この作品はいかがでしたか?
46
この作品はいかがでしたか?
46
続きです、ではどうぞ♪
「うげっ…..あのクソッたれっ…..」
最悪だ…。中に出されて気持ち悪い。吐き気がする。
腰を痛めたため、上手く立てず足元がフラつく。
吐きそうになりながらも乱れた着物を綺麗に整え、
あちこちに投げ捨てられた自分の持ち物を拾い集める。
部屋からゆっくり出ていき、壁に身を押し付けながら階段を上る。
が、
「あっ」
気を抜いていたため、足を滑らせてしまった。
後ろへと落ちる感覚が、体が浮かぶような感覚で少し怖く、
思わず目をギュッと瞑る。だが、
後ろへとバランスを崩し落ちた時、誰かが走ってきた。
「危ないっ!!」
俺の耳に入ってきたその低い声と共に、
後ろから、床にぶつかる寸での所で抱き締められる。
俺を受け止めてくれた奴の腕の中は暖かく、心地よかった。
受け止めてくれた男が倒れ込み、俺の下敷きになってしまった。
「す、すまないっ….アンタ大丈夫か、?」
とっさに男の上から退き、そう声を掛けふとそいつを見た時、
自身の心臓がドクンッと鳴った気がした。一瞬、息が出来なかった。
俺よりも高身長で、顔は他の男達と比べ物にならない位に整っていた。
堀が深い顔、高い鼻筋、男らしい体格、….でも、
その男の瞳の奥は、黒曜石のように暗く、唯一映っているものがあると
するなら、それは今、彼の目の前に居る俺だけだった。
「ええ、…大丈夫です。僕の方こそすみません、
もうちょっと綺麗に、貴方を受け止めたかったな、」
そう言う彼は、少し口角を上げて俺に笑って見せた。
だが彼の瞳の中は暗いまんまで、ハイライトが一切無かった。
「そんな事ない。アンタが受け止めてくれなかったら、
俺は今頃頭を打ってた。とにかく、ほんとにすまない、迷惑をかけー…」
「い”っ…!」
謝罪の言葉を彼に言いながら立ち上がった時、足首から激痛が鳴った。
多分、さっき階段からバランスを崩し、落ちる時に足首を捻ったと思う。
そのまま激痛が鳴る片足を強く抱え込みながらしゃがむ。
ズキズキと痛み、結構痛い。
その足首の痛みに続き、さっきは散々抱かれたため、腰もズキズキと痛む。
目の前に居る男は、そんな俺を見て目を見開きながら慌てていたが、
段々と冷静になり、俺の近くに来ると、俺の太ももとふくらはぎの間に
片手を通し、もう片方の手からは背中に手を回され、
肩をギュッと掴まれる。俺は何が起こっているのかが分からず、
頭が混乱し、ただ目を見開くだけだった。
「ごめんっ…僕のせいで怪我させちゃったっ…
貴方の部屋はどこ?連れていくから…….本当にごめんね….」
頭の上からは吐息と共に、低く優しい声が聞こえた。
俺は口をはくはくさせ動かしながらも、何を言えばいいか分からず、
ただ「大丈夫…。」とだけ言って部屋の場所を彼に言うだけだった。
彼は俺の指示に従い、階段を上がっていく。
俺に気をつかっているのか、一段一段上って行くときは、
出来るだけ揺れる衝撃を減らす為にわざわざゆっくり運んでくれている。
他の遊女達からは、驚いた表情で俺達に皆目を向けている。
ヒソヒソと遊女達が何か話していたが、今の俺に聞こえる音は、
俺を姫抱きで運んでくれている男の心音と、
階段の軋む音しか聞こえなかった。
♪END♪
コメント
1件
チュキ⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝