箱根学園3年生、新開悠人が外出届けを出してまでやって来たのは静岡県。一足先に大学生となった愛しい恋人の住むマンションだ。
「わぁ〜可愛いです、似合ってます」
「今度はこっちのワンピースと、このスニーカーでお願いします。ミチさん」
ミチと呼ばれたのは本名、小野田坂道。総北高校出身、現在は洋南大学に通う男子大学生。高校卒業して成長期が終わった華奢で小柄な身体を、愛らしい洋服で包んでいるが、生物学上列記とした男だ。
「まだ、あるの?ゆーくん」
「今回はいい新作が多かったので、つい衝動買いしてしまいました」
てへ、と効果音の付きそうな語尾で楽しくて仕方がないと言った表情で答える。
恋人になる前から、出会う前から坂道を巡ってのライバルが多い。そんな中、口説いて口説いて口説いてと、押しまくった結果が二人の今の関係だ。
ちなみに、数人は諦めた様子だがそうでない人達もまだ一定数いる。自分のクライマー直属の先輩、真波山岳がいい例だ。
「隼人くんの妹になれることはなかったけど、代わりにミチさんが隼人くんの義妹になってくれそう。俺のお嫁さんとして」
ミチさんと呼ぶ時、悠人は坂道のことを完全に女性として扱っていた。悠人の事を理解している坂道は今更否定するつもりは無い。死ぬまで付き合うつもりだ。
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「ふう、今日のところは満足しました」
「今着てる服以外はまたゆーくんのクロゼットに仕舞っておくね」
坂道の借りたマンションは少し広めの内装で、元総北のメンバーや元ハコガクの一部面々もやってくる。現在、同じ大学の先輩、金城、荒北、待宮の三人なんかがそうだ。
そんな坂道が絶対に人を入れまいと鍵を掛けた部屋。そこが悠人の部屋になる予定だ。今は坂道に着せる為の可愛らしい洋服一式がクロゼットに仕舞われている。
ちなみに遊びに来る他のメンバー達は鍵の掛かったその部屋のことはオタクの彼らしくアニメグッズの収納部屋だと思っている。自室に収まりきらない物置のように。
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・悠人の進学の予定も洋南だといい。というか、隼人くんが居るから明早以外だと思う。敢えての服飾専門とか。
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