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〚Part9〛愛おしい
見つめ合うひとりと一匹はにらめっこをしている
「お願いだから降りて欲しい」
”にゃぁぉ”
クラピカは何分も時間をかけて猫と話し合いをしているが猫は一向に自分との交渉に応じてはくれない
「にゃぁじゃなくてそこから移動して欲しいと私はお願いしているのだよ」
マフィアの若頭で交渉に慣れているクラピカも猫相手には交渉が難航してしまうようだ、明日の帰宅に向けて荷造りをしようと自分の衣服を含めた洗濯物を荷物に詰めようとしているのだが、猫が上に座ってしまいどいてくれない。無理やり抱きあげようとすると猫パンチを繰り出された後に手をカプッと噛まれてしまうのだ。試しに念能力を発動して具現化した鎖のダウジングで遊んでやって気を逸らそうと試みたが、遊んでくれるが猫は一切そこから動こうとはしなかった
「準備が進まないのだよ」
猫は座るだけではなく、ごろりと寝る体制に入ってしまった
「寝ちゃだめだって」
交渉は失敗に終わる、クラピカは諦めて猫の腹部のモフモフを思う存分堪能することにして顔を猫の毛並みに埋めて独特の猫の匂いを肺いっぱいに嗅ぐことにした
「置いて行けばいいじゃないの、クラピカ」
「お母さんまで」
後ろから声をかけられるとレオリオの母がエプロンで手を拭きながらクラピカと猫の元に来ている
「この子もクラピカに帰っちゃやだよって言ってるのね」
母が来たので猫は甘えた声をあげてなでなでをおねだりしている
「必要最低限だけ持って帰ってあとはすべて置いて行けばいいじゃない、そうしたら次からは荷物が少なくうちに来れるでしょ?あ、そうだ渡したいものがあるのよ」
パタパタとレオリオの母は自室に行くと「レオリオ、キリがついたら下にきてちょうだい」と声をかけている
しばらくしてからレオリオが「チードルはやっぱり鬼教官だ」とげんなりした顔で降りてきたので「チードルもきっと期待しているのだから」と励ましておいた
「クラピカ、これ開けてみて」
レオリオの母から手渡された包みを受け取ると「なんだぁ」とレオリオも興味深そうにクラピカの肩に手を回して覗き込んでいる、丁寧に包装を開けると中からチャリンと鍵が出てきた
パラディナイト家の飼い猫の写真入りストラップのつけられたひとつの鍵
「これは」
その鍵には見覚えのあるものだ、なぜならこれはパラディナイト家に滞在する間に見慣れた形のものだったから
「この鍵をクラピカにあげるから、いつでも好きな時に猫に会いに帰っておいで」
頭を優しくレオリオの母に撫でられて抱きしめられる
「お母さんっ」
「だってクラピカもうちの子になるんだもの、合鍵が無かったら好きな時に帰宅できないでしょ?」
「本当にもらっていいのか?」
「もちろんよ、家族なんだから」
「嬉しい・・・ありがとう・・・」
嬉しさで緋の目を潤ませるクラピカをレオリオがそっと優しく後ろから抱きしめて「俺の部屋を使っていいからな」と優しく声をかける
「クラピカの服はそのまま全部棚に片づけておくから手ぶらで帰ってこれるわね」
「それなら会社帰りに飛行船のチケットさえ押さえればすぐ帰れるな」
レオリオの愛している可愛い笑顔で母に抱きつくクラピカの足元に猫も擦り寄ってきてクラピカに身体を擦りつけていた
提出書類の最終確認をして証人欄に母のサインを記入してからもうひとり分の証人を貰うためにペットショップへと出かけることをする、せっかくなのでクラピカはヨークシンの時に着ていたクルタの民族衣装を着て出かけることに決めたようだ、「お前はやっぱりクルタ服が一番似合うよ、スーツもかっこいいけどな」と言ったレオリオもしっかりいつものスーツ姿だ
「君のスーツ姿もなんだか久しぶりに見る気がする」
「クラピカ、俺の幼馴染にお前の事を紹介してもいいよな?」
「あぁ、ぜひ私も会ってみたい」
ペットショップにつくと昨日も会った夫人の横に年若い青年が立っている
「紹介するぜクラピカ、俺の幼馴染だ」
「レオリオのパートナーのこと話には聞いていたけどすげぇ美人だな」
夫人が「まさかレオリオの婚姻届の証人になれる日が来るなんてねぇ」とハンカチで目元を押さえながらサインしてくれて、「お前ら幸せになれよ!」と息子はレオリオとクラピカの肩を同時に叩いてくれた
それから役所で手続きをしていき「クラピカ=パラディナイトさんの情報更新には少し時間がかかりますので何か証明書を取得する際は最寄りのお役所でお願いします」とカードを返却された事で入籍は終了した
「私もパラディナイトになれたんだな」
とクラピカが言うとレオリオがそっと手を繋いでくれる
「クラピカ、俺の大切なダチにも報告しに行っていいか?」
「もちろん」
以前も来た丘の上の墓地のひとつで足を止めるとレオリオは「改めて俺のヨメさんになったクラピカだ」と亡き親友に報告する、クラピカは「クラピカ=パラディナイトです」と自己紹介してから祈りを捧げた
「実はもう一か所行っておきたいところがあるんだ」というレオリオに手を引かれて見慣れない景色の街並みを歩いていく
「やっぱりあの人にもお前の事を紹介しておきたくて」
「どんな人か?」と問いかける前に目的地に到着したようでレオリオは足を止めてサングラスを外してから庭先で作業をしている女性に声をかける
「こんにちは」
女性は振り向くと「レオリオ君?」と手を止めて来てくれた
「クラピカ、俺の親友の母ちゃんだ」
そうかレオリオは私を先程の地で眠りについている親友の母親に紹介したかったのかとわかると「初めましてクラピカ=パラディナイトと申します、先程レオリオと入籍した者です」と自己紹介する、レオリオの結婚に女性はとても喜んでくれて「おめでとう、幸せになってね。あの子もきっと喜んでいるよ」と言ってくれた。そしてレオリオは医者になるために医大で学んでいることなどを話してからその場をあとにした
「レオリオ、私も君の親友に今後も挨拶してもいいかな?」
「アイツもきっと喜んでくれるよ」
それから二人はレオリオが親友とよく遊んでいたという秘密の場所に連れてきてもらった
「足元気をつけろよ」
スカート状の衣装のクラピカを気づかってレオリオはゆっくりと歩いてくれて登りきった先からは広大な港町を一望することができた
「美しい景色だな」
「だろ?」
レオリオはクラピカを優しく抱きしめる
「明日からまた離ればなれだな、たまにはメール返せよ?電話も」
「努力はする」
「しっかり食事は食べて睡眠は取れよ?」
「あまりにも酷い生活をしていたらセンリツから君に連絡が行きそうだ」
「なかなか会えないかもしれないけど俺頑張るから」
「きっとお前なら立派な医者になれるさ」
「次にまとまった休暇が取れる時が来たら一緒にくじら島に行ってゴンに会いに行こう、そんでキルアとアルカちゃんも呼ぼうぜ」
「そうだな・・・私もゴンとキルアに会いたいのだよ」
「浮気すんなよ、クラピカ」
「その言葉をそっくり返そうか、レオリオ」
二人は見つめ合って笑い合うと軽く触れるだけのキスをする
「なぁ、クルタの結婚式ってどうやるんだ?」
「それが私はそういった光景を見たことが無いのだ、父様はいかなる時も喜びや悲しみを共に分かち合うことを誓うと話していて、母様はある日突然求婚されたと言っていたな。もっと詳しく聞いておけばよかった」
レオリオはクラピカを優しく抱き寄せると「もう一度お前とクルタの地にも行ってみたいし、お前の父ちゃんと母ちゃんと親友にも結婚の挨拶をしないといけないな」と言ってくれた
「レオリオ、ありがとう」
レオリオにしゃがんでもらうようにお願いすると、今度はクラピカの方からゆっくりと口づけた