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#青春恋愛
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夏希(なつき)
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奇蹟あい
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その日の帰り道。
玲と星羅は。
いつもより静かに歩いていた。
手は繋いでいる。
けれど。
星羅は何度も玲の顔を見る。
「……」
「どうした?」
「ううん」
また見る。
「……何か言いたそうだな」
「……分かる?」
「ああ」
星羅は少し俯く。
「昨日のこと」
「……ああ」
「話してほしい」
「分かった」
玲は足を止める。
星羅も止まる。
「俺がセラの配信を見始めたのは」
玲はゆっくり話し始めた。
「一年くらい前」
「……」
「その頃、俺は……」
少しだけ間を置く。
「何をやっても上手くいかなかった」
星羅は黙って聞いている。
「学校でも家でも」
「……」
「別に大きな問題があったわけじゃない」
玲は苦笑する。
「ただ、何をしても意味がない気がしてた」
「……」
「毎日同じことの繰り返しで」
空を見上げる。
「明日も今日と同じだと思ってた」
星羅の胸が締め付けられる。
「そんな時」
玲は続ける。
「たまたまセラの配信を見つけた」
「……」
「最初は暇つぶしだった」
「……うん」
「でも」
玲は少し笑う。
「気づいたら毎日見るようになってた」
「……どうして?」
「声が好きだった」
「……!」
星羅の顔が赤くなる。
「それだけ?」
「それだけじゃない」
玲は星羅を見る。
「セラは、いつも楽しそうだった」
「……」
「誰かに元気を与えようとしてた」
星羅は胸元に手を当てる。
「そして」
「……」
「ある夜」
玲の声が少し低くなる。
「俺が一番辛かった日に」
星羅は息を呑む。
「セラが言った」
玲は。
あの日の言葉を思い出す。
「『今日も頑張ったんだから、それだけで十分だよ』」
「……」
「『明日は、今日より少しだけ楽しい日になるかもしれない』」
星羅の目が潤む。
「その言葉を聞いて」
玲は笑った。
「初めて思った」
「……何を?」
「もう一日だけ頑張ってみようって」
「……!」
星羅の目から。
一粒の涙が落ちる。
「それが……」
声が震える。
「私だったんだ」
「ああ」
「……」
「だから」
玲は星羅の手を握る。
「俺はセラに救われた」
「……」
「でも」
玲は。
今度は星羅を見る。
「今、俺を救ってくれてるのは」
「……」
「星羅だ」
「……!」
星羅は何も言えなくなる。
涙が止まらない。
「……ずるい」
「何が?」
「そんなこと言われたら……」
星羅は玲に抱きつく。
「もっと好きになっちゃう……」
「……」
「もう……どうしたらいいの」
玲は少し照れながら。
星羅の頭を撫でる。
「そのままでいいだろ」
「……」
「俺は星羅が好きだから」
「……!」
星羅は玲の胸に顔を埋める。
「……私も」
小さな声。
「玲くんが大好き」
しばらく。
二人はそのまま動かなかった。
やがて。
「ねえ、玲くん」
「ん?」
「一つだけ聞いていい?」
「ああ」
「私がセラだって……いつから気づいてたの?」
「……」
玲は少し考える。
「文化祭より前」
「え?」
「かなり早い段階で」
「……嘘」
「本当」
「じゃあ、どうして言わなかったの?」
「星羅が自分から話してくれるまで待とうと思った」
「……」
星羅は玲を見つめる。
「……ありがとう」
「何が?」
「私を待ってくれて」
星羅は微笑む。
「私、玲くんのこと好きになれて……本当によかった」
その夜。
星羅は自室に戻る。
ベッドに座る。
スマホには。
玲とのメッセージ。
『今日は話してくれてありがとう』
『俺も話せてよかった』
星羅は画面を見ながら笑う。
「……一年も前から」
玲が自分の配信を見ていた。
自分の言葉で。
玲が救われた。
「……嬉しい」
でも。
その直後。
星羅のスマホが震えた。
知らない番号。
メッセージ。
『黒瀬玲くんから、話を聞いたんだね』
「……!」
星羅の表情が変わる。
『でも』
続けて届く。
『彼があなたに話していないこともある』
「……」
『あの夜』
星羅の指が止まる。
『彼が本当に救われた理由を、あなたはまだ知らない』
「……どういう意味?」
返信。
既読。
しばらくして。
『知りたければ、明日一人で来て』
『場所は――』
そこには。
学校ではない場所が指定されていた。
「……」
星羅はスマホを握る。
本当なら。
玲に相談するべき。
そう分かっている。
でも。
「……私が知らない玲くん」
その言葉に。
星羅は強く惹かれてしまった。
玲の過去。
自分が知らない時間。
自分が知らない苦しみ。
「……知りたい」
そして。
「玲くんのこと、全部知りたい」
星羅の瞳が。
静かに揺れる。
「だって私は……」
スマホを胸に抱く。
「玲くんの彼女だから」
その夜。
星羅は一人で。
約束の場所へ行くことを決めた。
――玲には、まだ何も言わずに。
コメント
1件
読み終わりました……玲くんがセラの配信に救われた話、そして今度は星羅がリアルな玲くんを救ってるってのが、本当にぐっときました。「そのままでいいだろ」って台詞、玲くんらしい優しさが出てて好きです。最後の不審なメッセージ、めちゃくちゃ気になります……玲くんに相談しないで行こうとする星羅の気持ちも分かるけど、ドキドキしますね。続きが待ち遠しい!