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「チェックメイトだ。ベル」
無機質な声が後ろから聞こえてきた。ベルは肩で息をしながらゆっくり振り返る。
彼女は目を見開いて、左側の口角だけを持ち上げた。
彼女は、そのまま体もフォリーの方へと向けた。
「なんで?なんでアンタは、そんなに……」
「さあ。僕、こういうタイプなんですよ。何をしても疲れたい体質なんです。びっくりしました?」
フォリーは首を左に傾けた。
「ベル。最後に何か言い残すことは?」
「……無い」
「ああそうですか」
フォリーが笑顔でそう言って、ベルの首に当てたナイフを動かそうとした時、ベルは再び口を開いた。
「まだ、最後じゃない」
ベルはフォリーの首を掴むと、そのまま、地面へ押し付けた。
「ベ……ベル」
フォリーは今まで見せたことがなかった表情をここで見せた。
「君は、往生際の悪い殺し屋だな!」
フォリーはベルの手を思い切り払うと、そのままベルの方をじっと睨みつけた。
「もう、いい加減に死んでしまえよ‼」
フォリーはナイフをベルの方に投げつけた。
ベルは迫りくるナイフを、身をひるがえして、華麗に避けた。
「フォリー。殺し屋の先輩として、一つ大事なことを教えてあげる」
ベルはフォリーに近づき、静かに言った。
「殺し屋はどんな時でも、冷静でいなければ。ターゲットにどんな感情も抱いてはならない。アンタが一番よく知ってるでしょう?」
フォリーはゆっくり後退る。
「アンタは、道端に転がってる石ころに、感情的になるの?」
「……!」
ベルはフォリーの肩に手を添えて耳元で言った。
「チェックメイトね。フォリー」
フォリーは肩を後ろに回すと、大声で叫んだ。
「うるせぇんだよ‼くそ野郎が‼」
フォリーは左手を拳にし、ベルの顔へ伸ばした。
ベルは、それを華麗に避けると、目を細めて言った。
「おっそ」
フォリーは一瞬驚いた顔をしたが、ポケットから拳銃を取り出した。
一発、二発、三発、連続で打つが、ベルは全て走って避けていた。
クッソ。なんで当たらないんだよ。さっきまでお前の体力は限界だったろ!
フォリーは心の中で叫んでいた。
しかし、フォリーは冷静さを取り戻すため、一つ、大きな深呼吸をした。
目を細めて、ベルをじっと見る。
よく見れば、当たっているのだ。
ふくらはぎに一発。太ももに一発、肩に一発。
フォリーは、自分の持っている拳銃を見て思った。
この拳銃が装填できるのは、八弾。さっき三発撃ったから、残り五弾。
確率を計算すると、頭、頸、心臓に当たる確率は高い。
彼は、再び足を上げると、ベルの方へと走って行った。
壁に刺さったナイフを取ると、ジャケットの裏ポケットにしまった。
そして右手で、拳銃を持つと、ベルの方に向かって、二発連続で打った。
しかし、フォリーの予想とは裏腹に、ベルはまるで、こうなることを予想してたかのように笑顔になった。
なんで?なんでだよ。
フォリーが見たのは、持っていた剣で弾を打ち返すベルの姿だった。
人間か?アイツ、化け物かよ!
フォリーは驚いて、跳ね返ってくる弾を見ていなかった。
そして、突然、激痛を感じた。下を見ると、へそのあたりに弾が埋め込んであった。
その激痛に耐えられず、フォリーその場に倒れ、気を失った。
「……」
ベルは彼が倒れたのを確認すると、後ろへ振り返った。
「じゃあね。来世は、殺し屋なんかにならないでよ」
ベルは、そのまま、その部屋から出て行った。
その頃。
歩美は、松村、紗季と合流し、雪を捜索していた。
「歩美、中家は?」
「技術室の前にいる。今、倒れてたから、メモ書きして、CIAに保護してもらったはず」
「OK」
三人で走っていると、何か、カチカチと音が聞こえる。
「この音何?」
「時計」
三人はその場で止まり、耳を澄ました。
すると、時計の秒針のような音とともに、足音が長い廊下に響き始めた。
「……!」
「お前は……」
目の前には、眼鏡をかけた少年、秀人が居た。彼は、時計を持っている。
「初めまして。俺はCIAの秀人と申します」
「何?」
「あなた達に協力してもらいたいことがありまして」
「え?」
三人は息を呑む。秀人はその三人に近づき言った。
「CIAの協力者になってくれないかな?」
松村は、不思議そうな顔をした。
「自分の身の内をべらべら喋って協力してもらおうってことか?なあおい、何のつもりだよ?」
「そのままの意味ですよ。俺も、探している人が居るんです。ラトレイアーに売られてしまった、俺の友人を」
秀人は眼鏡を取ると、ポケットからティッシュを取り出した。
「さっき、協力者を切ったところで、人手が足りてないんだ。協力してくれるよな」
彼はティッシュで眼鏡のレンズを拭くと、歩美の方を見て言った。
「ね?山根歩美さん」