暗い暗い部屋の中
月の光が小さな隙間から差し込んでいた
月に照らされ腕に痣が見えた
母の悲鳴が隣から聞こえる
父の罵る声が聞こえる
一体いつからこうなってしまったのだろう
最初は父も母も仲が良かった。周りから羨ましがられる程だった。「理想の家族」そう言われる程に
鏡花「おかあさん!おとうさん!」
母「どうしたの鏡花?」
父「どうしたんだい?」
鏡花「わたしね、おかあさんとおとうさんのためにお花のかんむり作ったの!」
母「鏡花、お母さん達にこのお花の冠くれるの?」
鏡花「うん!」
父「ありがとう。鏡花」
鏡花「えへへ」
鏡花「あとね、きれいなお花も見つけたの!」
母「綺麗なお花?」
鏡花「うん!こっちきて!」
鏡花「このお花!きれいでしょ?」
母「そうねぇ、どういう名前のお花なのかしら?」
母「貴方花詳しかったでしょう?」
父「此れはサフランという花だ」
父「鏡花、お前にもゆかりのある花だぞ」
鏡花「?」
父「この花はな、お前の誕生花なんだ」
鏡花「たんじょ?」
母「ふふ、鏡花にはまだ難しかったみたいね」
鏡花「わたしのたんじょ?ばな?ほしい!」
父「え?」
鏡花「このお花ほしい!」
母「お花はお世話が必要なのよ。貴女にできるの?」
鏡花「おせわ?」
父「花の世話は俺がやるよ。鏡花、帰りにお店でこの花買って帰ろう」
母「まあ貴方ったら‥」
父「駄目かい?」
母「しょうがないですね…いいでしょう」
母「その代わり!貴方、世話すると言ったんですからきちんとやって下さいね?」
父「分かったよ」
鏡花「やったぁ!」
この頃はとても幸せだった
またあの頃に戻りたい
いつもそう思う
でも、きっともう戻るには手遅れなんだろう