テラーノベル
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リンクは、確かに回復していた。体の疲労は消え、 筋肉も、呼吸も、戦える状態に戻っている。
――それでも。
(……眠い)
意識の底に、
抗えない睡眠欲が沈殿していた。
本来なら、
もう起きていなければならない時間だ。
だが、「それ」は、その一瞬の油断を――
見逃す存在ではなかった。
――キィンッ
背中で、聖なる音。
同時に、
シーカーストーンから、切迫した声。
《リンク!》
ゼルダの叫び。
リンクは、跳ね起きる。
視界が完全に開くよりも早く、
何かが飛びかかってきた。
「――っ!」
エンゲルとバブルの悲鳴が重なる。
二人も、まだ完全に起ききっていない。
集中。
だが、 武器を取るには――間に合わない。
リンクは反射的に、
左腕を突き出した。
噛みつきと 衝撃。
ハートが、
一気に四分の三個、削れる。
「……っ!」
痛みはある。
だが、判断は鈍らない。
刹那。
リンクはポーチに手を突っ込み、
白銀ボコブリンの角を取り出す。
ためらいなく、
相手の頭部に突き立てた。
――だが。
血は、流れない。
生き物の反応ではない。
「……チッ」
次の瞬間、
ハイリアの盾。
――ジャストガード。
硬い衝撃音。
距離が、開く。
リンクは、
マスターソードを抜いた。
光が、教室を切り裂く。
一気に距離を詰め、
本気で切り込む。
一撃。
二撃。
三撃。
相手は倒れない。
四撃目。
そして――
五撃目。
ようやく、
それは動きを止めた。
リンクは呼吸を整え、
敵を見下ろす。
……それは、
生物とは到底呼べない姿だった。
黒鉛のような粉を、
瘴気のようにまとわせ。
千切れた肉体を、
紙のようなもので無理やり繋ぎ止めた、
歪な塊。
それは、マスターソードの力で消滅した。
「……なるほどな」
リンクは剣を振り、
付着した黒鉛を払い落とす。
その時、気づいた。
――マスターソードが、覚醒している。
光は安定し、
刃は、確かに“通った”。
リンク自身にとっては、
致命的な戦いではない。
だが。
(……これは)
背筋に、
わずかな戦慄が走る。
「コイツ、なかなかの耐久性がある」
リンクは振り返り、
二人を見る。
エンゲルも、バブルも、
震えながら立っていた。
《リンク……今のは》
『外から来た』
短く答える。
『多分、まだいる』
《……気配、消えていません》
リンクは二人に手を伸ばす。
「ついてこい」
「え……ここ、離れるの?」
「立てこもりは不利だ」
本能的な判断だった。
この場所は、
すでに“見つかっている”。
リンクは素早く、
さきほど負った傷に焼きリンゴを当て、口にする。
体力が、戻る。
教室の窓の外。
そこには――
終末世界のような闇が広がっていた。
太陽は見えない。
空は、濁ったまま。
リンクは、その景色を睨みつける。
《リンク》
ゼルダの声は、低く、揺るがない。
《この世界は……
もう、静観する段階を越えています》
『ああ』
リンクは答え、
剣を握り直した。
『だから、動く』
チャットを終える。
朝は来た。
だが、それは――
安全の始まりではなかった。
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