TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する



「………私の用事も済んだし、別室で休ませてもらうわね。ブリギッテ、この子達のこと、よろしくね」

「はい」

「二人もゆっくりしていってね。行きましょうか、シズカ」

「はい」


シズカさんが人に従ってついて行くって、すごく新鮮に見える。

絶対の上下関係があるって感じ。

総長さん……ラフィーネさんだっけ。強そうに見えなかったけど、シズカさんより強いのかな? シズカさんより強かったら完全に人外だと思う。想像がつかない。


「さてと、待たせて悪かったな。まさか総長が来るとは思わなくてな」

「私達を指名したら総長が動くに決まってるじゃないですか。フューズに確認しなかったんですか?」

「ああ、独断だな。フューズに言うと細々と言われると思ったからな。案の定、シズカさんに連絡した後にばれて細々と言われて業務に支障が出た。あいつは上司を何だと思ってるんだか……」


シズカさん達を呼んだのって、ブリギッテさんの独断だったんだ。

暴走ブリギッテさんに世話焼きのフューズさん……。お似合いだけど、少しだけフューズさんが可哀そうに思う。


「フューズが可哀そうですねー。業務の後始末に追われて、今日の調整をつけて……。もう少し、フューズを労わって上げた方がいいですよ。遠目に見ても疲れ切った顔してましたから」


あ、やっぱり他の人から見ても、フューズさんが可哀そうに見えるんだ。


「もう勘弁してくれ、ユリカさん。フューズのことは総長にもシズカさんにも散々言われた。悪いとは思ってるんだが、俺が最善を選択するとどうしてもこうなっちまうんだ」

「ま、それでこそブリギッテさんですからねー。結果が出てるんで、もう何も言いませんよ」


結果って、なんの結果が出てるんだろう?

……怒られたんなら、ブリギッテさんにとってはマイナスだと思う。


「あの……わたし達の為に怒られたみたいで、ごめんなさい」

「気にしなくていいぞ、こんなのは日常茶飯事だ。俺が好き勝手にやって怒られる。ある意味、パターン化してるな」

「いいんですか、それって……」


……そのうち首になりそうなんだけど、ホントに大丈夫なのかな?

立ち上げメンバーで総長から信頼されてるらしいけど、度が過ぎるとまずいと思う……。


「アリアちゃん、本当に気にしなくて大丈夫だよ。ブリギッテさんはこんな性格も含めて総長から信頼されてるんだから。今回も叱責じゃなくて、ブリギッテさんを心配して様子を見に来ただけだし。フューズに関しても、半分は冗談だよ。みんな諦めてるから」


……諦めていいの? フューズさん、爆発しない?


「フューズもね、表情や態度では不満たらたらだけど、ブリギッテさんに絶対の信頼を置いてるから大丈夫だよ」

「ホントですか……」

「疑い深いねー、ちょっとからかいすぎたかな? サっちゃん、捻くれたアリアちゃんを戻してあげて」

「はい」


……ん? どうしてここでさっちゃんが出てくるの?


「アリアちゃん、本当に心配はいらないよ。例えばだけど、私がアリアちゃんの為に何かやったとするよ」

「うん」

「それに私が失敗して、アリアちゃんに迷惑がかかったら……私と絶交する?」

「するわけないよ! さっちゃんが私の為にやってくれることなら何でも嬉しいよ! 失敗してもずっと友達だよ!」

「そういうことだよ、アリアちゃん。私達みたいな関係が、ブリギッテさん達の間にはあるの」

「なるほど!」


……わたしとさっちゃんは絶対に離れない。信じてるから。

ブリギッテさんの周りの人達もブリギッテさんのことを信じてるんだ。

どんな失敗をしても、自分たちの為にやってくれてると信じてるから。

だから、文句を言いながらでも支え続ける。前に進めると信じてるから……。

わたしとさっちゃんと同じ……。


「ほえー……」

「アリアちゃーん、戻っておいでー。………駄目だね。サっちゃん、例えが強烈過ぎだよ」

「すいません、今戻します。……アリアちゃん、ずっと一緒だからね」

「もちろんだよ!」


さっちゃんは何を言ってるんだろう。当たり前なことだし今更だよ。


「お前たちは本当に仲がいいな」

「はい、一番の友達ですから!」


……でも、そっかー。わたしとさっちゃん、ブリギッテさんとレクルシアの人達、一緒だなんてすごいね。そんなに沢山の人に慕われてるなんて、見た目や言動からは想像もつかなかったよ。


「ブリギッテさんって、実は凄い人だったんですね」

「俺はそうは思わんが……。まあ、人材には恵まれてるな。だが、本当に凄いのは、これだけの環境を整え、維持してる総長だな。俺はただ手伝っているにすぎん」

「ブリギッテさんがそこまで言うってことは、やっぱり総長って凄いんですね……」


わたしの中ではブリギッテさんの株は急上昇中だ。

わたしとさっちゃんと同じだけ、みんなと固い絆で結ばれてるってすごいことだと思うから。総長さんは不思議な魅力はあったけど、シズカさんみたいな恐怖もなかったしそこまで凄いと感じなかった。


「総長は凄いぞ。俺なんか比べ物にならんな。夫婦二人でこの組織の基礎を作ったんだからな」

「え、組織の立ち上げって、ブリギッテさんも一緒だったんじゃないんですか?」


……たしかユリ姉さんが、ブリギッテさんは立ち上げメンバーの一人ですごい人だ、て言ってた気がするけど?


「ん? ああ、ユリカさんに聞いたのか。確かに最古参ではあるが、基礎を作ったのは総長と、旦那さんである副総長だ。俺はただ言われた通りに動いていただけだな。胸を張って、俺が立ち上げた、とは言えないな」


へー、そうなんだ……。

上げに上がったブリギッテさんの評価が少し下がった気がするよ。


「アリアちゃん、騙されたら駄目だよ。ブリギッテさんの得意技って、自分の手柄を人に譲ることだから。それを真に受けて評価を下げちゃ可哀そうだよ。正当に評価してあげなきゃ」


……また心を読まれたけど、もういいや。


「手柄を譲るって、どういう事ですか?」

「確かにね、レクルシアと言う箱を作ったのは総長と旦那様である副総長だけど、中身を入れたのはブリギッテさん達なんだよ」

「中身、ですか?」

「そう。アリアちゃんの大好きなカレーに例えるとね、具無しのルーとご飯が総長と旦那様。ブリギッテさん達、立ち上げメンバーは具の生産者と料理人。私達はみんな、ブリギッテさん達によって生産されて調理された具材なんだよ。ブリギッテさん達に調理されなかったら、腐って捨てられるだけ。そう考えたら凄いと思わない?」


具なしのルーとご飯……寂しすぎる。多分一食で飽きると思う。

具材の生産と調理って、結構すごいことなんじゃない? わたしが自分で野菜と肉を育てて自分で調理するってことだよね。……無理だね、ありえないよ。


「分かってくれた? そんなことをしておいて、俺は何もしてない、とか言うんだよ。全部、総長達がやってくれたことだって」

「……ブリギッテさん、なんでそんなに謙遜するんですか?」


生産と調理ってすごいことだと思う。もっと誇ってもいいんじゃないの?


「ユリカさん、もう勘弁してくれ。お偉いさん達がそう言い続けてるお陰で否定するのが大変なんだ。俺は本当に大したことはしていない。ただ従順なだけだ」

「従順な人は暴走しませんよ。ま、ここの支部長をしてる時点で説得力ないですけどね」

「はぁ、まあ、そうなんだよなー……」


ここの支部って、そんなに凄いんだ……。確かに、小都市らしくない大きさだけど……。

そもそも、ほかの都市の支部ってどのくらいの大きさなのかな? 小都市より、中都市や首都の方が大きい気がするけど。


「アリアちゃん、実はこのファルメリア支部はね、本部と同じ大きさなんだよ」

「ほえ?」

「ビックリした?」


……どういうこと? 支部と本部が同じ? なんで?

ここと首都じゃ、広さや人口が全然違うよね? 小都市の建物にしてはありえないくらい大きいと思ってたけど、首都にある建物って言われたらギリギリ納得できる気がする。だけど、どうして小都市に首都と同じ大きさの物を作ってるの?


「詳しくは、うちに入団したらね」

「あ、はい」


……そうだよね、普通はありえないよね。首都の規模の施設を小都市に無理やり作るのって。その理由って、きっと監禁事項だと思うから考えないでおこう……。


「ユリカさん、その話をするってことは、もうある程度は説明した感じか?」

「そうだねー。訓練のこと、入門のこと、支援金のことは言ったかな。入門と支援金は返事待ち」

「説明してくれて感謝する。本当は俺が全部説明したかったが、まさか総長が来るとは思はなくてな……苦労をかけた、ありがとう」

「ははは、いいよいいよ。ブリギッテさんの頼みだし、私も楽しめたから」

「そうか。改めて、ありがとうと言っておく」


……ブリギッテさんって、結構義理堅い性格をしてるんだね。

さっきの話を聞く前までは、すぐに暴走して周りに迷惑をかけてるようなイメージだったけど、この様子や、ユリ姉さんとさっちゃんの説明を合わせて考えると、義理堅くて人情味あふれる頼れる人、ていう嘘みたいな超人に見えてしまう。


「さて、アウレーリアにザナーシャ。全部のお礼をユリカさんに任せてしまっても良かったんだが、一つくらいは俺が渡してやりたいと思ってな」


ん? 何だろう? もしかして、たいき……


「これをやろう」


大金じゃなかった。

……なにこれ? 銀色のカード?


「それは、うちの身内に配るカードだ」

「身内に配るカードですか?」


渡されたのは2枚。わたしとさっちゃんの分だよね。

一枚のカードにわたしとさっちゃんの名前が並んで入ってる。それが2枚。

……名刺とは違うよね? なにかに使えるのかな?


「何に使えるのか、て顔をしてるな。まあ、知らなくて当然だな」


……ブリギッテさんにも心を読まれるんだ。さっちゃんもユリ姉さんも笑わないで!


「まず、カードには二人分の名前が入ってる。所持者とそのパートナーの名前だな」


さっちゃんとパートナー……嬉しいね。

わたし達は当然そう思ってるけど、ほかの人からもそう思ってもらえるのはすごく嬉しい。


「そのカードがあると、ここの施設で割引などの優遇を受けられる」

「割引、ですか?」

「ああ。今日はあの日のお礼とお詫びと言うことで、全て無料で案内したが、本来は全てに利用料がかかる」


……言われてみればそうだよね。こんな立派な施設を無料で使い放題なんてありえないもん。

近所の銭湯だって入浴料が掛かるのに、あんな立派な温泉が無料なんてありえないよね。


「基本的には一般開放しているし、誰でも使えるが、それがあれば割引が受けられる」

「嬉しいです。温泉にはもう一度入りたかったので」

「そう言ってもらえると嬉しいな。ちなみに、温泉だけじゃなく、食堂でも割引が受けられるからな」


それも嬉しい。もう一度、高級お子様ランチを食べられるかもしれないし。


「他には、ここでのちょっとした金銭のやり取りをする機能がついてる」

「金銭!?」

「実際の現金ではないな。ここファルメリア支部限定のお金だ」

「あ、そうですか……」


天国に上がった瞬間に落とされた気分だよ。


「そう落ち込むな。そのカードには温泉10回分程の金額が入っている」

「10回!!」


落ち込んだ気分が一気に上昇したよ! あの立派な温泉が10回も無料で入れるなんて凄い!


「その金額は毎月リセットされて、次の月には持ち越せないから注意しろよ」

「それって、毎月10回までは温泉を無料で使えるってことですか?」

「ああ、そうだ」

「凄いです! ありがとうございます!」


ホントに凄い! 毎月10回、必ずさっちゃんと入りに来るよ!


「温泉10回分と言ったが、温泉だけじゃなく、食堂でも使えるからな。食事の内容にもよるが、普通の食事なら1食は温泉1回分だな。だから、温泉5回、食事5回と言った使い方もできる」

「おおー、凄い便利ですね!」

「ああ、便利だ。ただし、使えるのは本人とそのパートナーだけだ。あと、更新は支部の専用受付で行うことになってるので、毎月ここに来てもらうことになるな」


その程度なんでもないよ! ここにくるだけで、温泉と食事が無料になるんだったら喜んで来るよ!


「さっちゃん、毎月一緒に温泉入ろうね!」

「うん、そうだね……」


こんなにすごいことなのに、さっちゃんのテンションが低いよ? 何で?


「注意があるとすれば一つだな。そのカードはうちの身内が持つものだから、他の組織に移った場合は当然ながら返してもらうぞ」

「ほえ?」


……これって、お礼でくれんじゃないの?

永遠のフィリアンシェヌ ~わたしと私の物語~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

0

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚