テラーノベル
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校舎の中を進むたび、同じ型の敵が現れた。
動きは単調。
反応も鈍い。
リンクは無駄な力を使わず、
蹴散らし、押し返し、道を切り開く。
だが。
(……キリがない)
倒しても、
しばらくすれば、また別の場所から現れる。
その時だった。
――ブツン!
校舎全体の灯りが、一斉に消えた。
非常灯も点かない。
完全な闇。
「……っ!」
バブルが息を詰め、
エンゲルが思わずリンクの服を掴む。
「で、電気……?」
「落ち着け」
リンクは即座に判断する。
ポーチから、
アカリバナの種を取り出した。
柔らかな光が灯り、
三人の足元を照らす。
「……これで進む」
だが、
数歩進んだところで、リンクは眉をひそめた。
(……おかしい)
アカリバナの光が、
わずかに濁っている。
さらに、
少し時間が経つと――
光が弱まり、枯れる。
「……時間差で、枯れてる?」
エンゲルが、不安そうに呟く。
《リンク……》
シーカーストーン越しに、ゼルダの声。
《ただの照明効果ではありません。 アカリバナが…… 何かに“侵食”されています》
「やはりな」
リンクは、すぐに新しいアカリバナを灯す。
光は点く。
だが、同じように、ゆっくりと衰えていく。
《この校舎……》
ゼルダの声に、珍しく驚きが混じる。
《建物そのものが、
異質な領域に引き込まれています》
『もう普通の校舎じゃない、か』
リンクは歩みを止めず、
ポーチの中を一瞬確認する。
「残り―― 大が298。 小が、998」
「え……そんなに?」
「持久戦には、余裕がある」
だが、
油断は一切ない。
光がある限り、
それを削ろうとする“何か”がいる。
三人は距離を詰め、
リンクを中心に進む。
アカリバナの光。
シーカーストーン越しの、姫巫女の文章。
《進みましょう。 暗闇は、 恐怖を増幅させるだけです》
リンクは短く答える。
『ああ。 照らしながら行く』
闇の中、
枯れていく光を継ぎ足しながら。
三人と、
画面の向こうの「姫巫女」は、
ゆっくりと前へ進んでいった。
暗闇の奥で、
何かが、確かに待っていることを感じながら。
同じ頃――
リンクたちが暗闇を進んでいる、その反対側。
FPE側では、
事態はすでに制御不能になっていた。
最初に異変を訴えたのは、
武器も能力も持たない生徒たちだった。
「……効いてない」
誰かが、震える声で言った。
即席の防御。
机の脚。
消火器。
どれも、
“敵”にはほとんど通じない。
倒しても、
すぐに起き上がる。
動きは鈍い。
だが、止まらない。
まるで――
壊れた人形が、目的だけを残して動いているようだった。
「……ゾンビ、みたい……」
誰かの呟きに、
答える者はいなかった。
次の瞬間、
暗がりから“何か”が伸びる。
悲鳴。
振り返った時には、
一人分の姿が、そこから消えていた。
床に残ったのは、
散らばった荷物だけ。
誰も、近づけない。
「……やめろ……」
だが、
それは始まりにすぎなかった。
教師たちも、
すぐに異常を察知する。
「……生徒が減っている」
サークルが、低く告げる。
「数が合わない」
ブルーミーが、表情を歪めた。
廊下の先。
暗闇の中で、
“それら”はうごめいている。
倒されても、
倒されても、
数が減らない。
「……想定外よ」
タヴェルが歯噛みする。
「リンクだけを処理すれば済む話じゃなかった」
グレース校長は、
無言で状況を見ていた。
――生徒たちが、
守られていない。
その事実が、
ようやく現実として突きつけられる。
「……撤退する」
校長の声は、冷えていた。
「生徒を連れて、外へ」
「でも……」
ブルーミーが言いかける。
「今は、これ以上の犠牲を出す方が問題だ」
サークルは、
すでに判断を切り替えていた。
教師たちは、生徒たちを集め、
校舎の外へ向かって動き出す。
だが――
「きゃっ……!」
後方。
隊列の端で、
また一人、姿が消えた。
振り返る者はいない。
振り返れない。
(……連れていかれた)
誰も、口にはしなかった。
校舎の奥では、
まだ、何かが動いている。
そして――
リンクたちは、
その中心へと向かっていた。