スマホの着信で目が覚める。
「げっ、もう16時じゃん」
着信を観るとあさ美からだった。
そういや、朝のメール返信してなかった。
俺は寝起きの頭が回らないまま電話に出る。
「もしもし」
「響…」
「どしたん?あさ美」
「今から会える?」
「えっ、うん…電話じゃ駄目なの?」
「いま藤村先輩と一緒?」
よく聞くと、あさ美が涙声な気がした。
「あさ美、泣いてんの?」
あさ美は黙ったまま。
しばらく、沈黙が続くと
「少しだけ話聞いて。助けて」
とあさ美が言った。
「わかった。今どこ?」
「駅前のコンビニの近く」
「ちょっと待ってて」
俺の知る限りでは、あさ美はいつも笑っていてメンタルも強い。
正直、男友達ノリで付き合える貴重な存在だった。
そのあさ美が「助けて」なんて、放っておけなかった。
事実、奏ちゃんと離れた時に一緒に居てくれたのもあさ美だし、俺は何度もあさ美の存在に救われている。
「奏ちゃん、ごめん。浮気じゃないからね」
と独り言を言うと、急いで駅前に向かった。
駅前に着くと、コンビニの前にあさ美の姿を見つけた。
「おい!」
近付いてあさ美の顔を見ると、目が赤かった。
「あさ美、どうしたんだよ」
「響、来てくれてありがとう…」
「どっか入る?」
「うん…」
俺達は近くのファミレスに入った。
夏休みに入ったせいか学生も多い。
俺とあさ美は黙ってメニューを見る。
「俺、ハンバーグ食べよ」
「え、響。そんなガッツリ食べるの!?」
「朝からなんも食べてないもん」
「あたしはドリンクバーとアイスだけにしよ…」
あさ美が笑った。
何だ、元気そうじゃん。
「そんでどしたん?」
泣いてたみたいだし、ちょっと気まずいけど俺から話を切り出す。
「響とさ、前に夏祭り行ったあとナンパされたって話したじゃん」
「あーうん、ひとりあさ美のタイプの男がいたんでしょ?」
「その人と今日会ってたの」
「良かったじゃんか」
「それがね…」
「なんだよ」
「言いづらいな…やっぱり」
「お前、俺のこと呼び出しておいて…あぁまあいいや。続けられたら続けて?」
そこでネコの配膳ロボットがハンバーグとアイスを運んでくる。
「ちょっと…俺このタイミングでハンバーグ食べていいわけ?」
あさ美が笑う。
「いいよ、あはは!やば、響といるとやっぱ面白い!」
ナイスだよ、ネコちゃんロボット。
「まぁ、先に話を聞こうか」
「響、食べな。お腹空いてるんでしょ?食べながら聞いて」
「あーぃ、めっちゃ美味そう」
「それでね、ふたりで初めて会ったんだけど」
「うん」
「…いきなり、ホテルに連れて行かされそうになって…」
口に入れようとしたハンバーグが飛び出しそうになる。
「ほ…お前…」
「そうゆうことだよね…何かあたし男見る目ないな〜って」
「ちょっと待て。だから、ナンパ野郎は危ないって言っただろうが」
「だよね、あたしバカ。」
「バカとは言わないけどさぁ、まぁ無事で良かったよ…ん?無事だったんだよな…?」
「走って逃げたよ〜」
「まぁ、ショックだよな」
「響やっぱ優しい。そのせいなんだよ」
「何が?」
「あたし焦ってたんだと思う。響のこと忘れたくて」
ん?もう吹っ切れていたわけじゃなかったの。
俺のことは。
「響が藤村先輩とうまくいってるから身を引くのは全然良かったの。だけど、だからって響のこと好きな気持ちはすぐなくなるものじゃなかったんだよね」
それは分かる。
奏ちゃんに拒否されても、奏ちゃんのこと嫌いになんてなれなかった。
「人の気持ちってそんなに上手く割り切れるもんじゃないよな、俺が言うのもなんだけど…」
「ホントにね!まぁ、あたしが悪いの。早く次の恋愛しなきゃって焦って変な男に捕まったから」
「うーん…でもごめんな。俺のせいもあるよな…。俺が奏ちゃんに失恋した時はあさ美が慰めてくれて助かったし…」
「って言いながら、よく食べんな!」
「いやぁ〜これでもいろいろ考えてんのよ?あさ美には幸せになって欲しいし、大事な友達だし」
「大事な友達かぁ。グサッとくるわぁ」
「あ、ごめん。俺のこと忘れられてないんだもんな」
「マジで他人事」
「デリカシーなくてすまん」
だって何て言えばいいんだよ。
あさ美が欲しい答えは俺には出せないんだ。
ごめん、としか言えないんだ。
「響と藤村先輩の邪魔はしないからさ…あたしが新しい恋をするまで、響をしばらく好きでいることは許される?」
「…それは、あさ美の気持ちだから自由だよ。俺がダメなんて言えることじゃない」
「ありがとう…でもさ、響が気まずかったら離れていっていいんだからね」
「あさ美が思っている以上に、俺はあさ美のこと大事な友達だと思ってんだよ」
あさ美の顔が少し赤くなった。
「も〜だからそうゆうとこぉ!何で平気でそんな女を惑わせるようなこと言えんの〜」
奏ちゃんの天然たらしがうつったか。
「まぁまぁ…奏ちゃんが嫉妬しない限りはあさ美の話も聞くし。いままで通りで俺はいいよ」
「うん、ありがと…。はー何か全部気持ち打ち明けたら楽になったかも!お腹すいたからなんか食べよー!」
あさ美、ごめんな。そしてありがとう。
入り口の方をふと見ると、見慣れた顔。
「えっ、奏ちゃん?」
「えっ、何?」
あさ美も後ろを振り向いて確認する。
「藤村先輩じゃん…しかも女の人と一緒…」
え?え?どうゆうこと?
何で奏ちゃんが知らない女と二人でいるの!?
じっと奏ちゃんを見ていたら、目が合った。
奏ちゃんも驚いた顔で俺を見ていた。
マジで何この状況。。俺の頭は混乱していた。
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