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叩く音が聞こえて北澤がみんなを安心にさせるように
「大丈夫だみんな!ここは硬い材質出てきてるから…!入って来れない..はずだ…!」と言った。
それでも安心なんて出来やしなかった。
「うっ…うわぁぁぁ!!怪物だぁぁぁ!!」
「直樹!落ち着け!まだ入ってきた訳じゃない!」
「直樹はいつも怖がって戦わへんからなぁ。
まぁ無理もないけどな。あんな怪物に挑めるのが恐ろしいわ。」
叩く音はどんどんテンポが早くなり音が大きくなっていく。
みんなは息を潜めて扉の方をずっと見ていた。
「止まった…?」
怪物も諦めたのだろうか。叩く音が一切聞こえなくなった。
みんなは一気に緩くなって尻をつけた。
「怖かったー…加奈。あれがいつも来るのよ…こわいでしょ…」
「うん…心にくるね…」
「もう終わった…?上に忘れ物があるから取りに行っていいよね..?」
「おいちょっと待て直樹!
まだ安全かどうか分からー」
直樹がドアに触れた瞬間…
「うっ..!うわあああああっ!!」
今度は怪物の足のようなものが扉を貫通して蠢いている!!
「死にたくないよおおおお!! 」
「おいおい…冗談はよしてくれや…
この扉…意味無いちゅうんか?」
扉の空いた穴が溶けているように見える…
「あれ…溶けてない..?」
「逃げ場ないぞ!?どうする!?」
「…作戦は変更だ!俺が囮になる!だからみんなは回り込んでここから逃げるんだ!」
「でも北澤が死んじゃうよ!」
「大丈夫だ夏葉は美月を連れて行ってくれ。美月は夏葉を一番信頼してる。自分でも分かってるだろ?」
「こんな所で綺麗事言って死ぬんじゃないわよ!みんなで逃げるのよ!!」
夏葉は美月ちゃんの手を掴んだ。そして私の方に駆け寄ってきて…
「加奈も一緒に..!」
「うん..!」
女子3人が手を繋いで離れ離れにならないようにした。
でも…美月ちゃんは耳が聞こえないからあたふたしてる…
ハッと私は思いついてポケットにあるシャーペンと小さなメモ用紙を出して文字を書き出した。
このシャーペンとメモ用紙は学校の時にいつも持ち歩いている物で、よく忘れることが多いことをメモしていた。
【いっしょに行こう。】
これを美月ちゃんに見せて会話をすることが出来た。
美月ちゃんもコクンとうなづいて一緒に付いてきてくれた。
「俺は左側へ怪物をおびき寄せる!右側にみんなは逃げてくれ!それと海!直樹が腰を抜かしてるみたいだから肩を貸してやってくれ!怪物に一番鉢合わせしちまう!」
「へいへい。」
「おい立てるか直樹?」
「だただだた..ずげけ…けでててで…!! 」
「仕方ねぇヤツだなお前はいつもよ。」
「北澤。火炎瓶あるんやけどいるか?」
「あぁ…殺せたらやる…。ありがとな。喜津音。俺が死んだら..任せた。」
「フラグ立てたらあかへんで。」
「お前のその態度。羨ましいよ。」
怪物が部屋の中に入ってきた…!
「牛鬼みたいな…顔してる..」
「加奈今なんて言った?ぎゅう…え?」
「あ、いやなんでもないよ。」
「怪物め!こっちだ!」
北澤が木の棒のようなものを投げた。
この部屋は片隅に物が色々と置いてある…なにか使えるものは無いのだろうか…
「急にどうしたの加奈..?」
「あ..いやごめん…加勢できる物とか無いかなって…」
「…だったらこれとかどうかな?」
「これ…銃?」
見たところ小さい銃だ。駄菓子屋に売ってある BBガンみたいなおもちゃの感じ。
「喜津音さんが言うには生物を殺すのに適してるって確か言ってた気がするけど…使い方が分からないんだよね…そもそもこれ何?」
「…?」
「もしかして…銃知らないの…?」
「じゅう?何ができるの?」
おかしい。大抵の人なら知っているのに知らないなんて…
「詳しくは知らないけど…ここを押すと弾が出る…はず..」
「へぇー」
「カチッ」
銃声音が響き渡りみんながこちらを向いた。
「なんだ今の音!?」
「おい夏葉。なんだそれ。」
「えっ…もしかして…みんな知らない??」
「なんだこれ…」
「おいみんな!!危ない!!」
みんなが銃に夢中になっていて牛鬼が迫っていることに気が付かなかった…
「夏葉!それを貸してくれ!」
「え!うん!」
「これを使えば怪物が寄ってくるっていう道具なのか!」
またもや銃声音が響き渡った。
それに怪物が弾丸に命中し雄叫びをしながら北澤に向かって走り出した!
「火炎瓶を喰らえ!みんなの死をここで制裁だ! 」
怪物はメラメラと燃えだした…でも効いているようには見えない…
怪物は苦しむどころか北澤に襲いかかる勢いだった。
「うわっ!あっぶねぇ…!地面を壊す程の攻撃だ…当たったら一溜りもない…」
「北澤!生きて帰ってきいや!!」
「おう…!!」
(みんなは出ることが出来たか…もう俺の役目は果たした…これでやっと会いに逝けるぜ…風路(ふうじ)先輩…!!)
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風路先輩は俺の通っている高校のひとつ上の学年で野球部の先輩だった。先輩は3年生で俺は2年生。
先輩は最後の甲子園で惜しくも敗退した。
泣きながらも先輩は全てを出し尽くし真っ当に野球人生を送り終えた。
その1週間後に俺は先輩の部屋に行くことになった。先輩の家で色々と俺の野球に携わってくれるようで、自分はとてもワクワクしていた。
学校帰りに一緒に帰って先輩の家まで連れて行ってもらったのだが…
「先輩…流石に家暗すぎじゃないですか…?」
「おかしいな…いつもなら廊下の壁が見えるはずなんだけどな…」
先輩が躊躇無く家に入って行って消えてましたった。
「え??先輩??」
「暗すぎて見えないなぁ、待ってくださいよ!先輩!!」
そうして俺も暗闇の中へと入っていった…
2011年 日付不明。2人は消息を絶った。