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【プロセカ】ボカロ歌詞パロディ

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【プロセカ】ボカロ歌詞パロディ

1 - [類寧々]カゲロウデイズ / じん

♥

36

2024年08月18日

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「待って!る」


ガシャーン!


__________________


8月15日 12:38



「この猫、最近ここに住み着いてるの。」

真っ黒な猫を抱えあげて、寧々は笑う。

ここはフェニランの近くの公園。近くに遊園地があるから、ここにはあまり人が来ないんだ。

人は来ないけど、蝉の声がとてもうるさい。

ただでさえこんなにも暑いのに、蝉の声が体感温度をさらに上げさせる。

「私さ、夏嫌いなんだよね。」

彼女は切なさそうに下を向いて呟いた。目の先には汚れ一つ無い真っ黒な猫。

「まぁ、僕も暑いのは好きじゃないねぇ」

僕からも寧々からも、汗が滝のように湧く。

「あっつい………」

汗水たらす寧々も、とても可愛かった。


「ねぇ、寧々。」

「ん?なに?」

そんな彼女に、今日僕は想いを伝えることにした。ふぅ……と息を整える。

「僕ね、寧々のことが…ぃ……ょ。」

「……え?」

僕が、大事なことを伝えようとしたその瞬間、蝉の声が馬鹿みたいに大きくなって、僕の声をかき消した。

「ごめん……聞こえなかった。もう一回」

寧々は申し訳無さそうに謝った。その刹那、真っ黒な猫は腕の中から飛び出す。

「えっ……ちょっと待って!」

寧々は急いで立ち上がって、猫を追いかける。スカートがひらりと舞い、去っていく。

僕も彼女のあとを追った。


「ん〜〜何処行ったんだろう。」

「辺りを探しても見当たらないね。」

寧々は心底残念そうな顔をした。その顔でさえ、僕には美しく思えた。

「あっ!あそこ!」

寧々が目を輝かせ、指を指したと思うと次の瞬間には一目散にかけていった。



待って


信号


点滅してる




「待って!寧々!」


やっと声が出た頃には、寧々はもう道路にいた。


__バっと通ったトラックが君を轢きずって鳴き叫ぶ


僕は、ただ見ていることしかできなかった。

大好きな寧々の匂いと、残酷な紅い液体の匂いが混ざり合い、噎せ返る。

寧々が探していた黒猫は、今は真っ赤な猫に変わっていた。

そんな赤猫は僕をみて嘲笑っているように見えた。

何も知らない蝉はさっきと変わらず今もミーンミーンと叫んでいる。

「う、う、うわああああああ!!」

僕の汚い嗚咽は蝉の声の中に吸い込まれて消えてく。

それと同時に僕の意識も陽炎の中に吸い込まれていった。


__________________


「え……夢?」

起きるとそこは、僕の部屋だった。急いで時計を見る。


8月14日 23:58


「タイム……スリップ?」


現実的に考えてそんなこと、起こるはずがない。でも………

「やけに、蝉の声が鮮明に記憶に残ってるな。」


__________________


8月15日 12:18


「では、解散!」

「類、公園行こう。」

座長の元気な解散の合図と共に、寧々が僕に声をかけてきた。

「寧々、もう今日は帰ろうか。」

夢が、正夢にならないように。

「え、あ、うん。」

寧々は驚きを隠せない、というように口をあんぐりと開けていた。


「あっついねぇ……」

今日も僕らは滝のように汗を流していた。

「こんな日に公園なんて行ってたら死んでたかも。」

君はもう既に一回死んでしまっているから、その何気ない言葉にびっくりするくらい引っかかった。

路地裏から大きな通りに出る。

「あっつう……凄く暑い。天気良すぎ……」

「そうだねぇ……」

そう言って僕らは上を見上げる、雲一つない青空を想像して。

でもそこには

「類っ!」

「………寧々っ!?」


__落下してきた鉄柱が君を貫いて突き刺さる


ギャーギャーと周りの人が吠えて、向かいの家の風鈴がチリンとなって……蝉が泣き続けて……

でも僕には周りの木々に吸い込まれていったようになにも聞こえなかった。

「え……?寧々……?」

寧々は自らを犠牲にして僕を助けた。

そんな彼女は、微かに笑っているような気がした。

「寧々?寧々!」

もう寧々は返事をしない。

「寧々!寧々!」

わかっているのに、僕は馬鹿みたいに返事を求めるんだ。

「なんで、なんで!なんでなの!?」

僕の悲痛な問いかけも、僕の意識も、またあの陽炎に吸い込まれていったんだ。


_________________


「はっ!!」

また夜中に起きる。そして時計を見る。そこに表示されるのは決まって

「8月14日、23時58分。」

何回、何十回……いいや…、何千回と見てきた。

この時間も……寧々の最期も。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

こんな、こんなおとぎ話の終わりなんて一つしかない。


「今日、僕は死ぬよ。」


_________________


8月15日 12:39


「ねぇ、寧々。」

「ん?なに?」

騒がしい蝉の叫び声。僕は、それにかき消されないように、間をおいて、大きな声で彼女に伝えた。

「僕ね、寧々のことが。」

「大好きだよ。」

「……え?」

そして、黒猫が腕の中から飛び出す。何度もみた光景だ。

「えっ……ちょっと待って!」

そして、僕と最愛の彼女は、黒猫を追いかけていった。


「ん〜〜何処行ったんだろう。」

「辺りを探しても見当たらないね。」

そしてまた、心底残念そうな顔を。

そして、次の瞬きのあとには、寧々はキラキラと顔を輝かせる。僕の大好きで、それよりももっと大っ嫌いな終わりを告げる笑顔。

いつもの方向へ指を指し、点滅信号へ駆け出す。

「待って!寧々!」

僕は寧々を助けるため、初めて走り出したんだ。


__バっと押しのけ飛び込んだ瞬間ラックにぶち当たる


いつも寧々がしてくれてたみたいに。

痛いはずが、心地良い。

寧々は、目を見開いていた。いつも僕がしてた表情。

今日の血しぶきは、いつもより紅くて、鉄臭かった。寧々の艷やかな瞳には、僕の軋んだ体がうつしだされている。

赤猫は、文句ありげにこの場を去っていった。

「え……類?なんでっ……」

泣き叫ぶ寧々に僕は____


思いっきり笑ってやった。


寧々も釣られたように笑う。僕の、どうしようもないほどに大好きな笑顔。

「大好きだよ、類。」

僕の意識が朦朧としだす。僕の永遠に続いた最期の記憶は、最愛の寧々の笑顔だった………

深い闇の中に吸い込まれていく意識は、もう戻ることなんてなかった。


__________________


8月15日 8:35


「まただめだったよ……」

私はそう呟く。脳裏には私を庇って死んでいった、最愛の幼馴染がうつっていた。

「ねぇ、また類死んじゃった。」

私は話しかける。少しだけ紅く染まった黒猫を撫でながら………


_________________


これはカゲロウだけが知っている、神代類と草薙寧々の終わらない最期の夏の日の話である。

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