──程なくして、セミオーダーをしていた二人の衣装が仕上がって、試着の話になった際に、
「せっかくだから、事前に写真を撮っておかないか?」
と、彼から提案をされた。
「写真、ですか?」
「ああ、前撮りというのがあるようだから、せっかくならロケーションのいい場所で、写真撮影をと思ったんだが、どうだろうか?」
「……もしかして、あらかじめ調べてもらったんですか?」
心尽くしの気づかいに胸が熱くなる私に、「ああ」と頷いた彼が、
「君のウェディングドレス姿を、いっそう美しく残しておきたいんだ」
そう照れたようにも話して、そんなことを言われては、私まで照れないではいられなかった。
フォトロケーションは、どこにという話を彼の部屋でしていて、ふと思いついたことがあった。
「もし問題がないようでしたら、ここで……貴仁さんの邸宅の方で、どうですか?」
「私の家で?」と、彼が首を傾げる。
「ええ、綺麗な庭園もあって、それにご自宅でなら、貴仁さんのお父様とお母様もその場にいらしてくださるんじゃないかなと」
そう話すと、ハッとしたように目を見開いた彼が、
「君は、やさしいな」
と、呟いて、私の身体をそっと腕に抱き寄せた。
「……ありがとう。父と母も、きっと喜んでくれると思う」
そう口にした彼の目に薄く涙が浮かんでいるのが見えて、思わずその目尻に唇で触れると、互いに引かれ合うように口づけた。
コメント
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気配り心配りができる女性は素敵ですね