異世界へ迷い込んだ(?)太中好き腐女子の話
朝の眩い日差しの中、私はゆっくりと覚醒した。
寝ぼけ眼で辺りを見回す。
(?)
(どこだここは?)
見知らぬ部屋だった。
六畳一間の和室に襖。大きめの窓。窓の外には見慣れぬ風景。
どういうことなのかわからず、昨晩の事を思い出そうと頭を巡らせるがこれといって特別な事はなかったはず。
いつも通り携帯アプリで二次創作の海に沈み、推しカプの波を泳いで寝落ちしたはず。
だのに、なんでこんな状況に?
思わず髪をかきあげるとふわふわの柔らかい毛が流れてきた。
え・・・?
私の髪の毛、こんなにふわふわしてたっけか?髪をかきあげた腕には何やら包帯が巻かれていた。
これ・・は・・
最近大好きなカップリングの攻様が巻いてるなぁなんて呑気な考えを押し込めて慌てて室内にあるであろう鏡を探す。
あまり大きくはない洗面台の鏡に一目散で駆け寄ってその中を覗きこんで唖然とした。
「太宰さん・・・?」
そう。そこにいたのは私が今一番愛してやまない作品のキャラクター、文豪ストレイドッグスの太宰治その人であった。
私は普通のしがない会社員(OL)である。
幼少の砌より、ちょっとオタクで女子を腐らせ、好きな作品やあらゆる事象ににカップリング要素を求めてしまう、良く居る普通の腐女子である。
そんな私が、朝起きたら何故か好きなアニメのキャラクターになっていました。って、それなんて転生モノ作品デスカ?うん、知ってる。最近も読んだ。
兎に角、そうゆう良くある最近の漫画の主人公なのだ、今の私は。
こういう場合みなさんどうしてらっしゃったっけ?
情報収集とか状況整理だとか仲間を集めるとか?
そしたら自分は今何をすべきなのだろうか?
そこまでテンパってもいないが冷静にもなり切れぬ頭で先ず思ったことは…
取り敢えずもう一回声出してみようかな。
「やぁ、私の名前は太宰治だよ。」
鏡に向かって自己紹介したその声は、先程もしやと思ったが、やっぱりちゃんとCV宮野真守さんでしたありがとうございます。自分昔から声優ファンでもあるんです。神様大好き。
そしたら腐女子がやるこた一つしかないよな。
「・・・中也」
切なげに発した声は何度も夢見た太中の攻様の声でした。自分でいうのもナンだけど最の高。
なんて浸ってる私に向かって、あろうことか玄関から返事が返ってきた。
「なンだよ、クソ太宰」
え・・・?
時は止まった。
おそるおそる声のした方を向いてみると、なんとそこには私史上最高の推し。中原中也さんがおられたのだ。
思わず狼狽えた。
え、どうするべき?演技?太宰さんの演技?
これは今、中也が太宰宅を訪れた状況で間違いないんだよな…?あまり黙っていても変だし…
ええい儘よ。
「なんで朝っぱらから小さな蛞蝓がうちに?」
こ、こんな感じっすか?
顔も取り敢えず嫌そうな顔作ってみたけど、これであってるー?
不安と混乱で返事を待つ。
すると、中也さんは舌打ち後、乱暴にその高そうな靴を脱ぎ捨てると室内へ足を踏み入れた。
「手前が呼びつけたんだろ。探偵社とポートマフィアの合同捜査経過の話だっつってたじゃねーか」
不機嫌を隠そうともせず、その素敵な谷山紀章ボイスをご披露された。
ああもう、叫びだしそう。好き。
とか言ってる場合じゃないことは百も承知であるが、骨の髄まで腐女子なんです。ごめんなさい。
中也さんの言葉に
「あぁ、そうだったね」
と無難に返してみるも、すみません。私その話も何もわからないんです。
どうしたもんか・・
鏡の中の困り顔の太宰さんを見ながら考え倦ねていると、また中也さんが口を開いた。
「手前・・なんか変じゃねえか」
うわぁ、流石双黒。相棒が何か可笑しいことをもう疑ってらっしゃる。
「変って?・・な、なにが?」
かと言ってどう返したら良いかわからなくて思わず狼狽えて鸚鵡返ししたけれど、状況は変わらないだろう。
「・・手前・・太宰じゃねぇな?」
核心を付くお言葉ありがとうございます。兎に角、私にはこれ以上騙し切る事は無理だと判断した。(早い)
なので、ため息一つ吐いて、「すみませんでした」
から始まる本日の経緯を嘘偽りなく話すことにした。
多分この状況を脱するには「仲間」が必要である。そう思ったのだ。
「異世界・・?」
「はい」
説明内容は、朝目覚めたらこの太宰治の体になってた事。私の世界では、あなた達のストーリーが語られている事、そして自分はお二人のファンであること。腐女子だとかそういう事は流石に伏せたが、自分は男性同士の恋愛が好きでお二人を見ているとドキドキするんです。なんてことは話しました。ええ。言わなくて良かったかもですが思わず、ね。(ヲイ)
「…俺は別に偏見は無いが、男色家ってのは大変だな」
私の喋り方がサバサバしているせいか、中の人は異世界から来た男色家で双黒好きの普通のサラリーマン という解釈をしてくれたらしい。
設定としては美味しいのでそのまま肯定しておいた。
「なので、どうにか元の世界に帰りたいのですが手掛かりもなくて、どうしたもんかと」
ため息交じりに困った様子で話すと、元来、兄貴肌の中也は庇護欲を掻き立てられたのか、「しょーがねーなァ」と解決策を探す手伝いをしてくれることになった!
そんな簡単に信じて良いんですかポートマフィア幹部様ぁぁあ
御都合展開に感謝します。
最高の仲間ゲットだぜ!!
どこかで稀代のポケモンマスターが叫んだ気がした。
コメント
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最高!