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放課後の廊下は、部活へ向かう生徒で騒がしかった。
その中で、私は一人、掲示板の前に立ち止まっている。
真緖「……あー、やっぱりいた」
後ろから聞こえた声に振り向くと、衣更真緒が呆れた顔で立っていた。
真緖「また一人でうろうろして」
真緖「お前さ、もうちょっと危機感持った方がいいと思うんだけど」
そう言いながら、自然にあなたの腕を軽く引いて、人の少ない壁際へ連れていく。
真緖「……ほら。周り見ろよ」
真緖「ぶつかりそうになってたぞ」
言い方はきついのに、手を離すタイミングがやけに慎重で。
まるで迷子を保護するみたいだ、とあなたが思っていると――
真緖「なに、その顔」
真緒はじっと覗き込んできて、ため息をついた。
真緖「……ほんと、放っとけないんだよな」
真緖「自分のこと後回しにするし、無理しても言わないし」
私が「子供じゃない」と言い返そうとすると、真緒は一瞬だけ言葉に詰まる。
真緖「……別に、ガキだって言ってるわけじゃねーよ」
視線を逸らして、少しだけ声を落とす。
真緖「ただ、その……」
真緖「俺が見てないと、すぐどっかで転びそうでさ」
夕方の光が、彼の表情を柔らかく照らす。
その目は、どこか心配そうで――優しい。
真緖「大丈夫だって言われても、信用できねーし」
真緖「だから、せめて俺の目の届くところにはいろ」
冗談っぽく言ってるのに、拒否される前提みたいな言い方で。
あなたが黙っていると、真緒は慌てて付け足す。
真緖「いや、命令とかじゃないからな!?」
真緖「……ただの、俺の自己満足」
少し照れたように笑って、頭にぽん、と手を置く。
真緖「よし。今日はちゃんと帰るぞ」
真緖「寄り道禁止。わかった?」
まるで小さい子に言い聞かせるみたいな口調。
でもその手はあたたかくて、離れる気配はなかった。
真緒「……ほんと、手のかかるやつ」
そう言いながら、真緒は私の歩幅に合わせて歩き出す。
その背中は、少しだけ誇らしげだった。