拉致されて……え?』
『解説役のゲイリー氏、何ひとつとして状況がつかめていないご様子です!』
『……俺、何でこんなとこ、連れて来られたの? カイルに、恨まれたから?』
『カイルさんは、今さらあなたに興味はないと思います! ぶっちゃけ全人類、あなたのことはどうでもって感じですね。ま、消去法です。今の王都に人語を話せる非ゾンビがロクにいなかったので!』
ゾンビたちは画面を食い入るように見ている。
クレスもまた、困惑顔で画面から目を離せなくなっている。
「……いや、何をしてるんだ、こいつらは……?」
意味不明すぎる。
防御特化装甲と無限の再生能力を盾にした殴り合い、そしてあの超巨大隕石。
奴らにとっても、高リスクだったはず――捨て身の時間稼ぎだったのは間違いない。
その貴重な時間を犠牲にして、奴らが準備していたことが――。
「……動画配信、だと?」