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初兎side
「朝から銃声って…迷惑極まりない…」
弾けるような音と共に僕の意識も
勢い良く目覚める
今の時刻はまだ早い平坦
未明と呼ばれる夜も明けきらない時分から
よくもこんなに活動できたものだ
このような物騒な騒ぎが早朝から起きるのは
この街「零番街」では珍しくない
幸甚なことに皆は起きていないよう
だとしてもこれ以上
騒音が大きくなるのは御免だ
ならばこれ以上騒音が大きくなる前に僕が
根本的に解決してあげればいい
「さて…朝の運動とでも行きますか…」
ボスに貰った愛用品の短刀を懐に仕舞い
騒音のする方向へと足を向かわせた
「ぅわ…交戦下手すぎやろ…」
騒音が響いていた場所は
人が殆ど入らない底辺の木楼
いわば風俗店からだった
妓楼がマフィア組織のお偉いさんをしている
客の怒りでも買ったのだろうか
そこら中に散らばった女の肉片や血痕から
なんとなくの事の経緯を悟る
足を前に進める度に「ぐちゅ」と
不快な音がする廊下を 暫く歩いたところで
不自然に扉が開けっ放しになった部屋の中で
1人逃げてきたであろう妓女が
蹲って震えている姿を認めた
血痕もこの部屋から出たか
この部屋に持ち込まれたようだった
「なぁ…部屋…誰か居るやろ」
今まで気が付かなかったが気配の数からして
ここにいるのはこの妓女だけでは無い
つまり…この妓女は逃げたのでは無く
「連れてこられた」のだろう
この店の妓女を殺した奴がここに居るはずだ
いや…殺した「奴等」か…
「気配からするに…5人か…?」
どれだけ女癖が悪かったのだろう
気配が禍々しく背筋がぞくっと震える
気持ちが悪い…吐き気を催す改装だ
そんな事を考えている内に
部屋の奥からこつんと踵を鳴らす音が響いた
僕よりも8寸程大柄な影が此方に出向く
そして遂に顔を認めた
「あんたか?ここの妓女に手出したの」
「だったら…なんだと言う?」
嗚呼…此奴完全に僕の事舐めてるな…
まあ当たり前か
これだけ体格差のある相手だもんな
まぁ…僕たちの平穏を護る為だし
「この事件の事を黙っててもらう…かな」
「黙っててもらう?」
「口封じなど貴様にできるのか?」
半笑いで問い掛けてくる
胸糞悪いな…
「おん…ごめんやけど…朝早くて眠いねん」
「だから何だ」
「無許可で交戦したのバレたら面倒やろ?」
「ボスという立場にはわからん感情だな」
「あんたボスやったんや…どうでもええけど」
「そんで…僕面倒事は大っ嫌いやからさ…」
「今からの交戦は…無かったことにしてな?」
「交戦…?我と殺り合うつもりか? 」
「だとしても図々しい要求だな。断る。」
まあ…そうなるよな…
なら…息の根を止めてしまえば良い
「そ…最後に残す事でも聞いといたるよ」
「無いな…この交戦は我が勝つのだから」
勝利を確信…か…
此奴は自分の弱さを知らないんだな
今まで自分より強い相手と交戦したことが
無いのだろう
だからあそこまで肉片と血痕が散るのか…
哀れだ
「じゃあ僕からも一言」
「来世ではいい師匠を見つけれるとええな」
そう言って下衆の様な笑い声を上げる喉を
静かに掻き切った
さて…他の奴等も片ずけるか…
くるりと踵を返して相手の方を向く
生まれたばかりの仔犬のように
命乞いをしている相手を無視し
代わりに 肉を切り裂く音を贈呈してやった
後は妓女の心配か…
「ねぇ…そこの君…」
「っ…は、ぃ…」
酷く脅えてるな…まあ一般の人からしたら
恐ろしい存在だから仕方ない
「店ん中汚してもうて御免な」
「後…交戦は見なかった事にしてくれん?」
首を縦に振る妓女
これで一旦一安心ってとこかな…
今の時刻は日出といったところだろうか
早朝と呼ばれるこの時分
皆が起きるのは大体食時の初刻頃
まだ一時の時間はある
今帰ればバレない
急ぎ足で拠点に帰り
気を失うように布団に包まれ、眠りについた
この時に見た夢は
過去に僕を救ってくれた彼と
出会った時の夢だった