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#6
side wki
「決まりだな」って言ったとき、本当は心臓がうるさいくらいに鳴っていた。
大森の顔が近くにあって、息遣いも分かるぐらいで、思わず手を離すのも忘れていた。
仲直り出来た。
ただそれだけのことなのに、なんでこんなにホッとして、嬉しいんだろうって、自分でも笑いそうになった。
omr「じゃ、俺看板のとこ戻るけど」
そう言って背を向けた大森を見てたら、また離れていきそうで怖くなった。
だから、無意識に袖を掴んでた。
wki「俺も手伝う」
自然な声を装ったけれど、本当は胸の奥が熱くて、息が浅くなっていた。
wki「ここもうちょい太いほうがよくね?」
そう言いながら、本当はなんでも良かったんだ。
ただ、大森をの声を聞きたくて、返事が聞きたくて、理由なんてなんでも良かった。
大森は最初、戸惑った顔をしていたけど、「…うん、そっちのほうが良いかも」って言ってくれたとき、心の中でガッツポーズしてた。
廊下で休憩してるときも、大森の隣にいるだけで胸がいっぱいだった。
wki「つーか、もし誰かになんか言われたら、俺がちゃんと言い返すし」
言った後で、自分でもちょっと必死すぎたかなって思ったけれど、大森は「ありがと」って言ってくれた。
その声は小さくても、ちゃんと届いていた。
本当は怖いことなんてたくさんある。
でも、大森と一緒にいられるなら、それで良い。
周りがどう思うとか、誰かに何を言われるとか、そんなの本当 にどうでもいいんだ。
大森とだけ一緒にいられれば。
それだけでいい。
side wki
放課後、文化祭準備の後片付けが終わった頃だった。
omr「…あのさ」
大森が、小さな声で話しかけてきた。
まだ周りに何人か残っているのを気にしながら、俯き加減で。
omr「勉強、教えてほしいんだけど」
一瞬、驚いたけど、それよりも先に嬉しさが込み上げてきた。
避けてたくせに頼んでくるとか、ずるいだろ、こいつ。
wki「いいよ。どこやる?」
平静を装って聞いたけど、胸の中はドキドキしていた。
教室の隅の隅の机をふたりで使って、ノートを広げる。
大森は、英語の文法をやりたいらしい。
omr「ここ、関係代名詞が…」
wki「あー、これはな…」
説明しながら、大森のノートを指さしたときだった。
思ったよりも距離が近くて、俺の指先が、大森の指にふっと触れた。
その瞬間、大森がビクッとして顔を上げた。
視線がぶつかったと思ったら、大森の顔がみるみるうちに赤くなっていく。
wki「…っ!」
やばい。めちゃくちゃかわいい。
さっきまで普通に教えてただけなのに、一気に頭の中がぐちゃぐちゃになった。
wki「わ、悪い。触っちゃった」
って言いながらも、内心は完全に舞い上がっていた。
(え、これ…俺のこと意識してんじゃね?)
冷やかしじゃなく、本気で照れてる顔だ。
なんか、俺のせいで顔真っ赤にさせてるって思ったら_
(もしかして両思いとか…あり得る?)
なんて、調子に乗りそうな自分がいる。
大森は恥ずかしそうに目を逸らした後、小さい声で、「…続き、教えて」って言った。
(やば、かわいすぎんだろ)
もうそれだけで、今日一日の疲れが吹き飛んだ気がした。
___
気づけば、外はすっかり夕暮れになっていた。
wki「そろそろ帰るか」
omr「…うん」
教科書をカバンにしまう大森の指先が、さっきよりちょっと震えてる気がして_
まだ赤いな、とか思ったら、また胸が熱くなった。
校門を出ると、あたりはオレンジ色に染まっていて、人通りもまばらだった。
最初はふたりとも無言で歩いていたけど、俺のほうが我慢できなくなって口を開いた。
wki「…さっきのとこ、もうちょい説明したほうがよかった?」
omr「え?」
大森は少し驚いた顔をした後、慌てて首を振る。
omr「だ、大丈夫。分かりやすかったし…ありがとう」
wki「そっか」
俺はたいしたことない顔して答えたけど、正直それだけで嬉しかった。
夕焼けのせいか、大森の耳が赤く見える。
それが面白くて、でもちょっと照れて、からかいたい気持ちと黙っていたい気持ちがせめぎ合う。
(俺、ほんと単純だな)
でも、単純でいい。
だって、大森が隣を歩いてくれる。
それだけで十分だ。
信号待ちで立ち止まったとき、大森が小さく息を吐いて言った。
omr「…ごめんね。いろいろ避けたりして」
wki「気にしてないよ」
信号が変わって、また歩き出す。
人目とか噂とか、そんなのどうでもいい。
ただ、大森と並んで歩けるだけでいい。
(いや__)
心の奥で、もう一つの声がささやく。
(できれば、この距離を、もう少し縮めたい)
その気持ちを胸の奥に隠したまま、並んで歩き続けた。
夕焼けの影が長く伸びる道を、大森と一緒に。
音楽の日
キャリハピ最高!!!!
Happinessで満たされた😊