テラーノベル
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しにがみさんと話した後、またあの喫茶店に戻っていた。しにがみさんには、あんな過去があったなんて、思いもしなかった。……、やっぱり、彼のあの技術力は、彼が頑張って、勇気を出して手に入れたモノなんだ。
「立ち話もあれですし、先程のテーブルに戻りましょうか」
「あ、はい」
マオさんに奥のテーブルに誘導させられる。
「さて、紫式さんの過去はどうでしたか?」
「え、っと、」
言葉が詰まる。あんな勇気のある子の人生を俺が横取りするなんて出来ない。
「、しにがみさんが見つけたモノを、俺が横取りするなんて、できないなぁ、って思いました……」
「なるほどねぇ…。では、どうします?」
「……、まだ、他の人になること、ってできます?」
「?はい。できますけど、……」
「では、……、黒井 乃蒼さん、になりたいです。」
「…、は、?」
「え、?」
急に、クロノアさんの名前を出すと、『は?』と言われた。店員さんがそんな言葉使って良いのだろうか、??
「あ、すみま、せん。」
言葉がよろしくないと思ったのか、頭を下げる。てか、クロノアさんがどうかしたのだろうか?
「クロノアさんと、何か関係があるんですか?」
「い、いや?何でもないですよ?」
怪しいな〜!知り合いとかなのだろうか?日常組に帰ったらクロノアさんに聞いてみるか〜……、って、俺、今……、
「帰る、って、いった?」
嘘だ。俺、この世界、心の何処かで愛してるの?まだ、望みを捨てきれてない、って言うの?ここまで来たのに?
【そんなことないから】って、自分に言い聞かせてるんじゃないの?と誰かが囁く。五月蝿いなッ!!五月蝿い、五月蝿い!!
「?大丈夫ですか?」
「あ、いえ!!全然何ともありません!」
「…、黒井、さん。ですか?」
「!はい!」
少し、暗い顔をしたが、ニコッと笑顔に戻った。けれど、俺は知っている。マオさんの手が少し震えていたことを。
「少し、準備がありますので、ここで待っていてくださいね」
そう言って、店の奥へとそくささと消えていった。
……、彼がクロノアさんの名前を出して動揺したのは何だったのだろう
「トラゾー、遅くね?」
俺………、ぺいんと、兼、天乃絵斗は撮影の為、しにがみ君の創ったデータパックを入れて、マイクラを起動していた。
『遅い…、ですよね。』
『忘れてる……、ってことはないだろうし、?』
既にワールドに待機しているしにがみも、クロノアさんも同じ気持ちだ。時計を見ると、撮影時間から10分も遅刻している。トラゾーはいつも、誰よりも早く来ているイメージなんだが……、いや、現に毎回5分前にはきっちり来ている。
「なら、風邪、とか……?」
『いや、それはない。日常組では風邪引いたら連絡して、撮影日をずらす、っていうルールでしょ?』
そうだ。皆で決めたルールなんだ。風邪を引いたら、必ず連絡する。4人が揃わないで撮影はなるべく無いようにしよう、と4人で約束したのだ。
『…、不安です……、ちょっと、僕、電話してみますね?』
「分かった。ありがとう、しにがみ」
2人の切羽詰まった様子を見て、俺に向けたドッキリ、というわけではないだろう。
不安を煽るように、窓から吹いた風が俺の頬を逆撫でする。
「トラゾー、……」
最近、あいつ、元気無かったよな……、
……、なんで、気づかなかったんだよ。なんで、分かってたのに、相談してやれなかったんだよ、
誰でもない、俺に向けての怒りが込み上げてきて、思わず拳を固く握る。
「……、クソッ」
『ぺいんと……、』
クロノアさんも同じことを思っていたのか、
『俺も、リーダーのくせに、トラゾーのこと、何も分かれなかった。………、分かろうとしなかった。』
声がいつもより低い。相当落ち込んでいるのだ。
「そんな、こと、ないです。俺の、責任です。」
最初は、俺がトラゾーを入れたんだ。トラゾーの側に俺が一番一緒にいた。なのに……、ッ俺が、見て、見ぬふりをした。
1週間前トラゾーは言っていた。
【ねぇ、ぺいんと、相談したいことがあるんだけど、……】
[ん?どうしたの…、あっ、ごめん!今、ちょっとマネージャーから電話かかってきたわ!後でね!]
【ぁ……、うん!何でもない。こっちこそ、忙しい時にごめんな!冠さんからでしょ?そっち優先して】
どうして……、ッ、あの時ッ、俺は………、ッ相談に乗ってやれなかったんだろ。トラゾーはちゃんとSOSを出していた。なのに、俺が無視した。
電話なんて、編集の相談なんて、後回しで良いはずなのに、ッ、
そんなことよりも、トラゾーの精神の方が大切なのに……ッ、
「どうして……ッ」
後悔が膨らみ、目から涙が溢れて、嗚咽が出る。涙は両手の拳の上に落ち、どうすることもできない。
『ぺいんと、ぺいんとのせいだけじゃない。ッ、頼りない、リーダーでごめん。』
そんなことないですよ。頼りなくなんかない。世界一仕事が速くて、優秀なリーダーなんですよ。
そう言いたいのに嗚咽のせいでうまく喋れない。
『あのっ、すみません。追い打ちをかけるようなことを言いますけど……、』
しにがみが通話に入る。俺の心臓が大きく鳴った。
『…、トラゾーさん、電話に出ません。イナリさんにも確認しましたが、分からない、そうです。』
『…、嘘、だろ、』
ドックン 心臓が大きく跳ねた。周りの景色が心なしか白々しく見える。さっきまで走っていた車の音も、しにがみ君の声も、クロノアさんの焦ってる声も、パソコンの特有の音も全てが遠くの方で聞こえる。
え?待って、?トラゾーが、いない?どこに行ったの?なんで?
まとまらない思考が頭の中を駆け巡る。よりによって今、ものすごく頭が働かない。
「トラゾッ、消えたの?」
たった7文字、かろうじて言った。すると、2人は黙り込んで、沈黙が流れる
『…、僕、トラゾーさんの家、行ってきます!』
『俺からも、トラゾー電話にかけてみる、!』
けれど、弾かれたように2人はすぐに行動に移す。そうだ。俺も……、
「俺、トラゾーが行きそうな場所、隅から隅まで探してきます!」
俺等は、トラゾーを探し出した。
「……、戻ってこいよ。トラゾー 」
ガチャッ
俺……、トラゾー、兼、虎島緑はクロノアさんの過去を探るべく、喫茶店のドアを開けた。
「って、制服!?」
どっかの制服に着替えていて、……、多分、高校生、だと思う。そして、改めて見渡すと、学校にいた。そして、朝の騒々しさが耳に飛び込む。
「はじめまして。虎島君。今日から入る、転校生だよね?」
「あっ!?」
女の先生が俺に優しく語りかけてくれる。今回は転校生、という設定にしてくれたのか…、?マオさん、なんか、今回気合い入りすぎじゃない?
「はい。虎島です。よろしくお願いします 」
「そう。じゃ、こっちおいで」
高校の中は少し荒れていて、あまりイイところ……、ではないようだ。
そして、とある教室の前で足を止めた。
「はい。ここが教室ね。」
ガラララララッ とスライド式のドアを開けて中に入る。
俺が入ってきたからなのか、教室が少しザワめく。
「静かに、静かに!転校生を紹介します。虎島、緑君です。」
「……、ども。」
拍手が沸き起こる。なんだ、これ?高校生を演じろと??
てか、これ、漫画でお決まりの………、
「はい。虎島君の席は、窓際のあそこ。隣の子が、黒井乃蒼さんって子ね。男女比の関係で、彼処だけ男子同士だけど、2人とも静かなタイプだから、問題ないよね?」
コクリ、と頷く。
やっぱり……、漫画でおなじみのヒロインとかが、席、隣になるタイプだ………
席に移動して、椅子に座る。
「よろしくね。乃蒼さん」
「……、」
突如、とてもとても嫌な顔をされた。まるで、害虫を見るように。え?なんか、俺、失礼なことクロノアさんに言った?
こっちが戸惑っていると、ノートとペンを持ち出し、何かを勢いよく書き、突き出すように俺に見せた。
「?なになに……?」
そこには、大きな殴り書きの字で、
【俺に話しかけないでください!!】
と書かれてあった。
「………、へ?」
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