テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
試験が終わって,三日目。
署内は,少しだけ空気が緩んでいた。
誰もが,一区切りついた顔をしている。 だが,完全に日常に戻ったわけじゃない。
夜。 通報は,21時過ぎ。
「住宅街で人が倒れている」
現場に着いた瞬間,それは確信に変わった。
静かすぎる。
規制線。 赤色灯。 野次馬が,いない。
「……早すぎる」
「通報から,まだ十分も経ってへん」
中野が,周囲を見る。
被害者は,路地裏。 成人男性。 胸部刺創。
即死。
「争った形跡,なし」
「逃走経路も,綺麗すぎる」
私は,しゃがみ込む。
「……ここ」
血の向き。 倒れ方。
「刺されたのは,ここじゃない」
「移動させられてる」
その時。
足音。
……近い。
「下がって」
言い切る前に,影が走る。
刃物。 距離,五メートル。
「警察だ」
「動くな」
相手は止まらない。
警察官職務執行法第7条。
判断は,一瞬。
私は銃を抜き,構える。
片手。
狭い路地。 味方が近い。
引き金を引く。
反動が,手首に走る。 衝撃。 だが,制御はできている。
弾は,相手の脚を撃ち抜いた。
「確保」
容疑者は倒れ,刃物が落ちる。
中野がすぐに駆け寄る。
「恵」
「問題ない」
手首を軽く動かす。 痛みは,残っていない。
「無茶しとらんやろな」
「してたら,外してる」
中野は,小さく笑った。
「試験終わっても」
「全然,休ませてくれへんな」
私は立ち上がり,現場を見る。
「だから,警察官なんでしょ」
赤色灯が,夜を回す。
試験は終わった。 でも。
現場は,待ってくれない。