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 一方その頃、ファナリアにあるエルトフェリアでは……


「いらっしゃいませー」

「は、はい……」(え、誰この美少女……)


 大きくなったニオがヴィーアンドクリームで接客をしていた。

 客として訪れた者達は、今まで見た事がない超美少女が増えた事により目を白黒しながら、どこかで見たような……と感じながら食事をしていく。笑顔を向けられた者は、老若男女問わずに顔を赤らめ挙動不審になってしまう。

 ヴェレスアンツから帰ってから数日、ネフテリアによる「なんか面白くなりそうだから」の一声によって始まってしまったニオ(大)の接客である。トラブル対応の為にフラウリージェ店員がニオのサポートを交代で行った事で、ほんの数日のうちに名乗らないままフラウリージェの大型新人の地位を確立してしまっていた。

 客の中には「ニオっぽい」「ニオのお姉さんかな?」と噂する者もいたが、ニオにしては身長が違いすぎる事で、誰も本人だとは思わなかったようだ。


「それじゃあ次は、新作のお披露目いきましょうか」

「はい」

 ざわっ


 これからフラウリージェ新作のショーをするという情報が一気に広まり、ヴィーアンドクリーム内がざわついた。メシ食ってる場合じゃねぇとばかりに急いで目の前の食べ物を急いで食べたり、まだ来ていない料理を放棄するわけにはいかずにソワソワし始める者達が続出。この時ばかりは店から客がほぼいなくなるが、これはクリムにとっても予定通りで、休憩タイムになるだけだった。

 フラウリージェでは、外のステージでファッションショーをやる事がある。アリエッタの提案が上手く伝わって実現したイベントである。今回ニオは大きな姿で新作を着る事になっていた。


「転ばないように気を付けてね」

「は、はい」


 ステージ裏で準備を終わらせたニオは、シャンテとペアで立つ事になった。ソロの場合もあるが、どうするかは服のコンセプト次第である。今回はペアやトリオ等で映えるようになる服を意識して作り、成長した姿のニオを使ってみる事にしたのだ。ステージ上であれば目立っても人に触れる事はないし、いざとなれば密偵達が守ってくれるので安心なのだ。

 ネフテリアが「絶対に正体バレないようにね! わたくしもその瞬間見てたいんだからね!」と必死に念を押していたので、今回はこの美少女がニオだという事は明かさない。流石に王女の怒りは買いたくないので、ノエラ達の準備と警戒も最高潮だった。

 そしてファッションショーが始まり、ニオの出番になると、


「かわいい……」

「誰だよ」

「絶対ニオたんのお姉ちゃんだって」

「うっ、ドキドキしすぎて苦しい……」


 まるで天使か神かと思えるような美少女に、ざわつきが収まらない。

 そんな状態でニオが服を見せるようにポーズをとれば、


「おぉぉぉぉ」

「ダメだもう無理っ」

 バタッ

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

「みんな気をしっかり持て! う、ぐふっ」


 何故か倒れる者が続出した。


「あわわ……」

(アリエッタちゃんとニオって、本当に最強ねー)


 これ以上はニオが怯えると判断し、シャンテが手を引いて裏に引っ込んだ。

 何事もなく『謎の美少女』のお披露目は終わり、ステージの前には瀕死になった人々が残されたのだった。


「なんか密偵さん達も全員倒れてるってナーサさんが!」

「えぇぇ……」

「ネフテリア様に報告して、祖国に担当交代してもらったほうがいいかしら?」


 後日パフィが、エルトフェリア裏で密偵達が全員揃って泣きながらひれ伏して許しを請う姿を目撃したが、特に気に留める事は無かった。




 ネフテリア主導の下、グレッデュセントが泣き叫ぶ会議は、なおも続いている。


 議題その3:ジルファートレスでの生活


「なんで地下だけでしか食料が採れないんですか?」

「訓練できるし、食料は邪魔になるかなと思って」

 ”普通は食料確保自体が訓練になると思うんだよなぁ”

「ふぅ、食べなくても平気な神様ってこれだから」

「そんな事言われてもぉ……」


 心の底から呆れた視線を浴びて、段々声が小さくなるグレッデュセント。リージョンを作った時は『狩りをして食料確保』という考えに至っていなかったが、実際の食事の頻度を知った今となっては反論のしようも無い。


「戦って食料確保するという流れに出来ないんですか?」

「う~ん、ヴェレストは死んで再生するようにしたから循環してるけど、食べられて消えると段々減るのよね……」

「効率が良いようで、人が成長しにくい仕組みでしたね」

「うわーん!」


 完全なる失策である。アイディアは悪くは無いかもしれないが、長い道のりとは相性が悪かったようだ。

 この辺りの仕組みは、生体の繁殖という少々難しい問題を抱える事になり、今のグレッデュセントには難しいというイディアゼッターの助言があった。一応今もなんとかなっているので直ちに変える程ではない……という多数の声から、100層作ってからじっくり創ってもらう事になった。




 議題その4:神様交代しなくて大丈夫?


『出来ればチェンジで』

「声揃えて言うなあああああ!!」

「すみません、交代は出来ないので現状維持で」

『えー……』

「………………」


 グレッデュセントは黙ってイディアゼッターに顔を埋めるしかなかった。




 議題その5:どのリージョンを模倣する?


「まだ発見していないリージョンばかりがいい!」

「ピアーニャ落ち着いて」


 この議題にはピアーニャが興奮しながら積極的に参加。嬉しそうな美少女の姿に、”かわいい”というコメントが殺到した。


「それ、知らないリージョンを見てみたいだけですよね?」

「トーゼンだが?」

「うわ正直……」


 完全なる私利私欲である。問題は、完全に拒否する理由が無い事。

 それでも、その条件ですぐに100層も揃えるのは難しいと考えたのか、イディアゼッターが擁護する。


「今ある層はそのまま使い、それ以降は被らないようにするだけで、かなりの種類が増えます。それで問題無いのではないでしょうか」

「え~……」

「え~って、そもそも発見済みのリージョンは20もありませんよ」

「じゃあすぐに発見するから、なんかくれ!」

「がめついですね!? 駄目ですよ!」

 ”直接的にも程がある”

 ”総長……”


 ピアーニャはまだ見ぬリージョンに目が無い。なんなら手段も選ばない。さらに、無条件で同意する者も発生。


 ”うん、総長の言う通りだ”

 ”ゼッちゃん様、ぜひともご協力を!”

 ”総長、後で食事でも”

「こらこら」


 これまで幼い姿だった影響もあるが、まだ若い視聴者達の恋愛対象へと見た目が近づいた事で、既にピアーニャに堕ちている者達もそれなりにいるようだ。


「……よくわからんが、ゼッちゃんをセットクしてくれたら、食事くらいつきあうぞ?」

「ぃよっしゃあ! さぁゼッちゃん様、出すモン出してもらおうか」

「突然の脅し!?」


 会議の参加者の中にもいたようだ。ピアーニャと食事出来ると知って、不敵な笑みを浮かべている。それは総長との交流の為か、それとも美少女と一緒にいたいのか。


「それはそうと、100個もリージョンあるんですか?」

「ありますよ」

「リージョンって何個あるんだ?」

「それは……言わない方が良いでしょう」


 リージョンの数は神の数。150を優に超えているのだが、言ってしまうとまたピアーニャが暴走しかねないので、言わない事にした様子。


「仕方ない。アリエッタに色仕掛けをたのむか」

「何故そのような恐ろしい事を思いつくんですか!」

 ”恐ろしいのか?”

 ”滅茶苦茶羨ましいんだが”


 イディアゼッターにとって、アリエッタは可愛い孫のような存在だが、同時に警戒と恐怖の対象でもある。原因はだいたいエルツァーレマイア。


「絶対言いませんからね?」

「絶対クチを割らせてやるからな? に泣きついて」

「本当に手段選ばなくなったわね。一時的でも成長させてくれる存在だから認めちゃったの?」

「ふっ」


 アリエッタを『おねえちゃん』と認めたピアーニャの瞳は遠くを見つめていた。その奥にうっすら見えていたのは感謝なのか諦めなのか、それとも……。


「それで、結局どんなリージョンをここに組み込むんだ?」


 挑戦者グループの代表の1人が、逸れていた話の軌道を修正。


「……元々考えてあった比率ですが、現在発見済みのリージョンから10、未発見のリージョンから89、それと最深層のグレッデュセントの部屋を予定しております」


 現時点で未発見リージョンの数をこれ以上増やす気が無いのか、しっかりと数を指定してきた。


「え、最後は?」

「貴女が自分で考えてください」

「無理っむりむり!」

「すぐには到達者は現れないでしょうし、少しずつ道具など増やすといいのですよ」

「うぅ……」

 ”なんでそんなに自分で創ろうとしないんだよ……”


 グレッデュセントにゼロから世界を創るセンスは無い。やる気も無いようだが。だからこそ色々なリージョンを模倣していたのだ。


「で、どのリージョンをモホウするのか、教え──」

「駄目ですよ」

「ちっ、アリエッタおねえちゃんに言いつけてやる……」

「勘弁してください、本っ当に勘弁してください!」


 まだ見ぬリージョンの為ならばこれまでのプライドだって打ち砕く……成長した事でそんな覚悟が完全に決まったピアーニャであった。

からふるシーカーズ

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