※前置き↓
文中に出てくる、人の名前は、書いているうちの偶然の思いつきです。
不快に思われる方がいらっしゃいましたら、
いつでも構いませんので、仰ってくださいな☺️
すぐに変えますので。
よろしくお願いします🙏
約束した日から、
クリスマスまでは2週間くらい。
会う時間は細かく決めなかったけれど、
夕方くらいと約束した。
その日から、僕はずっと、
心ここにあらず、という感じだった。
こんな楽しい恋は、生まれて初めてだった。
生まれて初めて、
毎日毎日、何度も彼と会う日までを数えて。
生まれて初めて、
会えたらどんな話をしようかって想像して胸を弾ませて。
生まれて初めて、
クリスマスだから何かいい物を渡そうかって、好きな人へのプレゼントを選ぶ楽しさを知って。
その2週間は間違いなく、今までの僕の人生の中のどんなイベントよりも幸せだった。
会えていないのに、
ずっと彼のことばかり考えて、
ラブソングに共感するってこういう事なんだって、ずっと理解できなかったことがようやく分かった気がして、
勝手に1人でくすぐったい気持ちになった。
でも、
僕の小さなミスで。
最後の最後に、
やってはいけないことをしてしまって。
その、
幸せなはずだったクリスマスは、
訪れることは無かった。
それは、
約束の日の、5日前くらいの出来事。
その日、それまで会うことのなかったグクと、
会うはずがないと思っていた場所で、
偶然出会ったのだ。
いや、
出会ってしまった、が正しいか。
いつも通りの夜の帰り道。
クリスマスが近づくせいか、
かたや、年末で忙しく、こういう浮かれた場所で安らぎを求める人が多いせいか、
なんとなくいつもより危うい雰囲気が漂い、
いつもより明るくネオンが光る、夜の街。
人が多いこの遊楽街は、
むさ苦しいほどのきつい香水の匂いに、
冬なのに、何故かねっとりとした甘ったるい熱さを伴っている。
そこに彼はいた。
あの黒いパーカー姿でもなかったし、
僕と話している時みたいなぶっきらぼうな感じでもなかった。
だからといって、
泣いてる僕に見せてくれたような、
優しい雰囲気でもない。
気取った笑顔をして、数人の男たちと、
そして、派手な格好をした女の子たちと、
グクは楽しそうに話しながら、歩いていた。
その輪の中にいる男たちは皆、整った顔をしていたが、
グクは、傍から見ていても格別だった。
背が高くて、顔が小さくて
黒い皮ジャンに黒のぴったりとしたスキニー。
髪は綺麗にセットされていて、
前髪が少し目にかかっているのがたまらなく
魅力的だった。
そんな姿で、
女の子たちに自然にスキンシップをしながら、時折いたずらな笑みを浮かべてみせる。
そんな彼に、
女の子たちも、
そして男たちをも、
惹かれているように見えた。
最初はまさかと思った。
見間違いだと疑った。
だいたい僕は、暗いところでしか彼の顔を見た事がない。
それもまだ数回。
あんな素敵に整えた姿は見たこともない。
でも、それがグクだと気づいたのは、
すれ違いざまに僕と目が合った瞬間、
明らかに一瞬、顔を泣きそうに歪ませたのだ。
その僅か刹那にかち合ったその瞳は、
間違いなく彼のものだった。
だから気づいた。
これは神様のいたずらだと思った。
だって、いつもだったらできるだけ下を向いて、夜の住人たちとはできるだけ目を合わせないようにしている僕が、
何故かふと顔を上げた時に彼を見つけ、
視線がぶつかってしまったのだから。
🐣「グク!!」
僕は、離れていきそうな背中に、思わず声をかけてしまった。
ビクンと肩を震わせた彼より先に、
周りの派手な格好の男女が立ち止まってこちらを振り向く。
ただ、ずっと会いたかった人と少し話をしたいという、衝動的な行動だったが、
その何個もの鋭い視線に見据えられると
ゾクッと怯えが走った。
👩🦰「だーれ?
この冴えないスーツの真面目ちゃん。
グク、呼ばれてるけど?」
なかでも1番グクと距離が近い、
キラキラの派手な服に、綺麗な金髪の女性が、
邪魔されたと言わんばかりに尖った声を出す。
一方のグクはこちらに身体を向けようともしなかった。
でも、ちらりと一瞬、
この場の誰よりもきつく鋭い視線をこちらに送ったかと思うと、
🐰「こんな野良猫みたいな冴えない奴、俺が知ってる訳無いだろ。
楽しんでるんだから話しかけんな。
ほら、無視すればいいから、
早く行くぞ、
金持ちお嬢さんたちを、楽しませてあげなきゃ、、ね?ソアさんㅎ」
その、ソアと呼ばれた金髪の女性の、むき出しの肩をぐいと抱いてみせるグク。
🐣「え、、」
絶句して、立ち尽くす。
ホスト。
そんな言葉が脳裏によぎった。
👩🦰「だよねぇ、グク冷たいなぁㅎㅎ
でもそゆとこもすき♡
確かに久しぶりだもんねっ
今日はなにしてもらおっかなㅎ」
🐰「会えてなかった分、なんでもしてやるよㅎ」
👩🦰「ほんと?!やったあっ」
じゃあさ〜、と歩き出した彼らは、もう僕のことなど忘れ去っていた。
ぽつんと一人残されたまま、
泣きそうになるのを必死で堪える。
🐣「グク、、、」
諦めて、とぼとぼと家に帰ろうとした。
でも、
ずっと会いたかった彼にあからさまに拒絶されて、胸がいっぱいいっぱいで苦しい。
こんなに会いたかったのにって、
こんなにずっと楽しみにしてたのにって、。
落ち込んだ心はどうしようもなくて、
あの子猫に相手してもらおうかと、いつものコンビニに寄ったが、その姿はなかった。
代わりにいたのはガラの悪い暴走族たち。
そこでもまた睨みつけられ、
ただでさえ虚しさが溢れてこぼれ落ちそうだった心が、
怯えでさらにぎゅっと締め付けられる。
コンビニから逃げるように去りながら、
堪えられず涙が零れ出していた。
僕、、ぼく、、間違えちゃったかもしれない、、、
嫌われちゃったかもしれない、、泣
その当たって欲しくない予感は、
最終的に、当たってしまった訳だった。
グクは、クリスマスの日、
僕のところに来てくれなかったから。
その日は仔猫が来てくれて、
ぼーっと相手をしながら
ずっと待っていたけれど、
仔猫が僕に飽きて帰ってしまってからも、
すっかり夜になってからも、
グクの姿が現れることはなかった。
どうせ明日も休みを取ったし、
日を跨いでもいいからとことん待とうと
寒い中、コートを引き寄せて小さくうずくまっていたら
🙍♂️「あのー、、」
急に声をかけられて飛び起きる。
🐣「は、はいっ、?」
それは、コンビニの店員らしき人だった。
🙍♂️「前もここにいましたよねー。普通の日なら別にいいんですけど、
今日クリスマスだからいつもより来る人が多いんですよー。だからこんなとこに居られると、警察呼ばれかねないんで、、」
心底迷惑そうな声。
🐣「す、すみませんっ、、、」
パッと立ち上がり、お辞儀をして
変な人を見るような目の店員さんから、
慌てて離れた。
また泣きそうになる。
今日が特別だなんて僕がいちばん知っていた。
行くあてもなくて、
家に戻ろうとするが、
のろのろと全然足が進んでくれない。
だって彼はこの道を知っている。
その事実が、まだもしかしたら、、
という僅かな期待を産んで、
どんどん歩くスピードは落ちていった。
でも、
後ろから声をかけられることも
肩を叩いてくれることもないまま、
普段より何倍も時間がかかって家に着き、
いつもより楽しい気持ちで、
特別なことをするはずのクリスマスに
僕は、いつもより沈んだ気持ちで、
いつも通りにベッドに横になって、
後悔と、寂しさで
涙を流しながら、
長い長い夜を越した。
コメント
15件
私ンチ、捨て猫を保護して家族にしてるから、めっちゃ白ネコさんが気になってるのです。願わくばネコさん諸共しあわせな結末になりますように。
.˚‧º·(ฅдฅ。)‧º·˚..˚‧º·(ฅдฅ。)‧º·˚.🐰お仕事中だったからぁ、、踏み込んで欲しくなかったのはわかるけど、、、(╥﹏╥)🐣苦しすぎるよね(இдஇ )
え、読んでたら心臓がズキってした… グクなんかあったの。? ジミン悲しんでるよ…。 でもグクにも事情があるんだよね… ちくわには分かるよ でもね、、、 ダメだ心臓、胸どっちかがズキってする… 限界が涙より心臓、胸どっちかが 痛くなる。。 涙も出るけど。 グククリスマス約束したのに、、 仲直りできるといいね。 主さん最高です。心臓、胸どっちかがズキってします。読んでたら痛いです。