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生まれた欲

四月も、

終わりに近づいていた。


上着が、

要らない日が増えて。

風も、

もう冷たくない。


季節と一緒に、

心も、

ほどけていく。


あれから、

いろんな話をした。


仕事のこと。

一日の出来事。

何を食べたか。

どんな空を見たか。


他愛もないLINE。


それが、

こんなにも、

楽しい。


通知が来るたび、

自然に、

口元が緩む。


読み返してしまう。


特別な言葉じゃない。

それでも、

節々に滲む、

彼の優しさ。


気遣い。

間の取り方。

踏み込みすぎない距離。


それが、

嬉しくて、

温かい。


だから、

欲が生まれた。


文字だけじゃ、

足りなくなった。


画面の向こうにいる人が、

急に、

遠く感じる。


声が、

聞きたい。


ただそれだけなのに、

それが、

いちばん言いづらい。


彼は、

眩しい。


春の光みたいに、

静かで、

温かい。


その光が強くなるほど、

本来、

隣にいるべき人は、

影になる。


黒く、

塗りつぶされた存在。


比べるつもりは、

なかった。


それでも、

比べてしまっている。


スマートフォンを握る。


入力欄を開いて、

閉じて。

また開く。


言葉を、

探しているふりをしながら、

本当は、

勇気を待っていた。


でも。


待っていたわけじゃない。


ただ、

こぼれただけ。


――もし、

よかったら。


――少しだけ、

お電話してもいいですか。


送信。


後悔は、

まだ来ない。


春の夜は、

優しくて。


菜月の心は、

温かかった。

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