テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

やっとのことで我に返って、俺は反射的に玲於の胸を突き飛ばしてた。
「な、なにすんだよっ!」


声が震えた。自分の中の何かが揺さぶられたのが怖かった。


玲於は、一歩よろけただけで、何も言わずに俺を見てた。


落ち着いた目で。


俺がどれだけ動揺してても、全部見透かしてるみたいな目で。


触れられた唇が、まだ熱い。


突き飛ばしたくせに、逃げ出したいくせに


俺の心臓は、ずっと玲於の手の中にあるみたいに、バクバクしてて。


「俺は、霄くんのこと好きだよ」


玲於は突然そんなことを言い出した。


「……は?またそんなこと…」


「ねえ、昨日も言ったけど…俺が愛してあげる代わりにパパ活やめるってどう?って話。あれ、本気だよ?」


玲於は、ちょっとだけ目を細めた。


今まで見たことがない顔だった。


「えっ…?」


玲於の顔がまた近づく。


「霄くんのことが好きだって言ってるんだけど?」


「いや、本気って…なに……言ってるのかさっぱり…」


玲於の言葉が、頭の中をぐるぐる巡る。


その意味を理解しようとすると


ますます心臓が暴れ出して、混乱してきた。


「とりあえず、ここじゃゆっくり話せないしホテル入ろ」


「は……ちょっ……!?」


「今ラブホ連れ込まれそうになってた俺にさっきの男と同じことしてんじゃん…!」


「俺はお友達だからセーフですー。なんもしないしね」


有無を言わさず、玲於は俺の腕を掴んで歩き出した。


俺は戸惑いながらも引っ張られるままについていくしかなかった。


周りの人たちの視線も気になったけど


今はそんなこと気にする余裕もなかった。


ホテルの一室に入ると、玲於は俺の肩を掴んで真剣な表情で俺の目を見つめた。


「…霄くん、俺に愛されるのと、キモイおっさんに無理して媚び売り続けるのどっちがいい?」


「は、はあ?…さっきから意味がわかんないんだけど、愛すとか適当なこと言うなって言ったじゃん…!」


「だから俺、霄くんのこと本気で好きなんだって。」


玲於の言葉はやけに重みがあったが、俺のことが好きなんて信じられない。


「ふ、普段の地味で目立たない俺じゃなくて…こうやって可愛い制服きてフルメイクしてて明るい「ソラ」が好きなんでしょ…」


不貞腐れてそう返すと玲於はふふっと笑ってから口を開いた。


「なに言うかと思えば……そんなの、いつも影薄くて、そこらへんのモブか?ってくらい目立たない霄くんがネットの世界じゃ必死こいて”可愛い俺”作って、あまつさえパパ活までしちゃってさ?それでも誰かに愛してもらおうと頑張ってる、その健気な姿が、俺にはもう、たまらなく愛おしいからだよ」


玲於はきっぱりとそう言って、俺の頬を手のひらで撫でた。


その目はどこか狂気を孕んでいるようにも見えた


「そんなに貶されると、心折れるんだけど」


「え~貶してないって。褒めてるのに」


さっきから感情がジェットコースターみたいに揺さぶられて脳みそがグチャグチャになる。


そんな俺を玲於はそっと抱き寄せた。


その体温と匂いに、俺はまた頭が真っ白になって、抵抗もできずにいた。


玲於の細い腕に抱きしめられると心臓がバクバクして、でもそれが心地いいなんて思ったりもして。


人に抱きしめられたのなんていつぶりか、何年ぶりか分からない。


玲於はそんな俺を見透かすかのように耳元で囁いた。


「…俺なら、霄くんの乾ききった空っぽの心、無償で満たしてあげれるよ。」


その色気交じりの声は魔法みたいに俺を捉えて離さない。


じわ、と熱いものが胸に広がる。


その目は優しいが、有無を言わせない色も孕んでいる。


相手は男


しかもよく行く美容室の女誑し


なのに、そんな玲於からの|ほどこし《愛》を喉から手が出そうなほど欲してしまっている自分がいた。


「…ぁ、愛してくれるなら…なんでもいい」


俺はどうしていいか分からず小さくそう言った。


「ん……いい子」


そしてそのままゆっくりと近づいてきた唇を受け入れていた。


何度か唇が啄ばまれ、舌先で優しく撫でられる感覚に頭がぼうっとしてくる。


次第に深いものになっていき、息も絶え絶えになるころにやっと解放された。


頭がクラクラして立ってられなくて玲於の胸にもたれかかると、そっと抱き寄せられる。


すると、寸秒のうちにひょいっと体を持ち上げられて、お姫様抱っこの体勢でベッドの上へ寝かされた。


玲於は覆いかぶさるようにして見おろしながら、俺のシャツの第一ボタンに手を伸ばす。


体は抵抗せずにされるがままになっているくせに


心臓だけが早鐘を打つように激しく動いていて頭が追い付かない。


そんな俺を見た玲於はふっと口角を上げると


また唇を重ねてきて


今度は強引に舌を捩じ込んでくるものだから息ができなくて苦しい。


でも嫌じゃなくて……もっとしてほしいような気さえした。


やっと解放されたときにはもう抵抗する気力もなくて、ただ肩で息をしながら玲於を見上げることしかできなかった。


「じゃ、はじめよっか」


玲於は俺のネクタイに手を伸ばしつつそう言った。


でも別にそこまで嫌じゃなくて……むしろ心地よかった


なんて絶対に口にはできないけど。

キミだけのラブドールなんてウソ

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

130

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚