『…..自分でも 、分からないんです 。』
「…..わからない?」
『いつもと変わらない喧嘩だったんです 。
でも 、どこかは違くて、、
すると今度は自分にとてつもなく嫌になって
自傷行為をしたくなりました 。』
「…..そっか 、ありがとう。大丈夫だよ」
僕の頭を優しく撫でて 、伊作先輩は
カルテを置いた 。
「うーん、、癇癪の原因はあくまで僕の予想だ
きっと 、三郎が言ったある言葉が綾のトラウマを
掘り返しちゃったんじゃないかな 」
「….トラウマって 、、三郎お前何言ったんだよ」
「はぁ?えぇ.. あんま覚えてねぇけど、」
「なんかあんだろ思い出せ」
僕と竹谷先輩の横にいた尾浜先輩が
引きながら問い詰め
潮江先輩がぐわっと横から強く問いつめた
「えぇっ….あー、、、
途中からカッとなって 、
お前なんか知らないって言いました 。」
『…っ、、』
お前なんか知らない 。その言葉がすごく怖い
理由はわからないけど 、すごく怖くて辛い
心の臓が抉られるようで 、思わずぎゅぎゅっと
竹谷先輩を強く抱いた 。
「き、喜八郎ッ!?
そんなに強く抱かれるとちょっと…..っ」
「….ハチきもいよ」
「兵助っ!!!!」
すると 、伊作先輩はそうか!!と
手を合わせて立ち上がった
「綾は 、三郎の言った言葉と仙蔵の言った言葉が
重なって 、パニックを
起こしちゃったんじゃないかな」
『…..は?』
私と鉢屋の言葉が重なるって 、
一体私はなにを言った?
“綾部喜八郎をご存知ないのですか”
“そんなやつ 、学園に居ないだろう”
あぁ 、いつしか私はそんなことを
言ってしまっていたな 。
今となっては 、後悔でしかない
今だって 、今すぐお前の元に飛び出したい
でも 、足枷がそれを邪魔して出来やしない 。
喜八郎との記憶が無くても 、分かっていた
私は取り返しのつかないことをしてしまい 。
彼女 、綾にとてつもないトラウマを
植え付けてしまったこと
私のせいで 、あんなに怪我をしてしまったこと
先程から黙っている 、平野と田村の様子を見れば
自然と見当がついてしまう
この癇癪は 、これがはじめてではないのだろう
きっと 、何度も起きていたのだろう
すると 、するっと竹谷の元から綾が降りていった
「…もう平気なのか?」
「…..はい 、ありがとうございました 。」
そういって辺りを見回して 、その瞬間
バチッと私と目が合った 。
その目は 、どこか切なくて
今にも泣き出してしまいそうだった
歪んだ顔を治して 、彼女はある男の元へ寄った
「鉢屋せんぱい」
彼女が呼んでも鉢屋は返事をしなかった
否 、出来なかった
「鉢屋せーんぱいっ」
「鉢屋せんぱい?」
「鉢屋さん!」
「三郎先輩」
「えっ!?」
バッと勢いよく鉢屋の顔が上がった
わかりやすいやつだな 。なんて思っていると
ドキンっと心臓が痛くなった
「き、きき喜八郎??いま、名前でっ …」
「あははっ 、先輩のそのお顔 。傑作です」
「は 、」
「またお話しましょうね」
そう言い 、綾は平野と田村を引っ張って
教室へ帰って行った 。
「つかれた 、どっちかおんぶして」
「仕方ない!ならばお前のお兄様である平((
「いーや!お前より力持ちである
この田村三木ヱ門が!おぶってやろう!」
「なんだとっ私は体育委員会だ!
体力には自信がある!」
「ふん!何が体力だ!綾を重いみたいに言うな!」
「….滝さいてい 、三木おんぶ」
「はっはっは!!ざまぁみろ!!」
「えぇいうるさい!!!!!!!」
ふたりとも煩いわ 。そう思ながらも
皆が廊下の声に耳を傾けていた 。
「…あの、立花先輩 。」
『なんだ 、不破』
緊迫した空気の中 、それを断ち切ったのは
不破雷蔵だった
「あの 、もしかして … 記憶が戻ったんですか?」
やはり 、驚くだろうな 。
嫌というほど嫌っていたのに 、
今度は打って変わって心配をしているんだ 。
『….否 、戻ってはいないが 。
少々気付かされてしまってな』
「はぁ 、、そうなんですね .. 」
この先を踏み込んでいいのか悪いのか
きっと悩んでいるのだろう
そんな時 、鉢屋が話し出した
「なら 、先輩は綾が好きと言うのですか 。」
『….どういうことだ』
「….先輩が今どんな状態なのかは心中お察します
ですが 、貴方はこれまで何度も綾を傷つけた 。」
その言葉に 、皆が顔を背けた 。
「…私だって 、後悔しています 。
貴方と同じような事をしてしまい 、
彼女を泣かせることになってしまった」
『……何が言いたい』
「私は 、綾が好きなんです 。
それは 、またここに通うよりもずっと前から」
「さ 、三郎….」
「止めるな勘右衛門 。
…..立花先輩 、貴方は狡い人だ 。」
「私やみんなが喜八郎を求めても 、
どれだけ貴方に突き放されようと … 彼奴は
彼奴はいつだって貴方を想っていました」
「それなのに 、、それなのにッ!!」
「全部全部 、遅すぎるんだよッ」
気づけば私は鉢屋に胸ぐらを掴まれていた
必死に鉢屋を止める五年生や
その鉢屋を叱る六年生や
私を諭すようにする伊作や長次
神様は実に意地悪だ
私が生前 、どれだけ喜八郎を放置していたのか
今まで 、どれだけ綾を拒絶してきたのか
その天罰が下ったのか否か
全ては神の気まぐれか
そんな中でも 、ひとり 。
1個上の先輩にも怖気付かずに 、たった一人の
好い人のために 、前に立ち 。怒りを見せた
そんな鉢屋に 、私は負けてもいいのだろうか
またして鉢屋以外の奴らも ..
喜八郎を、綾を狙っている 。
私の大事な “ 後輩 ” を
そう易々とほかの者の処へ行かせてたまるか
気付けば私はそう言っていた 。
にやけた顔を見せる留三郎に小平太
もー遅いよ 。と安堵を見せる伊作
よかったと肩を撫で下ろす不破と竹谷
どこか腑に落ちない顔をする尾浜に久々知に鉢屋
呆れ顔の文次郎に無表情のままの長次
『鉢屋』
「…っ 、ハイ 、立花せんぱい。」
『お前のお陰で長い眠りから目が覚めたようだ』
「…..良かったデス 。」
『くははッ、そんなにビビるんじゃない 。
そんなんで喜八郎を私から奪えるのか?』
「今はもう仙蔵のものじゃないし〜〜」
『….伊作 。』
「はは 、それでこそ普段の仙蔵 。だな」
「全く 、記憶が戻ってそうそう物騒だな」
「ちょっと助けてよ留三郎〜汗」
伊作を片付けたあと 、顔を俯かせ
しゃがみこむ後輩の頭をひとつ撫でた
『私はいつだって本気さ 。
喜八郎でも綾でも 、いつだってあの子達を
突き放すことだってできる 。
全てはあの子達の為なのだから 。
それに 、あの子達は絶対私の元へ帰ってくる』
私の元へ帰らせぬように、お前たちも頑張るんだな
そう不敵な笑みを浮かべ 、保健室を後にした
亡くなる直前 、私は願った 。
私の死を知った喜八郎はどう思うだろうか
無事に忍術学園を卒業できるだろうか
はたまたは私の後を追ってくれるだろうか
別の男のモノになっていないだろうか
そうなってしまうなら 、私を忘れて欲しい
お前の初恋を捨てて 、
別の男と 、別の恋路を歩んでもらいたいと 。
そうすれば 、私だってお前を忘れて 。
成仏できることだろう 。
そしてまた 、来世で来来世で 。
記憶が無くとも 、私達はまた出会い
戦のない時代で 、永遠の愛を誓おうと__
平野綾 、基 綾部喜八郎の元へ向かう途中
様々な記憶を懐かしく思った 。
コメント
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続きが楽しみすぎるぅ〜( ´›ω‹`)💕