TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「ふぅ」

「これでヴェレスアンツの未来は安泰かもね」

「だといいな」


 ピアーニャ(大)とネフテリアがファナリアに帰還。常駐の兵士達の「誰?」という視線を無視しながら、エルトフェリアへと向かった。

 ちなみにイディアゼッターはグレッデュセントを連れ、数多のリージョンの神々にリージョンの|創造《リフォーム》について相談しにいったのだった。


「ところで|そ《・》|れ《・》、いつまで続くの?」

「さぁなぁ」


 気になっているのは、どれだけの時間大きくなっていられるのかという事。衝撃で元に戻る事は判明しているが、自然解除されるかは現時点では不明なのだ。


「やりようによっては身を守るシュダンになるから、サイダイジカンは把握したいところだなぁ」

「攻撃を1回だけ無かった事にしちゃうもんね……」


 前にファナリアに帰ってきた時に、実は色々と試していた。その結果、大人には効果が無い事と、能力が大幅に向上する事、そして身体的なダメージとなる衝撃があると元に戻る事が判明している。

 その衝撃は大小関係なく、指で弾かれる程度のものから、気絶する程の大きな衝撃までを確認済みである。それ以上は致命傷になりかねないので試していないが、ピアーニャが自分で骨が折れる程の自傷行為を試したところ、一瞬痛みを感じてから小さくなったのだが、肉体的なダメージは皆無だった。その後は、心配したネフテリアによってアリエッタ達にチクられ、長時間全力で世話されたのは言うまでもない。

 アリエッタのキノコのカードは、人気ゲームの大きくなる効果を中途半端に再現していて、服のサイズはそのままで肉体だけが13~14歳に成長する。それ以上の肉体年齢の者には効果が無い。力が強くなる。そして、どんなダメージでも1回受けると元に戻るというものだった。

 さらに、実は一撃で真っ二つにされても一瞬後には元の小さい姿に戻って生存するという、ある意味1回だけ不死になる恐るべき性能なのだが、『即死級の身体的ダメージを与える攻撃』を|子供達《アリエッタたち》に向ける事が出来ないのはもちろんの事、唯一大人でも大きくなれるピアーニャが緊張感が高まっている戦闘行為中にいきなり即死するという事はほぼあり得ないので、その事に気づく時が来るかどうかは不明である。


「効果時間はメレイズのシュギョウで試してみるか」

「相変わらず弟子の扱いが酷い。まぁあの子なら喜ぶし、戻らないように努力するかも」

「もちろん自分でもやるがな」

「でしょうねー」


 どれだけ効果が続くかの被験者は、ピアーニャとメレイズになった。「アリエッタの事を知っている子供」という限られた対象なので、必然的な人選かもしれない。


「いや、わちが子供というワケじゃないからな?」

「誰に言ってるの?」


 ともあれ、2人はエルトフェリアに戻ってきた。


「さて、ア…メレイズの様子を見に行くか。ふん」

(うわぁ。前と全然態度違うわ)


 嫌そうにしようとしているが、足取りは妙に軽い。あれほど嫌がっていたミューゼの家への訪問を、自分から進んで行おうとしているのだ。


「ん? わちはメレイズの様子が気になってるダケだぞ?」

「何も言ってないよ……」


 白々しいピアーニャを見送り、ネフテリアはナーサのいる事務室へと向かうのだった。




「はいるぞー」

「!」


 裏口の方からピアーニャの声が聞こえた瞬間、メレイズの絵を描いていたアリエッタが顔を上げた。大事な大事な妹分がやってきたのだ。


「メレイズ、いく!」

「うん!」


 絵描いてる場合じゃねぇとばかりに、すっかり仲良しになったメレイズと一緒にピアーニャを迎えに行った。


「ピアーニャ!」

「おうアリエッタ!」


 アリエッタは自分より大きなピアーニャに飛び込んだ。その時軽い衝撃を感じたピアーニャだったが、体が小さくなる事は無かったので眉をひそめた。


(ん? 今のではモトに戻らないのか)


 これも検証が必要だなと考えつつも、アリエッタの頭を撫でて優越感に浸る。撫でられたアリエッタも幸せそうである。

 その横をメレイズがすり抜けていった。


「じゃあ連れてくるね!」

「ん?」


 誰を?と問う前に、裏口から出て行ってしまった。

 その時にハッとしたアリエッタが、ピアーニャの手を取ってリビングに連れて行く。そこにはパフィが寛いでいた。

 ミューゼは本日、シーカーのお仕事で外出中。


「ようこそなのよ。総長は大きいままなのよ?」

「トーゼンだ。これがわちのシンの姿だ」

「……叩いていいのよ?」

「やめろっ」


 ここ最近でお約束となったやり取りである。ピアーニャも自分の立ち位置を理解しているので、形だけでも嫌がるようにしている。既に元に戻されてはアリエッタに頼むという行為を、何度もしているのだ。

 これから何をするのか分かっているパフィがキッチンに向かい、|6《・》|人《・》分の飲み物を用意。ピアーニャが誰の分か聞こうとした矢先、裏口から悲鳴が聞こえてきた。


「いやあっ! たすっ、たすけてええええ!! うちは何もしてなああああああ!!」

(……エンザイでショケイされる直前か?)


 メレイズがニオを連れてきたようだ。ニオにとってミューゼの家は、本能的に恐怖の館となっている様子。入って暫くしたら落ち着くが、無理矢理連れ込まれる時は毎回泣き叫ぶのだ。


「ニオとルイルイさん連れてきたよー」

「ああ、これルイルイの分か」

「あ、ピアーニャ総長いらっしゃいませ」

(いやココ、オマエんちじゃないだろ)


 メレイズの横には、大きくなった『|雲塊《シルキークレイ》』が浮かんでいる。鉢のようになっていて、上から大量の服が溢れている。


「……ああ、なるほど」


 ピアーニャはこれからやらされる事を悟った。


「それじゃあみんな、脱ぎ脱ぎしましょうねー」

「はーい」

「はいぃ、うぅ」

「いやわちは……」


 ルイルイが言いながら、ピアーニャを脱がせにかかった。パフィはもちろん、アリエッタに手を伸ばした。




「うんうん。みんな綺麗ね」


 脱がされた後、全員キノコのカードで大きくなり、最初に渡された服を着ていった。

 これまでの明らかな子供という身長から、成熟しきっていない大人の手前という状態になった事で、服のサイズをその年齢に合わせて作る事が可能になったのである。これにはノエラが大喜びだった。

 働いているニオは当然、アリエッタとメレイズ、さらにピアーニャも一時的に大人に近い美しさを得た為、ノエラによる必死の懇願と接待が寝る時間まで続き、前みたいに家でならという事で了承したのである。アリエッタの心を守る為ではあったが、一番ホッとしたのはピアーニャだった。


「ふふ、どうだ。もう可愛いとは言わせんぞ」

「いや普通に可愛いですよ」

「なぜだっ!」


 100年以上ずっと小さかったピアーニャは気づいていなかった。幼い方面の可愛さから、女の子としての可愛さに移行しただけで、決して憧れていた『大人らしさ』を手に入れたわけではない事に。


(私も時々可愛いって言われるのよ。総長が可愛いって言われないわけないのよ)


 大人になっても、可愛いものは可愛いのである。そう言われる理由は、見た目だけでなく仕草、声、喋り方など多岐にわたるのだが、成長した姿を得たばかりのピアーニャがそれに気づくのは、難しいのかもしれない。

 パフィはあふれ出しそうな|欲情《よだれ》をなんとか抑え込みながら、ちょっと恥ずかしそうにするアリエッタの着替えを手伝っていた。


「なんという柔らかさなのよ。えへ、えへ、えへ」

「抑えきれてないぞ。クチ閉じろ」


 順調に4人の着替えが終わり、並んで立ってもらった。

 着ている服は、なぜか色とりどりのセーラー服である。前にアリエッタがうっかり前世で見た美少女戦士を思い出しながら数パターン描いてしまったもので、色以外にもノースリーブ、半袖、長袖、ミニスカート、ロングスカートといったバリエーションも揃っていた。


「これは……危険ですね。わたしも何かに目覚めそうな感覚が」

「可愛いのよ、可愛いのよぉ」


 パフィはもう限界のようだ。


「パフィ、どう?」

「ほぐっ」


 ノースリーブ青セーラーのアリエッタがチョンとスカートを摘まみながら首をコテンと傾げ、パフィに致命傷を与えてしまった。しかも呻き声をあげたパフィを心配して、駆け寄ってしまう。


「……あれはもう助かりませんね」

「うむ」

「あわわわ……」(パフィさんが、パフィさんがぁ……)


 ルイルイとピアーニャは、パフィを見捨てる事にした。


「ケッコウ動きやすいな。それを似たような感じでそろえたのか」

「はい。グループで揃えると分かりやすいし、お店の制服にもいいかも?」


 アリエッタが会話を全て理解していたら、怪しいお店にならないか心配しそうな事を話しながら、金髪ツインテールのピアーニャは自分が着ている長袖セーラー服についている黄色の襟とスカートをまじまじと見ている。

 隣では、赤色の半袖セーラー服を着たメレイズが、紫色の半袖セーラー服を着たニオに絡んでいた。


「流石ニオちゃん。似合うなぁ。油断してたらアリエッタちゃん取られちゃいそう」


 ニオは全力で首を横に振っている。メレイズからはニオをライバル視しているが、ニオは断固拒否の姿勢なのだ。アリエッタに関する事なので、恐怖が先行して伝えられていないが。


「どうします? このままみんなでお店に食べに行きます?」

「いや、死人出るだろ……」


 目の前で膝枕されている|死体《パフィ》を見ながら、なんだかよく分からない危機感を覚えるピアーニャ。しかし、この後は昼食なので、どうしても向かう事になる。その時着ている服が、少しでも大人しいデザインになっている事を祈るしかないピアーニャであった。

からふるシーカーズ

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

0

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚