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#カラフルピーチ
Ayaka0826
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#カラフルピーチ
しぁ@krpt
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第43話 灯りがともる前に
――十二月二十四日、クリスマスイブ。
朝の空気は、鼻の奥がつんとするくらい冷たかった。
吐いた息が、白くほどけて消えていく。
今日は、明日のクリスマスパーティーの準備日。
場所は、もちろんたっつんの家だ。
💚「たっつーーん! 来たよーー!!」
玄関の前で叫んだあと、インターホンを押す。
ピンポン、ピンポン、ピンポン!!
💛「連打すんな!! 聞こえとるわ!!」
扉が開いて、たっつんが顔を出した。
💚「おはよー!」
💛「おはよ……って、お前、それ何持っとるん?」
たっつんの視線が、俺の両手に向く。
俺が抱えているのは、大きな段ボール箱。
💚「ツリー! うちの押し入れにあったやつ!」
💛「へー。そんなんあったんや。」
💚「うん! ついでに部屋も片付けてきた!」
ドヤっ!!
💛「それ、押し込んだだけやろ」
💚「……なんで分かるの!?」
💛「何年の付き合いやと思っとんねん」
ぐうの音も出ない。
でも、ちゃんとツリーは持ってきたんだから、褒めてほしい。
💚「ほら、入れて入れて! 重い!」
💛「はいはい」
たっつんは笑いながら、扉を大きく開けてくれた。
家の中は、あったかい。
ふわっと漂う、いつものたっつんの家のにおい。
それだけで、なんだかほっとした。
リビングは片付いていて、真ん中に広いスペースがあけられている。
💚「うわ、もう場所空いてる」
💛「飾り付けの動線も考えて、家具ちょっとずらしといた」
💚「さすがすぎる……」
💛「お前が何かやらかす前提で、広めに取ってあるんやで!」
💚「ひどい!!」
そんなやりとりをしていると、インターホンが鳴った。
🩷「おじゃまします!」
❤️「おじゃましまーす!」
のあちゃんとゆあんくんが、そろって入ってくる。
のあちゃんは、両手にぱんぱんに膨らんだエコバッグ。
ゆあんくんは、少し眠そうな顔で、スポーツバッグを肩にかけていた。
💚「おー! 二人とも、いらっしゃい!」
💛「なんでお前が言うねん」
❤️「ごめん、ちょっと遅くなったー。朝練が長引いて」
💛「冬休みやのに、ほんまよう動くな」
❤️「大会前だからねー。年明けすぐに大会があるの。」
🩷「ゆあんくん、大丈夫ですか? 眠そうですけど……」
❤️「平気平気! パーティーの準備、めちゃくちゃ楽しみにしてたんだから!」
ゆあんくんは、ぐっと親指を立てて笑った。
……本当に平気ならいいんだけど。
ちらっと、たっつんと目が合う。
たっつんも、同じことを思っていたみたいだ。
小さく頷いた。
何かあったら、すぐ気づけるようにしておこう。
💛「ほな、役割分担いくで」
たっつんが、ノートを広げた。
ページには、びっしりと予定が書き込まれている。
もちろん、赤ペンで。
💚「……そのペン、ほんとどこから出してくるの」
💛「常備してます」
💚「なんで!?」
💛「便利やから」
💛「まずのあちゃんとゆあんくんで、ケーキ」
🩷「はい! 任せてください!」
❤️「俺、頑張る! ……足引っ張らないように」
🩷「大丈夫ですよ。一緒に作りましょう!」
💛「次に俺は、ダイニングで料理の準備と、全体の進行管理ね」
💚「で、俺が飾り付け!」
💛「……ほんまに任せて大丈夫なんか」
💚「大丈夫って言ってるじゃん!」
ほんと失礼なんだから!
💛「嫌な予感しかせーへんけど……ほな、頼むで」
💚「任せて!!」
俺は胸を張った。
ツリーに、ガーランドに、電飾に。
ぺっぺってするだけだ、たぶん!
***
――三十分後。
💚「…………。」
俺は、リビングの真ん中で固まっていた。
体に、電飾が巻きついている。
右腕にも、左足にも、ぐるぐると。
💚「……なんで?」
俺はただ、電飾をツリーに巻こうとしただけなんだけど。
どこでどう絡まったのか、全然分からない。
動こうとすると、余計にきつくなる。
そんなときこそ俺のヒーローの出番。
💚「たっつーーん! 助けてー!!」
ヒーローを悪用させてもらおう。
キッチンの方から、たっつんが顔を出した。
💛「どうしたんやー……って、何しとんねん…」
たっつんが俺を見て呆れたように笑う。
💚「分かんない! 気づいたらこうなってた!」
💛「どうやったらそうなるんや……」
たっつんは、盛大にため息をついた。
でも、そのあと。
💛「……動くなよ。ほどくから」
そう言って、俺の前に来てしゃがみ込んだ。
たっつんの手が、電飾のコードを一本ずつ丁寧にほどいていく。
距離が近い。
指先が、時々、腕に触れる。
――静か。
キッチンから微かにのあちゃんとゆあんくんの声が聞こえてくるだけ。
💚「…………。」
💛「ここ引っかかっとる。ちょっと腕上げて」
💚「う、うん」
💛「そのまま動かんといてな」
たっつんの視線は、コードだけを見ている。
真剣な横顔。
まつげが長い。
……ほどくの、うまいなぁ。
って、なんでこんなに見てるんだ、俺。
いやいや、コードを見てるだけ。
💛「はい、終わり」
💚「……ありがとう」
💛「ええけど。ほんまに気ぃつけてな?」
💚「はい……」
たっつんは、ほどけた電飾を俺の手に渡した。
💛「ほら、ここはこうやって巻くの。上から下に、ゆっくり」
💚「こう?」
💛「そう。ええ感じやん」
たっつんが笑う。
褒められた。
それだけで、やる気が出る。
俺は教えてもらった通りに、ツリーに電飾を巻いていった。
もう一回絡まったら、今度は自分で何とかしよう。
たぶん、無理だけど。
***
💚「よし! あとは、てっぺんの星だけ!」
俺は、金色の星を手に取った。
あの日、お店で選んだ飾りだ。
ツリーの一番上にこれをつけたら完成。
💛「届く?」
💚「脚立使えばいけるでしょ!」
リビングの隅にあった脚立を持ってきて、ツリーの横に立てた。
一段、二段。
登っていくと、視界が高くなる。
💚「おお、高ーい!」
💛「あんまり調子乗んなよ〜」
💚「分かってるって!」
下から、たっつんの声が聞こえた。
視線を下ろすと、たっつんが脚立の足元を、両手でしっかり押さえていた。
💚「……あ」
💛「なんや」
💚「ううん、なんでもない」
ありがとうって言いかけて、やめた。
なんだか、改めて言うのが恥ずかしかったから。
💚「……よし、つけるよ」
腕を伸ばして、星をツリーの先端にかぶせた。
ぴったり、はまる。
💚「できたー!!」
そう叫んで、体を動かした、その瞬間。
ぐらっ。
💚「うわぁっ!?」
脚立が揺れた。
足が滑る。
体が、傾いて――。
💛「じゃぱぱ!!」
視界が、ぐるっと回った。
ドサッ。
……痛く、ない。
恐る恐る、目を開ける。
目の前には、たっつんの顔があった。
近い。
すごく近い。
俺の体は、たっつんの上に覆いかぶさるようになっていた。
💛「……っ、お前……」
💚「…ごめん!!」
💛「ほんまに、気ぃつけてって言うたやん……」
たっつんの声が、震えていた。
怒ってる、というより。
息が、切れている。
心臓がばくばく鳴っているのが、触れた胸から伝わってきた。
……あれ。
これ、たっつんの鼓動?
それとも、俺の?
💚「……ごめん」
💛「怪我しとらん?」
💚「大丈夫……たっつんは?」
💛「…………大丈夫」
たっつんは、ゆっくりと俺を離した。
目が、合わない。
耳が、真っ赤だった。
💚「たっつん?」
💛「……なんでもない! ほら、立てるか!」
💚「うん」
立ち上がって、もう一度ツリーを見る。
てっぺんには、金色の星がちゃんと光っていた。
あー、びっくりした。
まだ、心臓がうるさい。
……脚立から落ちそうになったんだからびっくりした。
きっとそれだけ。
***
キッチンからは、甘い匂いが漂ってきていた。
スポンジが焼ける、いい匂い。
💚「……いい匂い!」
キッチンの入口から中を覗く。
のあちゃんは、真剣な顔でボウルの中のクリームを混ぜていた。
その横で、ゆあんくんが、いちごを一つ一つ丁寧に洗っている。
🩷「あ、じゃぱぱさん。飾り付けは終わったんですか?」
💚「終わったよ! 今ね、味見に……」
🩷「だめです」
💚「まだ何も言ってない!」
🩷「顔に書いてあります。まだ完成してませんよ?」
💚「うぅ……」
……前にも、こんなやりとりをしたような。
❤️「じゃぱぱ、いちご一個ならあげてもいいよ」
💚「ほんと!?」
🩷「ゆあんくん!?」
❤️「冗談冗談! はい、のあさんに怒られるからダメー」
💚「ゆあんくんまで!?」
のあちゃんが、ふふっと笑った。
🩷「でも、楽しみにしててください!今日はいつもより、気合い入ってますから」
💚「どうして?」
🩷「だって、みんなで食べるケーキですから」
のあちゃんは、少しだけ頬を染めて、そう言った。
その言葉に、俺はのあちゃんとお菓子を作ったときを思い出した。
桜が舞う季節。
――食べる人を想って作ったお菓子は、前よりもずっと、おいしかった。
💚「……うん。絶対おいしいね」
🩷「はい!」
のあちゃんの笑顔は、あのときのまま、まっすぐだった。
***
夕方。
料理の準備も、ケーキの準備も、飾り付けも、ひと通り終わった。
あとは、明日のクリスマスを待つだけ。
……その前に。
俺には、一つだけ、やることが残っていた。
💚「……どこに隠そう」
俺は、リビングの隅で、小さな袋を握りしめていた。
中には、星のキーホルダー。
たっつんへのプレゼントだ。
今日のうちに、どこかに隠しておかないと。
明日、渡すときに、ちゃんと驚かせたいから。
💚「…………。」
……ソファの裏?
いや、すぐ見つかる。
本棚の隙間?
掃除のときにバレそう。
そんなことを考えていると。
💛「……っ!」
廊下の方から、たっつんが出てきた。
背中に、何かを隠している。
💚「…………。」
💛「…………。」
お互い、固まる。
💚「……何、隠してるの?」
💛「か、隠してへん!」
💚「背中に何か持ってるじゃん」
💛「持ってへん!! お前こそ、何隠しとんねん!」
💚「俺も隠してない!!」
二人とも、背中に手を回したまま、じりじりと後ずさる。
その様子を、キッチンの入口から、ゆあんくんが見ていた。
❤️「…………ぶっ」
💚「ゆあんくん!?」
❤️「いや、お前ら……ふふっ、ほんと、息ぴったりすぎて」
💛「うるさいわ!」
🩷「どうしたんですか?」
のあちゃんまで、ひょっこり顔を出す。
❤️「いやー、二人とも、プレゼントを隠す場所探してるみたいで」
💚「ちょっ、ゆあんくん!」
💛「言うなや!!」
🩷「ふふふっ」
のあちゃんが、笑いを堪えている。
🩷「じゃあ、私が預かりましょうか? 明日までちゃんと守りますよ」
💚「ほんと!?」
💛「……まじ!?」
🩷「はい。ただし、中身は見ませんから、安心してください」
そう言って、のあちゃんは、両手を差し出した。
俺とたっつんは、顔を見合わせる。
💚「……じゃあ」
💛「……ありがと」
二つの小さな袋が、のあちゃんの手の上に並んだ。
……ほとんど同じ大きさの袋。
のあちゃんは、それをじっと見て、小さく笑った。
🩷「……ふふ。明日が、楽しみですねー」
***
流れる雲のように時間が進む。
日が暮れて、部屋の中が薄暗くなってきた。
窓の向こうで滲む街の灯が見える。
💛「ほな、最後や」
たっつんが、コンセントを手に取った。
💛「点けるで」
💚「うん!」
❤️「ドキドキする!」
🩷「楽しみですね」
カチッ。
――パァッ。
ツリーが、光った。
赤、黄色、緑、ピンク。
小さな電飾が、いっせいにきらめき出す。
てっぺんの金色の星が、いちばん明るく輝いていた。
💚「…………」
🩷「わぁ……」
❤️「すげー……!」
部屋の電気を消して、四人でツリーの前に並ぶ。
色とりどりの光が、みんなの顔をほんのり照らしていた。
💚「……きれい」
思わず、そう呟いていた。
💛「せやな…」
隣から、たっつんの声がした。
ツリーを見ているはずなのに。
……なんとなく視線を感じて、ちらっと隣を見ると、たっつんと目が合った。
💚「…………」
💛「…………っ!」
たっつんは、ぱっと目を逸らした。
……今、こっち見てた?
いや、気のせい。
多分、ツリーの光が反射してたんだ。
❤️「よーし、じゃあ撮ろう! 写真!」
ゆあんくんが、スマホを取り出した。
スマホについている青色のストラップが揺れる。
💚「いいね!」
🩷「みんなで撮りましょう!」
❤️「じゃぱぱとたっつん、真ん中!」
💛「なんで!?」
❤️「だって準備の主役でしょ!」
💚「それはそう!」
💛「えぇ!?」
バン、とゆあんくんに背中を押される。
たっつんと、肩がぶつかった。
近い。
さっきの、脚立のときみたいに。
……なんだろう、今日。
やたらと、距離が近い気がする。
いや、別にいつも通りか…。
ゆあんくんが内カメで手を伸ばす。
画面の中には四人いる。
❤️「はい、チーズ!」
――パシャッ。
ツリーの光に照らされて。
笑顔の四人が画面の中に残る。
真ん中の二人は、ちょっとだけ、ぎこちない顔で。
***
帰り道。
と言っても、たっつんの家の玄関から俺の家の玄関までの数歩だけ。
家は隣同士。
💚「じゃあ、また明日!」
💛「おう。また明日」
自分の家の玄関の前で。
たっつんの家の玄関に立つ、人影に手を振る。
……いつもなら、すぐ家に入るのに。
今日は、なんとなく、たっつんが家に入るのを見送りたくなった。
たっつんは、ドアに手をかけて、振り返る。
💛「……明日、楽しみやな」
💚「うん! めちゃくちゃ楽しみ!」
たっつんは、ふわっと笑った。
あの向日葵みたいな笑顔で。
……やっぱり、かわいい。
ドアが閉まる音がして、俺は一人になった。
冷たい風が、頬を撫でる。
でも、不思議と、寒くなかった。
星のキーホルダーは、のあちゃんに預けたまま。
明日、渡す。
喜んでくれるかな。
笑ってくれるかな。
空を見上げると、澄んだ夜空に、星がいくつも瞬いていた。
なんだか昔、たっつんと見た空を思い出した。
まだ覚えている。
――明日は、クリスマス。
小さな星に託した願いが、ちゃんと君の元まで。
届きますように。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
次回でクリスマス編ラストですねーー!!!
次回 第44話 聖夜 ♡300↑
コメント
6件
お熱い、、、最強です(ホントに)超超良いです!楽しみすぎる〜!一番最初に読むぞっ!!
明日が楽しみすぎるー!
第43話、めっちゃ良かったです!クリスマス準備のわちゃわちゃ感が楽しくて、特にじゃぱぱが電飾に絡まってたっつんにほどいてもらうシーン、距離の近さにドキドキしました…。最後のツリーに灯りがともる場面もすごく綺麗で、四人の写真撮影もほっこり。プレゼントを隠す二人が完全にシンクロしてるのも微笑ましかったです。明日の本番が待ち遠しくなるエピソードでした!