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「強くなるにはどうしたらいい?」
「……知らねー」
鉄格子を挟んで向こう側の青色は呆れたような顔をして俺の質問を流した。この男の看守になって早数日、もう慣れてきたものだ。
「知らねー訳ねぇだろ英雄さんよォ!!俺は本気で強くなりてぇの!!!」
「うるっせぇなぁ!俺は囚人お前は看守!仲良くおしゃべりする関係値じゃねぇだろ!!」
「あんたも大概うるせぇよ。てかそういう関係だって思ってんなら俺に敬語使ってくんない?」
「何で俺に夢見てる勘違いボーイを敬わなくちゃならなんだ」
「誰が勘違いボーイだ」
…うん、なんか歪に仲良くなったがいいだろう。この人を知れば知るほど俺の英雄像とはかけ離れていたが、こちらの方が人間臭くて親近感が湧く。俺はもうこの人に夢は見ていないので勘違いボーイではない!
そして冒頭に戻るが、俺は強くなることにしか興味がない。酒も女も雅な趣味も持ち合わせていないため己の力を磨くことだけをしていたら士官学校時代のあだ名は『戦闘バカ』。なんとも不名誉なあだ名だ。まぁ仲がいい奴らにつけられたがアイツらが俺をそう呼ぶことは滅多にないしいいのだが。
我が国を勝利に導いた英雄こと目の前で鎖に繋がれているらっだぁという男。指導して貰えるならしてもらいたいではないか!
「指導つったってさぁ…何?戦闘のコツとか?俺感覚で覚えてるから口で説明できないよ」
「教えてくれんなら実践でも……!」
「……実践?」
お前バカだなと声が聞こえてきそうな怪訝な顔を向けられた。イラッとしたので睨み返してやると、青色は目を伏せ大きく息を吐いた。
「死刑囚と模擬戦とか許可降りると思う?降りるわけないんだよ。もし仮に降りたとしても、俺はそれを口実にお前のこと殺すことだってできる。殺しても、指導を頼んだのはお前。言っちゃえば自業自得。そこまで頭回んない?」
「……まぁ、許可の話は置いといても、お前が俺のこと殺すことはない」
「は?」
「本気で言ってるなら、俺に忠告しないだろ。だからその可能性は今消えた」
「………お前、ほんとだるい」
そう吐き捨てるように言って、サファイアは俺から目を離した。そんなことしたって、あるのはコンクリートの壁だけだろうに。
「……お前さ、みどりくんの教え子だろ」
「…え、あぁうん」
「ぐちつぼって、どこかで聞いたことあると思ったらみどりくんが言ってたんだった」
「えっ!もしかして俺のこと褒め」
「すげぇ問題児がいるって」
「は?」
みどりくんとは、かつての『らっだぁ運営』のメンバーが1人、緑色だ。らっだぁ運営とはらっだぁ率いる少数精鋭の部隊だった。青鬼が有名ではあるが、彼らも青鬼の補佐として名を馳せている。近接戦闘を得意とし、らっだぁと最前線を駆け抜けた金豚きょー。後方支援がメインで銃や短剣の扱いに長けていたコンタミ。中距離を得意とし、前線の取りこぼしの息の根を確実に止めるレウクラウド。数多の情報を操り的確な指揮を取った緑色。この4人がらっだぁ運営と呼ばれるらっだぁ直属の部下だ。
戦後の現在彼らは各々4つの士官学校の指導を勤めている。俺はみどりくんの士官学校に在学していて、彼に大変可愛がれ(ウザがられ)ていた。
「…あ、資料作成しなきゃ」
「さっさと行け汚職警官〜」
「汚職じゃねぇわ!!」
彼と別れ階段を上がると眩しさに目をすぼめる。いくら明かりをつけているといっても地下は暗い。もう少し明るくしてもらいたいものだ。看守室の扉を開けると先輩がいたので挨拶をする。
「お前青鬼のとこだろ?可哀想だなぁ」
「何がっすか?別に今のとこ問題とかもないですけど…」
「お前って青鬼の全盛期知ってる?」
「はい」
「あぁ…お前の前に二人くらい看守がいたんだけどな、全員英雄がこんなところにいるなんて!って逃がそうとして職を失ってるんだよ」
彼の「変なこと考えずに淡々と仕事に打ち込め」とはこのことだったのか。確かに彼に憧れはしたが、職を失ってまで逃がそうとは思わない。
「そんなバカなことしないっすよ」
「なら良いけどな」
「あと青鬼と戦いたいって言ったら許可降りますか?」
「無理に決まってるだろ」