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第七夜:砂漠の瞳


その夜、店内に降り注ぐ雨の音が、何か神秘的な静けさをもたらしていた。


外の暗い空は、まるでそのすべての不安を吸い込んでしまうかのようだ。しかし【Fleur】の中は、心地よい温かさに包まれていた。

 

ドアが静かに開くと、足音が聞こえた。入ってきたのは、長い黒髪を持つ男性だった。


彼の顔は、非常に整っており、顔立ちは穏やかなものの、目に宿るものが少し違っていた。


その瞳の色は、まるで砂漠の空のような深い金色をしており、その奥には何かが眠っているような印象を受ける。まるで、その瞳が数千年の歴史を見つめてきたかのような、重みを感じさせる。


リュカはその人物を見て、にっこりと微笑みながら迎える。


「いらっしゃいませ。お席にどうぞ。」


男性はゆっくりとカウンターに歩み寄り、静かに座った。その仕草にはどこか優雅さと、そしてその奥にある孤独感が感じられる。リュカは少し不安げに、しかし柔らかく言葉をかけた。


「何かお悩みがあればお聞かせください。」


男性はしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと口を開く。


「私は、永遠に生きることに疲れてしまった。」


その声は深く、少し乾いた音がしていた。彼の瞳は、どこか遠くを見つめているようだった。


「何千年もの間、世界を見続けてきた。でも、どんなに多くのことを見ても、結局は誰も長くは続かない。私は、もうそのことに耐えられなくなってきている。」


リュカはじっとその言葉を聞き、穏やかに答える。


「永遠に生きること、それは確かに過酷なものかもしれませんね。周囲のすべてが変わり、あなただけが変わらない。目の前の世界が常に新しく変わっていく中で、孤独感が強くなることもあるでしょう。」


その言葉を聞いて、カインがカクテルグラスを手にしながら静かに言った。


「永遠に生きるということは、全てを見続けることでもあります。それが苦しみになってしまうのは、見続けるものがあまりにも多すぎるからかもしれません。」


リュカは軽く頷き、男性に向けて優しい笑顔を見せる。


「永遠を感じることができるのは、ある意味幸運かもしれません。しかし、同時にその孤独感も理解できます。」


男性は無言でリュカとカインの言葉を聞き入れていた。その表情は、どこか深い葛藤を抱えているように見えた。


カインは無言でカクテルの準備を始める。彼の手つきは冷静で、まるで計算し尽くされたように見える。


しばらくすると、透明な液体がグラスに注がれ、そこに少しだけ金色の粉が舞い降りる。


「このカクテル、『Eternal Mirage』。永遠に生き続ける者のために作られた一杯です。」


カインは無表情で言った。


「過去を振り返ることなく、今を感じ、そして未来を感じる。そうすることで、少しずつその永遠を意味のあるものに変えていけるはずです。」


リュカは微笑みながら、


「このカクテルは、過去に囚われすぎることなく、今この瞬間を生きる力を与えてくれるものです。永遠に生きることが辛いなら、少しだけでもその重荷を軽くすることができるかもしれません。」


男性はカクテルを見つめ、少し考えてから手に取り、静かに口をつけた。


その瞬間、彼の表情に少し変化が見られた。深い金色の瞳に、わずかな輝きが宿る。


「これは…」


男性は驚いたように言った。


「不思議だ。何かが少しだけ、軽くなったような気がする。」


リュカは穏やかな声で言う。


「永遠というものは、確かに圧倒的であると同時に、閉じ込められるように感じることもあるでしょう。でも、少しだけ今という瞬間を大切にしてみることで、その重さが和らぐこともあるのかもしれません。」


カインは冷静に、けれど少しだけ優しげな目を向ける。


「過去を振り返ることなく、未来を怖れず、今を生きる。それが永遠に生きる者が手に入れるべき力かもしれません。」


男性はゆっくりと、もう一口カクテルを飲み干すと、深く息をついて顔を上げた。


「ありがとう…少し、楽になった気がします。過去や未来に囚われず、今を感じることが、こんなに心を軽くするとは。」


リュカは微笑みながら、


「それが今のあなたにとって、最も大切なことかもしれません。少しだけ心を軽くし、今を生きる力を取り戻してください。」


男性は立ち上がり、軽く頭を下げると、静かに店を出て行った。外に出た彼の背中は、少しだけ軽やかに見えた。


リュカはその姿を見送りながら、穏やかな言葉を漏らした。


「永遠に生きる者が求めているのは、結局のところ、今この瞬間を大切にすることなのかもしれません。」


カインは無言でうなずき、グラスを片付けながら言った。


「そうだな。過去や未来に囚われてしまうと、今を生きる力を失ってしまう。今を大切にすることが、永遠を意味あるものにする第一歩だ。」


店内には再び静けさが訪れ、外の静かな風が店内に吹き込んでいた。

『星降るカクテル』

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気力があれば10話以降もかきます。現段階では、10話で完結予定です。でもそれじゃあ寂しいので番外編などもかいていきます。 番外編のリクエストも受け付けています。 〈リクエストの例〉 【例】リュカは恋人がいる!? 的なものでもいいですし、リュカの過去とかでも🙆です。 (ちなみにカインの過去編、リュカとの出会いは書く予定です。) 是非気軽らにリクエストください。

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