逃げ場はなかった。
滉斗と涼ちゃんは、
机に追い詰められ、
身を寄せ合うしかできなかった。
元貴は、にこにこと微笑みながら、
小瓶を指先でコツコツと弾く。
「ねぇ、飲もうよ」
甘ったるい声。
けれど、
その瞳には、狂気が渦巻いていた。
「……ふたりとも、これ飲んだらさ」
元貴は、瓶を傾ける。
中に入った透明な液体が、
とろりと、いやらしく光った。
「——俺のこと、もっと好きになれるよ」
滉斗も、涼ちゃんも、
言葉を失ったままだった。
「……やめろよ……っ!」
滉斗が、歯を食いしばって叫んだ。
「俺たち、そんな、こと……!」
「そんなこと?」
元貴は、くすりと笑った。
「そんなこと、もう十分やってたよね?」
皮肉たっぷりに。
涼ちゃんは、唇を噛み締めてうつむいた。
「じゃあさ、せめて——」
元貴は、小さな瓶を取り出し、
それを自分の指にたっぷり垂らした。
とろりと、いやらしい光沢を放つ透明な液体が、
指を伝って滴り落ちそうになる。
「ほら、 涼ちゃんだけ、先に舐めてよ。」
甘ったるい声で、
そう命じた。
涼ちゃんは、顔を真っ赤にして首を振る。
「……や、だ……っ」
か細い声で拒絶する。
けれど——
元貴は、容赦しなかった。
「……ダメだよ、涼ちゃん。舐めなきゃ」
「——ほら、舌、出して」
囁くように。
その声に、
涼ちゃんの肩がビクリと震えた。
元貴の指先から滲み出る媚薬の甘い匂いが、
もう、涼ちゃんの脳をジワジワと侵し始めていた。
「ほら、涼ちゃん、味わって」
まるで子供にお菓子を食べさせるような口調で、
けれどその目は、
完全に支配欲に支配されていた。
涼ちゃんは、震える唇を噛み、
それでも、抗いきれず、
小さく舌を出した。
「……ん、っ……」
元貴はにやりと笑い、
媚薬まみれの指を、
涼ちゃんの舌先に押し付けた。
瞬間、
涼ちゃんの身体がビクンと震えた。
「っ、あ、ぁ……っ」
肌が、じわじわと熱を帯びる。
そして——
無意識に、
涼ちゃんの舌が元貴の指をいやらしく這い回り始めた。
「ん……っ、ちゅ、く……っ」
ぴちゃ、ぴちゃ、と
いやらしい水音を立てながら、
涼ちゃんは元貴の指を舐め続ける。
元貴は、その様子に目を細め、
とろけるような笑みを浮かべた。
「……涼ちゃん、そんなに欲しくなったの?」
ゾクゾクとするような声で、
たっぷりと甘く囁いた。
舌を這わせる涼ちゃんを、
愛おしそうに、
そして獲物を見るように見つめながら。
「可愛いよ、ほんと……」
低く、狂った声で吐き捨てる。
たまらなくなった元貴は、
名残惜しそうに涼ちゃんの口から指を引き抜いた。
途端、涼ちゃんの足元がふらつき、
滉斗の胸にしがみついた。
「涼ちゃんっ……!」
滉斗が必死に抱き留める。
元貴は、涼やかに微笑んだまま、
今度は滉斗に瓶を向けた。
「さぁ、次は……滉斗」
滉斗は、涼ちゃんを抱き寄せたまま、
汗ばんだ額をしかめていた。
「……ふざけんな……っ」
震える声で睨みつける。
「ね? 滉斗も、さ」
「涼ちゃんだけに、こんな思いさせるわけにいかないよね?」
そう言って、
指にまた媚薬をたっぷりと垂らし、
滉斗の前に突き出した。
「舌、出して」
滉斗は、
滲む汗に濡れた額を歪めた。
でも、
涼ちゃんが、苦しそうに自分に縋り付いてくる姿を見た瞬間——
「……っくそ、ふざけんな……!」
そう叫びながら、
元貴の指から滴った媚薬を、
自ら舌ですくい取った。
「……はぁ、っ……」
すぐに、
滉斗の身体にも異変が現れた。
眩暈がするほどの熱。
脈打つ身体。
滾る欲望。
「っ、はぁっ、熱、い……」
ぴちゃ、ぬる、といやらしい音。
舌を這わせながら、
滉斗も無意識に、
元貴の指をねっとりと舐め回していた。
「んっ……く、ぁ……っ」
苦しそうな声を漏らしながらも、
媚薬の味を舌で確かめるように、何度も何度も舐める。
その姿に、
元貴はゾクリと身震いした。
「……滉斗も、欲しくなっちゃった?」
狂った甘さを含ませた声で、
たまらなそうに笑う。
涼ちゃんも、滉斗も、
汗だくでしがみつき合い、
体温を確かめるように抱き合った。
「っ、涼ちゃん……っ」
「……滉斗……っ」
互いに名前を呼びながら、
震える手で、
必死に相手を求めた。
元貴は、
その光景を、
うっとりとした目で見つめながら——
「……まだまだ、これからだよ」
そう、甘く囁いた。
——甘い毒が、
理性を焼き尽くす。
禁断の共鳴は、
もう誰にも止められない。
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