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遙かに望む南アルプスの山々を目指して走り出す。市街地を抜けて、やがて山道の入り口へ差し掛かると、否が応にも気分が盛り上がってくるようだった。
「それじゃあ行きます!」
と、アクセルをぐっと踏み込む──。
くねくねと曲がるカーブの多い峠道を、ハンドルを切りエッジを効かせて走る。
開けた窓から、涼やかな山の空気を含んだ風が吹き込むと、飽くことなくクルマを走らせていた頃の爽快な気分が呼び覚まされた。
コーナリングのハンドル捌きが上手く決まると、「すごいな……」と、助手席の彼が呟いて、
「本当に、走るのが好きなんだな……」
ほぅーっと感嘆の声を漏らした。
「懐かしくて、ちょっと気合いが入っちゃいまして……大丈夫でしたか?」
ブレーキペダルをゆっくりと踏んで、速度を徐々に緩めていく。
山頂付近には駐車スペースを兼ねた休憩場所があって、見晴らしのいい景色をベンチに座って見ている人たちが幾人かいた。
「降りてみますか?」
車を停めて、山からの一望を彼と見下ろした──。