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うおっw
うし、いこう
夜。
薄曇りの空の下、彩音は古びた神社の境内に立っていた。
彼女の前には、かつて封じた刀――焔霞(えんか)。
その刃に、月光が淡く映る。
彩音「……やっぱり、ここにあったのか。」
銀時「見つけちまったか。……そいつ、ずっと探してたんだろ?」
(静かな間。風が木々を揺らす)
彩音「……違う。探してたのは、刀じゃない。“昔の自分”と、どう向き合えばいいのか……それを。」
銀時「向き合う、ね。……そりゃ、刀よりよっぽど重てぇもんだ。」
(銀時がポケットに手を突っ込みながら)
銀時「でもよ。お前が刀を握るって決めたんなら――もう誰も止めねぇよ。」
彩音「……怖いよ、銀時。この手でまた、誰かを傷つけるかもしれない。」
銀時「その手で守ることもできんだろ。」
(彩音、はっとして刀を見つめる)
銀時「刀が悪ぇんじゃねぇ。使う奴次第だ。だったらお前が、正しい使い方を教えてやりゃいい。」
(沈黙。彩音は静かに刀を手に取る。鞘の感触が懐かしいようで、痛い。)
彩音(心の声)「……そうか。私は“刀を封じた”んじゃなくて、“自分を縛ってた”んだ。」
(刀を抜く。風が鳴り、焔霞の刃が淡く光る。)
彩音「もう逃げない。この刀で――今度こそ、誰かを護るために戦う。」
敵は、彩音の過去を知る者。
「狂刃の再来」と呼ばれる恐るべき剣士。
敵「戻ってきたな、“焔霞”の主。また血を求めて刃を抜いたか。」
彩音「……違う。今度は、護るために抜いた。アタシの大切なものを‼︎人を‼︎」
敵「甘い。刀とは殺すためのものだ‼」
彩音「なら、アタシはその概念ごと斬り捨ててやる‼」
(激しい剣戟。銀時も途中で参戦し、背中合わせに戦う。)
銀時「……やっぱお前、似合ってんじゃねぇか。その刀。」
彩音(息を切らしながら)「……皮肉? それとも、褒め言葉?」
銀時「褒め言葉に決まってんだろ。俺の背中守ってくれたんだからよ。大切な人とか言われたらこっちも燃えるってもんよ」
(最後の一撃。彩音の渾身の斬撃が敵を貫く。光が走り、刀が唸る。)
戦いが終わり、静かな朝が訪れる。
彩音は刀を地に突き立て、空を見上げる。
銀時「……終わったか。」
彩音「そうだな。でも、今度は――もう二度と、この刀を“封印”なんてしない。」
銀時「そうしな。」
(銀時が彩音の肩を軽く叩く)
銀時「刀があろうがなかろうが、お前はお前だ。けど、刀を握ったお前も――ま、どんなお前も俺は嫌いじゃねぇよ。」
(彩音、少し笑って)
彩音「……ありがと、銀時。」
(風が吹く。焔霞の刃が朝日に光る。)
彩音(心の声)「――これが、アタシの選んだ道。もう手放したりなんかしない」
万事屋の縁側。
彩音は一人、膝の上に焔霞を置き、静かに刃を拭っていた。
血の気をすべて洗い流したその刀は、どこか澄んだ光を返している。
彩音「……お疲れさま。お前も、やっと……眠れるな。」
(彩音は柔らかく刀身を撫でる。その手つきは、まるで古い友へ向けるもののようだった。)
縁側の柱にもたれかかって、あくび混じりの声がした。
銀時「……まるで子供寝かしつけてるみてぇだな。刀相手に“おやすみ”って、どんな乙女趣味だよ。」
(彩音がふっと笑う)
彩音「戦いのあとくらい、少し優しくしてあげたっていいでしょ。」
銀時「ま、そうかもな。」
(銀時はいつもの飄々とした笑みを浮かべながら、隣に腰を下ろす)
銀時「……で、どうだ。久々に握った“相棒”の感触は。」
(彩音は少しだけ考えて、空を見上げる)
彩音「重かった。でも、前とは違う。あのときは“背負ってた”けど……今は“共にある”って感じ。」
(銀時、少しだけ真顔になる)
銀時「……強ぇな、お前。」
彩音「そう見える?」
銀時「見える。でもほんとは、そうやって笑ってる分だけ、誰よりも泣いてんだろ。」
(静かに流れる風。彩音は言葉を返さず、代わりに刀の鞘を締める音だけが響いた。)
彩音「……なあ、銀時。アタシ、あのとき“怖い”って言ったよな。」
銀時「あぁ。」
彩音「でも、今はちょっとだけ違う。“怖い”けど、“進みたい”って思える。」
(銀時、口の端を上げて)
銀時「……そりゃもう、立派な侍の顔してんな。」
彩音「お前が教えてくれたんだよ。」
(銀時が少しだけ顔を背ける)
銀時「おいおい、やめろって。照れるじゃねぇか。」
彩音「……ほんと、素直じゃないんだから。」
(柔らかく笑い合う二人。その隙間に、朝陽が差し込む。)
銀時「……でもな、彩音。」
彩音「なに?」
銀時「お前が刀を握るってんなら――俺も隣で抜くからよ。“護る”のはお互い様だ。」
(彩音は驚いたように銀時を見て、すぐに笑った)
彩音「ふッ……頼もしいこと言ってくれんじゃん。」
銀時「あったりめーだろ。俺ぁ、もうお前の“背中”は二度と見逃さねぇ。」
(静かに、でも確かに心の奥で何かが灯る音がした。)
彩音(心の声)
「――そうだな。銀時がいてくれる限り、私はもう迷わない。淡く、でもはっきりと灯る光がそこにあるから」