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「続きまして、1年による大玉転がしです。」
「位置に着いて、よーい、ドン!」
スターターピストルが打たれ、全員で一気に大玉を転がす。
俺、桃瀬晴翔は、赤組。
友達の保住は、白組で、萌田も白組だ。
因みに、保住の好きな人である、朝井は赤組である。
現在、赤組は、白組より少し距離が離れている。
(萌田さんがいるからか…?)
先程の萌田の走りを見た桃瀬は、思った。
するとーーーーーーーーーーーーーーーー
「うわ!」
桃瀬は、誰かの足につまずいて、派手に転んでしまった。
〈赤組、1人転んでしまったー!〉
転んだすぐに、実況席に座ってる3年生が、マイク越しで、実況している。
「ウゥ‥…」
派手に転んで、膝を擦りむき、血が流れている。
「大丈夫ー?」
すぐに、審判員の2年生が、駆け寄ってくる。
「保健室行こっか。立てる?」
「はい…」
「パン,パン,パン!」
スターターピストルが、3回鳴った。
「1年による大玉転がしは、白組の勝利です。」
校庭から、白組かと思われる人達の歓声が聞こえる。
桃瀬は、保健室で、治療を受けていた。
「はい、できた。もう動いて大丈夫だけど、派手に動く事は禁止。」
「ありがとうございます。」
保健室の先生に礼を言い、保健室を出た。
(終わったな、1年の体育祭が……)
教室に、戻ると保住と萌田と朝井が駆け寄ってきた。
「桃瀬〜!おまえ、大丈夫か〜!!」
「桃瀬さん、怪我したって聞いて……大丈夫ですか?」
「桃瀬君、ごめんなさい!私の足が当たったから、転んでしまって……本当にごめんなさい!」
朝井の唐突の謝罪。
「え…柚香?」
「朝井さん……」
保住と萌田も困惑している。
「…大丈夫ですよ。怪我くらい、小さい頃から、してるんで、もう慣れてます。」
「でも…!」
「柚香。」
萌田が、申し訳なさそうな顔をしている朝井を見つめる。
「…ありがと。」
朝井は、萌田と顔を合わせたからだろうか、先程の申し訳なさそうな顔では無くなっていた。
「本当に、ごめんね」
「大丈夫だよ。…そろそろ、昼休憩があるから、せっかくだから、4人で食べない?」
「!賛成!!」
「私も!柚香は?」
「ぁ……、」
「柚香?」
「なんでもない、じゃあ、私も…」
「!!」
萌田の顔が、パッと笑顔になった。
「おし、じゃあ、昼持って校庭のベンチ集合ー!」
『はーい』
「おーい、こっちコッチ!」
保住が手招きをして言う。
「はや……あいつ、いつもはのんびりナマケモノみたいな感じなのに……」
「どうやって食べましょうか…」
校庭のベンチは、向かい合わせの所が無く、横並びの2人席しか無い。
「男女で分かれて食べます?」
「そう…しましょうか。」
俺と保住。
朝井と萌田。
話しながら食べているとーーーーーーーーーーーーーーーー
「すみません、飲み物を持ってき忘れてました。取りに行ってきますね。」
朝井が行ってしまい、今度は、
「うっ、わ、悪い、桃瀬、ちょっと腹痛に…なってきた、から校舎行ってくるー!」
走り去って行った保住。
桃瀬と萌田だけの時間。
(萌田さん、マスクを取ってない…食べてる…よな…)
さっきからずっと、朝井のせいで見えてなかった。
(見られるのが嫌なのだろうか…)
考えていると……
「桃瀬さん。」
萌田が話しかけてきた。
「?」
「柚香……さっきは、ごめんね」
「え…」
朝井がやったのに、萌田が急に謝ってきた。
「萌田…さん?」
「柚香、昔から責任感が強くて…」
朝井の過去を話し始めた萌田。
「でも、中学1年生の時、柚香、男の子…って言っても、同学年だけどね。その子と色々あって喧嘩になっちゃって、柚香、頭にきてその子に怪我させちゃったんだ…。その傷、今はもう治ったけど、柚香すごく思い詰めちゃって……」
「…だから、さっき…」
「うん、また同じことをしちゃって、多分まだ思い詰めてる。」
朝井の過去を知った桃瀬。
何とも言えなくなった、その時、
「桃瀬ー!腹痛治った!」
さっきのしんみりした空気を一気に払い除けるかのように、保住が帰ってきた。
「おまえなぁ…」
「んー?」
ハァと、ため息を吐く。
「あっ!柚香!遅いよ〜!」
「ごめん!」
全員が戻ってきた。
「これで、体育祭を終わります。一同、礼っ!」
こうして、体育祭は、幕を閉めた。