テラーノベル
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───────それから、1ヶ月後。
真夏の太陽がジリジリと照りつける。
今日は、珍しく稽古が休みになった。理由としては、母さんの用事があるからだとか。
私は、夕飯の買い出しのために商店街の方へと出向いていた。今日は何にしようか、今日は一段と暑かったし冷やし中華にでもしよう。
私は、冷やし中華に必要な買い物を済ませた。
夕方になっても暑いものは暑い。
汗が頬を流れる感覚。肌もベタついていてとても気持ちが悪い。少しでも日差しのない部分を通って帰ろう。
そして、路地裏らしきところをみつけ、ここもここもで暑そうだが…日差しを直に受けるよりはマシだな…と路地裏へと入った。
5分ほど歩いたその時だった。突然背後から視線を感じ振り返った。だが、そこには誰も居ない。気のせい…?いや、そんなはずは無い。そもそも、こんな路地裏で視線を感じる方が…
「やぁ。兄妹?」
突然背後から何者かに抱きつかれた。
おかしい、気配なんて無かったのに。
私はそいつを引き離そうとしたが、中々剥がれない。
「酷いじゃないか~…そんなに暴れないでくれよ。僕は、君の”お兄ちゃん”なのに。」
私に兄?そんなはずがない。私の姉弟は弟だけだ。それにしてもこいつ、力が強い。どれだけ力を込めても離れる気が一切しない。
「随分と汗をかいているね?」
そいつは、すん、と鼻を動かした。
全身に鳥肌が立つのが分かった。一般人には何かない限り使うな…と母さんから言われていたが、流石に我慢の限界だ。
私は異能力を使い、そいつと距離をとった。
…は?
ようやく見る相手の顔は、私と同じ色をした目だった。髪色は違うが、明らかに私と同じ色。
それに…どこかで見たことが……
色々な思考が絡み合い、困惑をして動けずにいるとその男はにやりと口角を上げた。
「ようやく信じたかい?言ったろ?僕たちは兄妹なんだよ。君の”パパ”…バツイチなの知らないのかい?」
あの男が?そんな話1度たりとも聞いたことがない。そんな事を考えていると、兄と名乗る男は話を続けた。
「まあ、知らないだろうね。僕の母さん…つまり、君のパパの元奥さんは、君のパパのせいで死んだんだ。だから、僕大きくなったら君のパパの事を殺すつもりでいたんだけど~…君が殺したんだってね!」
その男は私の手を掴み、ぶんぶんと縦に振った。
「いやぁ!すごいね!まさか、君が殺しちゃうなんて!素質あるんじゃない?」
気味が悪いほどによく笑うこの男。
私は勢いよく手を離し、男とまたすぐに距離をとった。
「ああ!別に君を殺そうとかじゃないんだよ?ただ、自己紹介しとこうかな~って来ただけさ♪」
…落ち着いてきて、ようやく分かった。この前ニュースで、何の前触れもなく現れたサーカス団を見に行った人全員が殺されていた事件があった。手がかりが殆どない中で、1枚だけ防犯カメラに向かって手を振っている男の写真があった。頭がまるまる隠れるほどの謎の大きな帽子を少しあげ、口元だけが見えていた。それが…こいつの笑った時の口元と全く同じなのだ……。
男はまた口角を上げると
「ニュースで見た犯人と同じ口元だ…と思っているんだろう?」
思考が読まれた、?そういう異能なのか…
男は腕時計を確認すると、あ!と声を出し、踵を軸にくる、と後ろを向くと。
「これから団員達で会議があるんだった!お兄ちゃんはそろそろ帰るよ!」
私は、おい待てと声をかけたがその男は止まることなく歩みを進め。
「またどこかで会おう♪困っていたら呼ぶといいよ、お兄ちゃんってね♪じゃあね、異母兄妹のクラーケ…」
遠くなる男の姿は蜃気楼のようにゆらゆらと揺れて、消えてしまった。
暑さのせいで幻覚でも見ていたのだろうか。
早く帰ろう。せっかく買った具材が悪くなってしまう。
それと、母さんに報告しなければ。
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