すると。
「透子ちゃん?どしたの?」
「あっ、ごめん。ハルくん」
部屋の中にいたハルくんがなかなか私が戻って来なくて、玄関先で話しているのを気にかけて様子を見に来てくれる。
「透子・・・。そいつ・・誰・・?」
ハルくんを見て更に機嫌が悪くなって、声も低くて怒り声で呟く樹。
「なんで他の男が部屋にいんの?」
樹はどんどん機嫌が悪いまま伝えて来る。
「それは・・・」
なんでこんな時に重なってしまうのだろうか。
ハルくんも久々に訪ねて来てくれて嬉しかったのに。
樹も早く帰って来てくれて嬉しかったのに。
樹とまたこんな意味のないすれ違い嫌だ。
「樹。中に入って。ちゃんと説明する」
そう伝えると樹は黙ったまま部屋の中へと入って行く。
「樹。そこ座って。ハルくんもちゃんと説明するね。ハルくんもそっち座ってくれる?」
「あぁ、うん。わかった」
ハルくんはこの状況に不思議そうにしつつ、なんとなく状況を察してくれて返事をしてくれる。
樹。絶対これ誤解してるな・・・。
「樹。紹介するね。・・・これうちの弟のハルくん」
ただ弟が訪ねてきただけなのに、樹が不機嫌なのはきっとこの理由。
「・・・え?弟!?」
案の定驚いた反応をしている樹。
「どうも。はじめまして。弟の悠翔です」
するとハルくんが空気を読んでちゃんと挨拶してくれた。
「あっ、はじめまして・・。透子さんと同じ会社で今お付き合いさせてもらってる早瀬 樹です・・・」
そして戸惑いながらもちゃんと挨拶してくれる樹。
「いや・・あっ・・そっか・・なんだ・・弟か・・。玄関で知らない男部屋入ってくの見えて・・オレてっきり・・」
「てっきり何?浮気してるとでも思った?」
「いや・・」
「何? 人にはさんざん信じろって言っておいて、樹、私のこと信じてくれてないんだね?」
「いや・・信じてないワケじゃないんだけど・・。いざ知らないヤツの姿見ると、オレもうパニくっちゃって・・。オレいない間にもう気持ち変わったのかなって焦っちゃって・・・」
「そんなことあるはずないでしょ。この5日間寂しくって会いたくて仕方なかったんだから」
「あっ、うん。オレも・・・。だから、透子に早く会いたくて、めちゃ頑張って仕事早めに切り上げて帰って来た・・」
「うん。ありがと。早く帰って来てくれて嬉しい」
「だからオレ透子早めに帰ったら喜んでくれるかなって期待して、わざと何も言わずにビックリさせようと思って帰って来たんだけど・・」
「そしたら知らない男がいて不機嫌になったの?」
「あぁ・・うん。完全に誤解して勝手に嫉妬して不安になってた・・・。うわぁ~!なんだよオレ!めちゃめちゃカッコ悪いじゃん!」
すると急に今度は大声を出して、恥ずかしそうに頭を抱えて騒いでる樹。
やっぱり、樹、弟に嫉妬してたんだ・・・。
だけど私はそんな樹が可愛くて嬉しくて。
「フフッ。嫉妬してくれてありがとう。でも安心して。弟だから。私が好きなのは樹だけ」
「うん。透子。早く会いたかった」
「私も」
やっと理解して機嫌直して笑ってくれた。
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