テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
75
今日日
10
#かんとりーひゅーまんず
250
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「日本さん、今日もお疲れ様です」
「ありがとうございます」
仕事を終えた日本が建物から出ると、そこには見知らぬ男性が立っていた。
「突然すみません。以前からあなたのことを知っていて……よかったら今度、一緒に食事でもどうですか?」
「えっ……私ですか?」
「はい」
日本は困ったように笑った。
「申し訳ありません。お気持ちはありがたいのですが――」
「日本」
低い声が響いた。
「……中国さん?」
振り返ると、中国が立っていた。
いつもの穏やかな表情とは違う。
明らかに機嫌が悪い。
「その人、誰アル?」
「えっと……今、お食事に誘っていただいていたところでして」
「そうアルか」
中国は男性を見る。
「……日本は我と予定があるアル」
「え?」
「そうネ?」
「え、あの……」
日本が困惑している間に、中国は日本の手首をそっと掴んだ。
「行くアル、日本」
「中国さん、ですが――」
「いいから来るネ」
「は、はい……」
そのまま連れていかれる日本。
残された男性は呆然としていた。
そして少し離れたところで、その様子を見ていた韓国が苦笑する。
「……あーあ」
◆
「中国さん、先ほどの方に何か失礼なことを言っていませんよね?」
「言ってないアル」
「本当ですか?」
「本当アル」
「……なら、なぜ私を連れてきたんですか?」
「…………」
中国が黙り込む。
日本は首を傾げた。
「中国さん?」
「……あの男」
「はい?」
「日本のことを好きそうだったアル」
「そうなんでしょうか?」
「そうアル!」
「ですが、私は断りましたよ?」
「それでも嫌だったアル」
中国は足を止めた。
日本も立ち止まる。
「……日本」
「はい」
「我は、お前に変な奴が近づくのが嫌アル」
「心配してくださっているんですね」
「……そうアル」
「ありがとうございます」
日本は微笑む。
「中国さんは、本当に優しいお兄さんですね」
まただ。
また、その言葉。
「兄」。
その一言を聞くたびに、胸の奥が少し痛む。
「……日本」
「はい?」
「もし我が――」
「おーい!」
突然、韓国の声が聞こえた。
「二人とも、先に行かないでよ!」
韓国が駆け寄ってくる。
「韓国さん?」
「僕も一緒に帰る」
「もちろんです」
日本が嬉しそうに笑う。
その笑顔を見て、中国の眉がぴくりと動いた。
「……韓国」
「何?」
「お前、今日は日本と何するアル?」
「特に決めてないけど?」
「なら我と日本が一緒に帰るアル」
「いや、僕も帰るけど」
「…………」
「…………」
また始まった。
日本は二人を交互に見る。
「お二人とも、仲が良いですね」
「「どこが?」」
声が重なった。
◆
帰り道。
日本を真ん中にして、中国と韓国が歩いている。
「日本、今日夕飯は何がいい?」
韓国が尋ねる。
「そうですね……和菓子が食べたいです」
「夕飯じゃないじゃん」
「でしたら韓国料理はどうですか?」
「いいね」
韓国が笑う。
「じゃあ僕が作ってあげようか?」
「本当ですか? 楽しみです」
「もちろん」
その瞬間。
「我も作れるアル」
中国が割り込んだ。
「え?」
「中華料理なら我のほうが得意ネ」
「でも今日は韓国料理が――」
「我も韓国料理を作れるアル」
「中国さん、本当ですか?」
「…………」
「中国さん?」
「……作ったことはないアル」
「ふふっ」
日本が笑う。
「中国さん、面白いですね」
「笑うなアル……」
中国は耳まで赤くした。
その横で、韓国がニヤニヤしている。
「中国さん」
「なんアル」
「もしかして嫉妬してる?」
「してないアル!」
「へえ?」
「してないネ!」
「顔真っ赤だけど」
「うるさいアル!!」
「ふふっ」
日本がまた笑う。
三人の間に、穏やかな空気が流れる。
――けれど。
中国は誰にも見えないところで、日本の袖をそっと掴んでいた。
離したくない。
誰にも渡したくない。
そんな気持ちが、少しずつ強くなっていた。
「……日本」
「はい?」
「明日も我と一緒に帰るアル」
「もちろんですよ」
「約束アル」
「はい。約束です」
日本は何の疑いもなく笑った。
その笑顔を見ながら、中国は小さく息を吐く。
「……よかったアル」
「何がですか?」
「なんでもないネ」
――まだ言えない。
「兄として」ではなく。
一人の男として。
日本を大切に思っていることを。
コメント
5件
ラストの🇨🇳が兄じゃなく、1人の男としてってところが🇯🇵を恋愛的に想っていて尊いです…、🇰🇷がんば
読ませていただきました……! 中国さんの「お前に変な奴が近づくのが嫌アル」に胸がきゅっとなりました。嫉妬してる自覚があって、でも「兄」って言われるたびに痛む気持ち、すごく伝わってきます。ラストの『まだ言えない』も切なくて。三人の穏やかな空気の裏で、誰にも見えないところで袖を掴む描写が本当に好きです…! 連載中とのこと、続きが気になります🌷