始まりは、中3の春。私は、出会ってしまった。ひまわりみたいな笑顔を咲かす人にー。
「詩歩ちゃん、おはよう」そう言いながらマフラーに顔をうずめているのは中学生の時から仲良しの絵麻だ。絵麻はボブの髪をハーフアップにしている。「おはよう、絵麻」登下校時に一緒にいるのは高校生になっても変わらない。「学校、すごく楽しみなんだ!詩歩ちゃんは?」「私もすごく楽しみ」そう私が答えると絵麻は私の方を見て、からりと笑った。「そっか、よかった!」絵麻は私よりも身長が低いから、私を見る時は少し上を向く。私は、見上げる絵麻を見て、妹の様で可愛いと思っている。でも、そんなことを言うのも照れくさいので口では言わない。「クラス、同じだったらいいね!」「うん、私も絵麻と一緒がいいな」そんなことを話している時、目の前に何かがはらりと落ちた。つい、立ち止まった。どうやら、ハンカチのようだ。私は、ハンカチを落としたと思われる人を探す。すると、ちょうど前に女子学生がいた。年齢は、私と同じぐらい。もしかしたら、と思い、声をかけた。「あの…」女子学生はすぐに振り返った。その顔を見て、思わず、動きが止まってしまった。その女子学生が、とても綺麗な顔だったからだ。もう少し見ていたい気持ちもあったが、女子学生は困惑した顔をしている事に気付いて、私は急いで喋りだした。「あの、これ、落としましたか?」女子学生の顔がぱっと輝いた。どうやら持ち主らしい。「ありがとうございます!」女子学生は、お辞儀をした後、去っていってしまった。「詩歩ちゃん、いいことしたね」隣で様子を見ていた絵麻がこちらを見る。確かに、いいことしたかも。そんなことを思う自分に心の中でひっそり笑うのだった。
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